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親しくなったのそっちじゃない

 その夜。


 気づけば白い霧。

「ふぉっふぉっ」

 聞き慣れた声。

「どうじゃ」

 神様。

 ひげをいじりながら、満足げ。

「面白かったじゃろう?」


「どこがだよ」

「普通に最悪だったんだけど」

「ほう?」

 首をかしげる。

「強くなれたじゃろう」

「なってねえよ」


「学びはあったはずじゃ」

「痛みしかなかったわ」

 ため息。

「それに」

 神様がにやりと笑う。

「親しくなれたじゃろう?」

 一瞬沈黙。


「……誰とだよ」

「決まっておる」

 ドヤ顔。

「真田じゃ」


「……違う!」

「何がじゃ」

「親しくなったの、母親の方だから」

 ぴたりと止まる。


 神様の手。

 ひげをいじる動きが、わずかに止まる。

「……母親?」

「そう」

「料理の話で盛り上がったのそっちだから」

「……ほう」

 少しだけ考える。


「それはそれで良いことじゃな」

「よくねえよ」

「重要な人脈じゃ」

「方向違うだろ」


 神様、無視。

「結果として」

 指を立てる。

「関係は前進しておる」

「してねえよ」

「しておる」

「してねえって」

 しばらく沈黙。


 神様が、ふぉっと笑う。

「まあよい」

「よくねえ」

「種は蒔いた」

「勝手に蒔くな」

「そのうち芽が出る」

「出なかったらどうすんだよ」

「出る」


 根拠ないのに。

「……はあ」

 もういい。

「じゃあの」

 手を振る。

 そのまま。

 霧ごと消える。


 ――朝。

 目を覚ます。

 天井をみる。

(……なんなんだあいつ)

 意味がわからない。


(でもまあ)

 起き上がる。

 体は、昨日より少し軽い。

(気のせいか)

 そう思うことにする。


 ――放課後。

「お前さ」

 直樹。

「この前またやられたんだろ」

「やられた」

「しかも吹き飛ばされたって聞いたぞ」


「吹き飛ばされた」

「なんでそんなことになるんだよ」

「俺が聞きたい」


 その時。

「ねえ」

 彩音。

「真田のお母さん、あんたのこと気に入ってたよ」

「……は?」

「巴、いつ来るのか聞かれたって」

 一瞬、止まる。

「……俺に?」

「うん」

「料理の話、またしたいって」

 呆然

(なんでそっちなんだよ)

 頭を抱える。


「で」

 彩音がにやにやする。

「いつ行くの?」

「……さあな」

 適当に返す。

 でも。

 少しだけ考える。

(……どうすんだこれ)


 巴じゃない。

 母親。

 方向がずれている。

 完全に。

(……まあでも)


 あのときのことを思い出す。

 料理の話。

 通じた感覚。

(悪くはなかったか)

 小さく息を吐く。

「……そのうち」

 ぼそっと言う。

「お、行く気じゃん」

「違う」

「違わないでしょそれ」

 彩音が笑う。

 直樹も苦笑する。

 騒がしい。

 でも。


(……まあいいか)

 窓の外を見る。

 何も変わってないはずなのに。

(少しだけ)

 前より、進んでる気がした。


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