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よく会う理由

 最近。

(……よく会うな)

 そう思うようになった。


 放課後、部活のあと帰り道。

 ふとしたタイミングで。

「……あ、朝比奈さん」

 白石ひより。

 小さく手を振る。


「またか」

 思わず出る。

「え?」

「あ、いや」

 少しだけ言い直す。

「よく会うなって」

 ひよりが少しだけ困ったように笑う。

「……そうですね」

 否定しない。

 でも理由は言わない。


「帰り?」

「はい」

 短い会話。


 けれど気まずくはない。

 しばらく一緒に歩く。

 静かで。

 落ち着いた空気。


(……不思議だな)

 巴とは違う。

 張り詰める感じじゃない。

 (まあ悪くない)

 そう思う。


 横を見る。

 ひよりは、少しだけ前を見て歩いている。

 距離は近すぎず、遠すぎず。

 ときどき、こっちを見る。

 でも、目が合うとすぐ逸らす。

(……なんだろうな)


 少しだけ引っかかる。

 すぐに結論を出す。

(誰か気になるやつ、いるんだろうな)

 入部したばかりだし。

 陸上部、男子多いし。

 視線の感じも。

(……たぶんそういうやつだ)

 勝手に納得する。

(俺に話しかけやすいだけか)

 理由付けも完了。


 別れ際。

「じゃあ」

「はい」

 軽く会釈して、ひよりは去っていく。

 その背中。

 少しだけ、振り返りそうになって。

 やめる。

(……気のせいか)

 そう思うことにする。



 ――翌日。

 昼休み。

「なあ」

 直樹と彩音に声をかける。

「ひよりってさ」

「白石?」

「うん」

「どんなやつ?」


 一瞬、二人が顔を見合わせる。

「どうしたの急に」

「いや、ちょっと」

 言葉を濁す。

「最近、よく会う」

「……あー」

 彩音が、少しだけ意味ありげに笑う。

「なるほどね」


「何が」

「別に?」

 とぼける。

 直樹が苦笑する。

「普通にいい子だぞ」

「静かで、真面目」

「あと」

 少しだけ間を置く。

「よく見てるタイプ」

「見てる?」

「人のこと」

 彩音が補足する。

「派手じゃないけど」

「ちゃんと周り見てる子」

「……へえ」


 思い出す。

 グラウンド。

 あの言葉。

 “見てました”

(ああ)

 なんとなく、繋がる。

(やっぱりな)

 さらに納得する。


(好きなやつのこと見てるタイプだ)

 完全にズレた結論に到達。

「あとね」

 彩音が少しだけ身を乗り出す。

「結構モテるよ」

「え?」

「目立たないだけで」

「男子からの評価高いタイプ」

「マジか」

 少しだけ意外。

(そりゃそうか)

 今の印象なら納得できる。


「で?」

 彩音がニヤっとする。

「なんで気になるの?」

「別に」

 即答する。

「ほんとかー?」

「ほんとだって」

 少しだけ笑う。


 でも。

(……まあ)

 頭の中に、ひよりの姿が浮かぶ。

 静かで、ちゃんと見ている目。

(いいやつ、だな)

 それは、変わらない。


(じゃ俺じゃないな)

 そこだけは、はっきりしている。

 少しだけ肩の力が抜ける。

(まあ俺、そういうのはわかる方だし)

(勘違いするタイプじゃない)

 妙な自信。

 だからこそ、疑わない。

 だからこそ、外す。


「ふーん」

 彩音がまだ疑っている顔をする。

「まあいいや」

 肩をすくめる。


(でも、よく会うのは)

 本当に偶然なのか。

 少しだけ。

 気になっていた。


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