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ただ前を向く

 翌日の再テスト。

 結果は――合格だった。


「おー、やったじゃん」

 直樹が軽く言う。

「ほんとに入ったんだ」

 彩音も少し笑う。

「まあな」

 短く返す。


 それ以上、大きな騒ぎにはならない。

 いつも通りの空気。

 (……届いたな)

 それだけで、十分だった。


 グラウンドに出る。

 昨日と同じ場所。

 でも、少し違う。

(ここに立っていい)

 そう思えるだけで。

 景色が変わる。


 足を動かして、フォームを意識する。

 呼吸を整える。

(まだ遅い)

 それはわかってる。

(でも)

 止まらない。


 昨日より、今日。

 今日より、明日。

(少しでも前に)

 それだけを考える。

 誰かに見せるためじゃない。

 褒められるためでもない。

(俺が、決めたから)

 巴に追いつきたい。

 最初は、理由だった。


 でも今は。

(それだけじゃない)

 自分で決めて。

 自分で動いて。

 ちゃんと届いた。

 その感覚が、残っている。

(悪くないな)


 小さく息を吐く、走る。

 風が、少しだけ気持ちよかった。


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