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続沈黙と対峙

 ――次の日の朝。

 教室の扉が、勢いよく開いた。


 バンッ。

 空気が、一瞬で凍る。

 そこに立っていたのは――

 真田巴。


 長身の影が、教室の床に伸びる。

 全員の視線が、一斉に集まる。

 巴は、一歩踏み込んだ。


「西園寺」

 名前で呼ぶ。

 教室の奥。

 西園寺さつきが、ゆっくり顔を上げる。


「……巴様?」

 少しだけ驚いた声。

 でも、すぐにいつもの調子に戻る。


「どうしたんですか?」

 “様”をつけるその言い方。

 距離を保った、敬意の形。


 でも、巴はその距離を一歩で詰める。

「それ」

 一歩近づく。

「誰が言い出したの?」


 静かな声。

 けれど、逃げ場がない。

「……なんの話ですか?」

 西園寺が、わずかに視線を逸らす。


「ストーカーってやつ」

 直球。

 教室が、完全に静まる。


「証拠あるの?」

 さらに一歩。

 圧が増す。

「……巴様」

 西園寺が、少しだけ眉を寄せる。


「私たちは、巴様のことを思って――」

「思ってるなら」

 言葉を切る。

「適当なこと広めないで」

 まっすぐな否定。


 西園寺の顔が、固まる。

「私、見てたけど」

 教室の空気が、揺れる。

「そんなことしてないよ」

 誰かの一言。


 それだけで。

 場の重さが変わる。

 西園寺が、言葉を失う。

「……でも」

 かろうじて返そうとする。

「他に見てたって人が――」


「誰?」

 即答、逃がさない。


 沈黙。

 誰も、名前を出せない。

 それが答えだった。

「……」


 巴は、少しだけ息を吐く。

「噂でしょ、それ」

 淡々と。

「だったらやめて」

 強くもなく。

 はっきりと言い切る。


 教室は、完全に静まり返っていた。

 

 そして、巴は一瞬だけ朝比奈の方を見る。

 ほんの一瞬目が合った。

(……なんで)

(この人は)

 胸の奥が、熱くなった。

 

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