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決める理由
放課後の校舎の廊下。
窓の前で、俺は立ち止まっていた。
(……どうする)
陸上部に行く。
言うのは簡単だ。
けれど。
(2年からって、ありなのか?)
(迷惑じゃないか?)
(浮かないか?)
考え始めると、止まらない。
足が、動かない。
「……はぁ」
小さく息を吐いて、窓の外を見る。
グラウンド。
そこに――いた。
真田巴。
風が吹く。
高い位置で結ばれたポニーテールが、ふわりと揺れる。しなやかに、弾むように。
でもその姿は、まったく崩れない。
軸がある。
芯がある走る。
無駄のない動き。
まっすぐ前へ。
迷いがない。
(……すげえな)
ただ、それだけじゃない。
あの姿は――
(逃げてない)
やるべきことを、やっている。
ただ、それだけ。
(俺は?)
悩んでるだけ。
立ち止まってるだけ。
「……違うだろ」
小さくつぶやく。
もう、答えは出ている。
やるか、やらないか。
それだけだ。
もう一度、巴を見る。
風の中で。
まっすぐに立っている。
(あそこに行きたい)
ただ、それだけで十分だった。
「……よし」
足が動く。
今度は、迷わない。
廊下を歩き出す。
階段を降りる。
向かう先は――
グラウンド。
もう立ち止まる理由は、なかった。




