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現実的な一手

 放課後。


 校門を出たところで、俺は足を止めた。


(積み重ね、ね)


 直樹と彩音の言葉は、正しい。


 正しすぎるくらいに。


(どうやってだよ)


 クラスも違う。


 接点も少ない。


 グラウンドで少し話すくらい。


(それでどうやって距離詰めんだよ)


 


 ため息が出る。


「なに悩んでんの」


 横から声。


「純也か」


 三浦純也。直樹の従兄弟で友人、妙にタイミングよく現れるやつ。


「顔に出てるぞ」


「そんなにか?」


「めちゃくちゃ」


 


 即答だった。


「で?」


 純也が軽く顎をしゃくる。


「巴のことだろ」


「……まあな」


 もう隠す気もない。


「どうやって親しくなるか考えてた」


「簡単じゃん」


 あっさり言う。


「陸上部入れば?」


「……は?」


「同じ場所にいれば、自然と話す機会増えるだろ」


 


 正論。


 正論すぎる。


(たしかに)


 でも。


「いや」


 首を振る。


「俺、もう2年だぞ?」


「今から入部とか、いけるのか?」


「どうだろうな」


 純也が肩をすくめる。


「学校によるんじゃね」


「微妙だろ」




「でもさ」


 少しだけ真面目な顔になる。


「やらない理由にはならなくね?」


 一瞬、言葉が詰まる。


「無理だったら終わりか?」


「……いや」


「違うだろ」


 純也は軽く笑う。


「断られてから悩めよ」


 その言葉。


 やけに、すっと入ってきた。


(……たしかに)


 やってもないのに、諦めてた。




「それにさ」


 純也が続ける。


「お前、今めっちゃ走ってんだろ」


「まあな」


「だったら一回くらい見てもらえばいいじゃん」


「……」


「ガチでやってるやつは、嫌いじゃないと思うぞ」


 


 巴の顔が、浮かぶ。


(逃げるやつは嫌い)


 思い出す。


「……やるか」


 ぽつりとつぶやく。


「お」


 純也が笑う。


「いいじゃん」


「ダメならダメでいい」


 それでも。


(行かないよりは、マシだ)


 そう思えた。


「ありがとな」


「いいって」


「結果教えろよ」


「どうなるか知らんけどな」


 二人で軽く笑う。


 


 でも、その一歩は。


 確実に。


 前に進むものだった。



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