部長会議
九月末、秋の文化祭・体育祭前。
放課後、グラウンド脇の部室で部長会議が開かれる。議題は展示、模擬店、アトラクションの実施可否、安全管理の再確認。出席は三年生と二年生が半々、同じクラスの部員も数名いる。
恒一は会議の通知書類を手に、佐藤副部長に向き直る。
「今回も出席は二人だけか」
「各部の取りまとめはそれで十分だろ」
佐藤は慎重にうなずく。
恒一は書類を置き、ふっと考える。
(巴は部活で汗流してるし…俺はどう動くか…)
「じゃあ、佐藤と行くことにする」
佐藤は眉をひそめる。
「本当に、大丈夫か?巴との方が…」
「大丈夫だ、任せろ」
グラウンド脇では、巴が黙々と汗を流していた。
(……私も行きたかったのに…)
肩をすくめ、手持ち無沙汰にトラックの端を歩く。
(まあ、暇って言えば暇だし…)
恒一は会議で配られた資料を眺めながら、頭の中は陸上部のことばかり。
(展示は問題ない。模擬店は…人数足りるか?アトラクションは…どうしよう)
説明はほぼ右から左、佐藤が細かい注意を補完する。
「恒一、お前、覚えてるか?」
佐藤の小声も、恒一には届かない。
(……でも俺の案なら大丈夫そうだ)
会議中も恒一の思考は陸上部の練習や配置に向かっている。
(巴はどう思うだろう…あの強さに追いつくには…)
紙の上で人数や動きのシミュレーションを繰り返す。
議題の話し合いは順調に進み、最後に安全管理の確認。
恒一は一つ一つ目を通すが、頭の中はすでに陸上部での練習計画。
(展示は問題ない、模擬店は人数の関係で調整…アトラクションは…)
会議後、恒一がグラウンドに戻ると、巴がトラック端で汗を拭きながらこちらを見る。
視線が合うと、軽く笑い返してくる。
(……巴の気持ちはわからんけど、距離は保てた…かな)
巴は黙々と汗を流しつつ、手持ち無沙汰で微妙に不満そう。
(……なんで…)
窓際の手すりに手を置き、ぽつりとため息。
恒一は書類を整理しながら思う。
(……まあ、順調だ。今はこれでいい)
ちらりと窓越しに巴の姿を目にして、微笑む。
部員たちもちらりとこちらを見て、目が合うと軽く笑い返してくる。
恒一は微妙に照れながら、次の練習に向けて気持ちを切り替える。
(……よし、次は陸上部だな)




