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救世のルファディア  作者: yato
第3章 混獣編
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ビーストス獣人国①

 とある街が悲惨に見舞われていた。


 そこで行われているのはまさに阿鼻叫喚と呼ぶに相応しい光景が広がっていた。


 街の建物は半壊状態に陥られ、いたる所が燃え盛る炎によって包まれていた。そんな中、住人である獣人族達が恐怖に怯えながら逃げ惑っっている。そして何人ものの人々が倒れていき、流れる血がまるで池のように広がっている。


 人々を襲っているのは巨大な魔物だった。その姿はあらゆる動物の部位を組み合わせたかのような異形の獣だ。


 『グルギャアアアアアアアアアッ!!』


 複数の頭部から凄まじい咆哮が街中に響き渡る。


 獅子の顔からは火炎を、狼の顔からは氷結を、虎の顔からは雷電を、鴉の顔からは突風を、熊の顔からは岩石を吐き出しながら獣人族達を襲っている。


 街と住民を守護する騎士達、そして滞在していた冒険者が奮闘して魔物に立ち向かうが圧倒的な力の前ではまるで無力で、為す術なく蹂躙されていく。


 「ははは! 素晴らしい光景だな!」


 そんな地獄絵図と化した街を嬉々として眺めているのは黒い肌をした豚人種の男だった。その身なりからして貴族のようだ。

 

 「ふはははは! もっとだ、もっと泣き叫べ! 貴族である私を苔にする者は全て消えてしまえ!!」


 住民達が襲われる様子を狂気の笑みを浮かべながら男は高笑いする。その手には禍々しい光を放つ宝玉が握られている。


 そう、この男が魔物を操り人々を襲わせている元凶であった。


 『グルギャアアアアアアアアアッ!!』


 それに呼応するかのように魔物は咆哮を上げるのだった。



 ◆◆



ユフィアがまた夢を見たようだ。


 多くの獣人族がいたことから場所はおそらくビーストス獣人国だと思われる。


 それにしても複数の動物が合わさったような魔物か。今回の相手もなかなか手強そうだ。だとしたら装備品もしっかりと整えなければならないな。


 なので毎度お馴染みであるロザナさんの魔法屋へ赴いていた。


 「アタシが言うのも何だけどよくこんな店に顔を出せるね、暇なのかい?」


 もはや常連客となっている俺達に対して何て物言いなのだろうか。まあ、そんなことより装備だ装備。


 俺達は店内を見回しながら良さそうなマジックアイテムがないか探してみることにした。


 魔法範囲の腕輪

 所有者が発動する魔法の範囲を広げる。


 今回は魔物が人々を襲うことは確定している。それならユフィアには怪我を負っている人達の治癒に専念することになるだろう。その為には出来るだけ広範囲の人にも治癒魔法が届くようにしておこう。値段は4000000リル。



 風の緑衣

 風の力が付与されている緑の衣。着ている者の俊敏性を高める。


 これはセレーナに着させるとしよう。彼女に元々備わっている俊敏な身のこなしに更なる磨きがかかるなら装備品として申し分ない。値段は2500000リル。


 耐火のローブ

 一定の火炎攻撃を防ぐことが出来るローブ。


 これはアイビーに。ユフィアが夢に見た魔物は炎も吐くと聞く。木精霊のアイビーに火は天敵だ。だから少しでも火に対して備えておく必要がある。値段は3500000リル。

 

 よし、一先ずはこれくらいだろう。少し値が張ったがまあ良しとしよう。


 「ロザナさん、無属性魔法の魔法書は……」


「残念だけど今回はないよ」


 「ですよねー……」


もしあればすぐに売りつけてくる筈だからな。まあ無いものは仕方がない。別の機会にでも期待するとしよう。


 そう思いながら店を出ようとすると、店の壁に立てかけている歪な形状の槍に気がついた。普通の槍よりも全長が短い。いわゆる短槍と言うやつだろうか。


 それに他のマジックアイテムとは比べ物にならない魔力を感じるぞ。


 「何だこの槍は? 前回来た時にはなかった筈だ」


 「ああ、それかい? この間知り合いの冒険者がとあるダンジョンで手に入れた魔槍でね、借金のかたとして譲って貰ったんだよ」


 「ダンジョン……」


 ダンジョンとは未知と危険が潜む複雑な空間や迷宮だ。古代の人々が造ったとされる人工物もあれば、高密度の魔力が発生して生み出された天然物がある。


 特に前者の人工物のダンジョンは古代人が残したお宝やアーティファクト等があるので人気があるようだ。


 しかし、どのダンジョンにも多くの魔物が独自の生態系を築いており、当然罠も設置されていることもあるので非常に危険な場所でもあるので毎年多くの冒険者達がそこで命を落としている。



 そしてこの魔槍はそのダンジョンで発見されたようだな。


 魔槍ストレイダー

 古代の技術によって造られたミスリル製の魔槍。伸縮自在の加護を持つ。


 伸縮自在

 魔力を流し込むことで自在に槍を伸縮させることが出来る。


 「ふむ、なかなか面白い能力の槍だな」


俺には既にメイン武器であるレイヴェルがあるのだが、武器は幾つあっても困らない。それにこれなら色々と使い道がありそうだした。


 「折角だし購入するか。これは幾らです?」


 「30000000リルだね」


 「高くないか?」


 「アーティファクトだからね」


 流石はアーティファクト、それなりの値段はするようだな。


 だが高い。用心に越したことはないとは言え、ただでさえユフィア達の装備品を買うのに10000000リル消費しているんだ。これ以上の無駄使いは良くないよな。


 だがこの槍はなかなかの代物だしな……。


 買うべきか買わないべきかを自問自答していると、あることを思い出した。そういえば俺にはあれがあったんだ。


 俺は空間収納からあれを取り出す。


 「こいつとこの魔槍を交換しないか?」


 俺が取り出したのはフレイムアックスと言うマジックアイテム。以前C等級昇格試験の際に盗賊の頭をしていた男を討伐した戦利品と頂いたものだ。何かあった時の為に今まで売らなかったのだが、まったく使う予定がないので手放すことにした。


 「ほう、フレイムアックスかい。これなら5000000リルってところだね」


 「おいおい、それはないよ。こっちはとっておきを出したんだから、もう少し値を張ってくれても良いじゃないか」


 「馬鹿言うんじゃないよ。その槍はアーティファクトなんだよ。この程度のマジックアイテムなんかじゃ割に合わないよ。アーティファクトは現在の技術では再現することは出来ない。それなら当然アーティファクトであるその槍の方が高価なのは突然だろう?」


 うーむ、やはりこの程度では譲ってくれないか。ならばもうひと押ししてみるか。


 「だったらこいつも付けよう」


 ロザナさんなら必ずこいつに興味を持つ筈だ。


 「こ、これは……」


 俺が取り出したのはトレントだ。こいつの素材は魔法使いが使う杖の良い材料になるらしいので売らずに取っておいたのだ。


 「さらにこれもどうだ?」


 更にダメ押しでエルダートレントも出す。トレントの上位種であるこいつならもっと良い杖を作れるだろう。


 「まさかこんな高級素材を持ってるとは恐れ入ったよ」


杖作りに必要な素材を目の前にして、ロザナさんは感嘆したような表情を見せる。


 「分かったよ。これなら10000000リルにまで値段を下げて上げるよ」


 ふむ、30000000リルが10000000リルになったか。これなら何とかなるな。


 「分かった。それで手を打ちます」


俺はフレイムアックスとトレント、エルダートレント、10000000リルを渡し、魔槍ストレイダーを手に入れるのだった。



◆◆



 装備品を整えた俺達が次に向かうところは、多くのクランが拠点にしている建物がある住宅街だった。


俺達が今知っていることは、邪神の使徒である豚人の男は貴族だと言うことだけだ。それだけでは街の場所が分からない。


 だから俺達はビーストス獣人国について詳しいと思われる親しい冒険者に会いに行くことにしたのだ。


 「ここだな」


 以前話した時に教えられた住所を頼りにそいつが住んでいる住居へと到着する。


 「すみませーん、誰かいますか?」


 扉をノックしながら声を掛けると、丁度良いことに目的の人物が出てきた。


 「へいへい、ってルイじゃないか」


 「突然に済まないな」


 俺の知る獣人族の親しい冒険者といえば【魔犬の遠吠え】のサブリーダーであるクードしかいない。


 冒険者をする前はビーストス獣人国に住んでいたと聞いていたからな。こいつなら何か知っているかもしれない。


 「おいおいこんなにも美人達を侍らせて、まさかオイラに自慢する為だけに来たんじゃないだろうな?」


 「そんなんじゃないよ。お前に聞きたいことがあるんだ。実はある人物を探しているんだが……」


 俺はクードにビーストス獣人国で豚人の貴族がいないか聞いてみる。


 「豚人の貴族ね……貴族のことはあまり知らないけどよ、心当たりはある」


 「構わない。教えてくれ」


 「分かった。そいつはグリルド=セルドスという伯爵なんだが……」


クードは心当たりのあるその男にについて教えてくれた。


 グリルド=セルドス。ビーストス獣人国の辺境の地にあるエモールドを治めている豚人の領主で、伯爵の爵位を与えられている大貴族だ。


 元々は平民として生まれたようだが、その類稀なる武術の才能を遺憾無く発揮して多くの武勲を上げたことで貴族としての地位を得た傑物として有名らしい。


 「ふむ、そうか……」


 クードの口ぶりからしてグリルド伯爵という人物は大層な人物のようだ。その貴族が邪神の使徒であるのか、一度会って確かめる必要があるな。


 幸いなことに今回は邪神の使徒らしき人物の素顔をユフィアが見ている。顔さえ分かればその人物が邪神の使徒であるか分かる筈だ。


 「分かった。色々と済まないな」


 「良いってことよ。今度美味い飯でも奢ってくれよ」


 「ははは、分かったよ」


 必要なことを聞いてクードと別れる。


 取り敢えず目的は決まった。


 「準備を整え次第、ビーストス獣人国のエモールドに向かうぞ」

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