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救世のルファディア  作者: yato
第3章 混獣編
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仕事③

 メイド--ルミナの朝は早い。


 日が昇るのと同時にルミナは自室で目覚めると、予め用意しておいたメイド服を着て身支度を整える。


 鏡の前で服装に乱れがないかを確認した後にルミナがまず向かうのは調理場だ。朝の食事はとても大切だ。胃に負担を掛けず、そして栄養をバランス良く摂れるように考え抜いた自慢の朝食を手がけていく。


 朝食の準備を終えると、次は主人であるルイを起こしにいく。扉をノックして私室に入ると、カーテンを開けてすやすやと眠っているルイを起こす。


 「おはようございます、ご主人様。朝食の準備が出来ました」


 「んんぅ……おはよう、ルミナ」


 窓から差し込む朝日に目を細めながらルイがベッドの上で寝ぼけた声を上げる。


 「ルイ様、お目覚めの紅茶をどうぞ」


 「……ん、ありがとう」


 ルミナは目覚めたばかりのルイに淹れたての紅茶を出す。紅茶は寝起きの怠さを解消する効果があるので、お陰でルイは目覚めの良い朝を迎えることが出来ていた。


 「お着替えをお手伝いします」


 「いやいや、それだけは勘弁して下さい」


 本来なら主人の着替えを手伝うのもメイドの務めなのだが、当の本人であるルイが恥ずかしさのあまりそれを拒んでいるので出来なかった。


 ルイの後は同じ眷属であるユフィア、セレーナ、アイビーの私室を尋ねる。


 ユフィアとアイビーは既に起きており身支度を済ませているが、セレーナだけはまだぐっすりと眠っている。彼女は一度寝るとなかなか起きないので、かなり根気強く起こさなければならないのがルミナの悩みの種であった。


 全員を起こして食堂に集合させると、早起きして用意した朝食を食べさせる。


 本来ならメイドであるルミナは主人であるルイの後に食事をすることになっているのだが、彼の要望で一緒に食べることになっていた。親愛なる主人達と共に食事を取れることはルミナにとって喜ばしいものだった。


 朝食を食べ終えると使用した食器を丁寧かつ綺麗に洗っていき、ついでに調理場と食堂の掃除を済ませる。


 「では行ってくる」


 「行ってきますね」


 「行ってくるね」


 「行ってくるわ」


 「行ってらっしゃいませ」


 そして暫くするとルイとユフィアはゴードン商会からの指名依頼でロミリアという街へ、セレーナとアイビーは依頼を受けに冒険者ギルドへと向かう。


 「さて、わたくしも頑張りますよ」


 彼等を見送るとルミナはまず洗濯を開始する。


 大きめの桶に程よく温めたお湯に洗剤を適量溶かして洗濯液を作り、衣服やシーツ、タオル等を傷めないように優しく押し洗いして汚れを落としていく。


 洗い終わったら泡が出なくなるまで数回すすいでしっかりと脱水したら庭に出て干して行く。今日雲1つない快晴な空なので絶好の洗濯日和と言えるだろう。これなら数時間もすれば乾くだろう。


 洗濯物を干し終えると、次は各部屋のベッドシーツを取り替えて部屋の掃除をしていく。


 ルイとユフィアの部屋はとても整理整頓されているので掃除がとてもやり易いのだが、セレーナとアイビーの部屋は細心の注意を払う必要があった。


 セレーナの部屋は多くの骨董品や薬品が置いていたり、アイビーの部屋はまるで森を思わせる程の観葉植物によって埋め尽くされていた。


 それでも完璧に部屋の掃除を仕上げるのは、流石はルミナといったところだろう。


 部屋の掃除が終わると、ルミナは昼食を取ることにした。普段ならもう少し凝った料理を作るのだが、今日屋敷にいるのはルミナだけだったので手軽に作れるもので済ます。


 昼食を終えたら次は食材の買い出しだ。


 今日の夕飯は以前ルイに教えられた『ムニエル』という料理に挑戦してみようとルミナは考えていた。ちょうど良いことに材料である新鮮な白身魚が売られていたのでそれを買うことにした。


 それだけでは寂しいのでアイビーが丹精込めて育てた野菜をふんだんに使ったサラダとスープも作るつもりだ。彼女の作る野菜は鮮度・味に申し分ない。だからこそ料理のし甲斐があった。


 食材を買い揃えて屋敷に戻ると、次は大浴場の清掃に入る。冒険に出ているルイ達の身体を癒す為にルミナは徹底的に汚れがないようにスポンジやブラシを使って浴槽や床のタイルを磨いていく。


 本来ならこれほど大きい浴場を1人で清掃するには骨の折れる作業ではあるが、今のルミナにはルイの眷属になったことで得た家内統制という加護がある。


 これによりスポンジやブラシを自在に操ることが出来るので効率が良く作業を終えることが出来た。


 次は干しておいた洗濯物を取り込むと、シワがないように丁寧に畳んでいく。太陽光を浴びたからか、心地良い爽やかな香りがする。


 一通りの家事を終えると、ルミナは休憩に入る。淹れたての紅茶と市場で購入したお菓子を乗せたお盆を持って自室に戻ると、そこでようやく一息入れる。


 これはルミナが毎日欠かさずしていることであり、彼女にとって貴重な時間でもあった。メイドでも寛ぎの時間は必要だ。適度に息抜きをして働くことが完璧な仕事をこなせるコツなのだ。


 ちなみにこのお菓子はルイから渡されている給金で買っている。


 今日のお菓子はスコーンだ。それに自家製の苺ジャムを乗せると、まるで宝石のように美しく見える。


 「美味しいです。流石はアイビーさんの育てた苺ですね」


 ジャムに使用した苺はアイビーが育てたものだ。採れたてなので当然鮮度が高く、味もしっかりしているので高品質のジャムが出来た。


 そのままでは味気ないスコーンでもこの苺ジャムと合わさることでなんとも言えない味が口いっぱいに広がる。更に紅茶とも相性が良かったので、まったく飽きることなく食べることが出来た。


 「まさに至福の時間ですね……ん?」


 スコーンジャムと紅茶の組み合わせに舌鼓を打っていると、どうやら良からぬ者達が屋敷に近づいているのをルミナは感じた。


 「数は2人……いえ3人ですね」


 ルミナは正確な数を把握すると、姿を透明にして様子を伺うことにする。


 「ここが最近羽振りが良い冒険者が住んでいる屋敷か……」


「ああ、情報が正しければあのゴードン商会から大金を受け取ったらしい」


 「へへ、そいつは楽しみだな」


 予想していた通り、3人は空き巣のようだルイの持つ大金を狙ってこの屋敷にやって来たのだろう。


 だが残念なことに殆どの所持金はルイの空間収納によって回収されているので、この屋敷をいくら探しても盗めはしなかった。


 しかし、そんな不届な連中を許す程ルミナは優しくはない。大切な屋敷に無断で侵入するだけでなく、主人であるルイの物を盗もうとする空き巣には天誅を下さなければならない。


 「侵入者は絶対に許しません。ファントム」


 ルミナは闇属性魔法を発動する。すると空き巣達の前に巨大な怨霊が現れる。勿論これはただの幻影だ。


 「おい、まさかあれって……!」


「噂に聞いていた幽霊か!?」


「嘘だろ! もう浄化されたって聞いてたのによ!」


 突如出現した巨大な幽霊の姿に空き巣達は怯え始める。


 空き巣3人の周囲にある家具がガタガタと動くだけでなく宙まで浮き始めたのだ。しかしこれだけでは終わる筈もなかった。


 装飾品として屋敷内に飾られていた複数の甲冑が、まるで意思を持っているかのように動きだしたのだ。勿論これも家内統制の力で動かしているのだ。


 「ひい!」


「甲冑が動いてるぞ!?」


 「もう勘弁してくれ!」


 一人でに動く複数の甲冑を前に空き巣達は降伏する。元々盗みだけが取り柄のようで、戦闘能力は然程ないようだ。

 

 「至福の時間を邪魔したこと、万死に値します!」


 楽しみにしていたティータイムを台無しにされたのだ。ルミナは甲冑を操り、空き巣達に制裁を加える。と言っても殺人は良くないので、気絶する程度までは殴った。


 気を失った空き巣達を縄でぐるぐる巻きにして拘束し、『この人達は空き巣です』と書かれた紙を貼り付けてそのまま屋敷の前へと放り出す。


 しばらくして発見された空き巣達は冒険者ギルドによって連行された。3人には多くの余罪があったので相当重い刑に処されることになったのだが、それを撃退したルミナはそれを知る由もなかった。


 予想外の邪魔はあったが休憩を終えたルミナは大浴場の用意と夕食の準備に取り掛かる。


 大浴場の方は一定以上の魔力を消費すれば自動的にお湯が張ることが出来るので放置してても問題はない。


 次は夕食作りだ。さらさら依頼に疲れた皆が屋敷に戻ってくる頃なので、うんと美味しい料理を作る必要がある。


 女将に指示を受けてからルミナの料理技術は更に磨きが掛かっていた。夕食作りは下ごしらえを重視して調理していく。師匠である風見鶏亭の女将に『料理は下ごしらえが大切』と教えられているのでそこは徹底的に追及していく。


 夕食の準備をしていると、ルイ達が屋敷に戻ってきた。どうやら色々あったようで、少し疲れているように見える。


 「おかえりなさいませ。大浴場の準備はもう出来ていますので、ごゆっくりおくつろぎ下さい」


 ルイ達が大浴場に入っている間に料理を仕上げて食堂へと運んでおく。食器やナイフ、フォークを丁寧に並べてルイ達が来るまで待機しておく。


 しばらくするとルイ達が食堂に来たので、みんなで食事をする。自分が作った料理を美味しそうに食べてくれると、何とも言えない嬉しさをルミナは感じた。


 今日起きたことを話し合っているとルイとユフィアはアルミラージの群れから冒険者の友人を助けて、セレーナとアイビーは新人狩りをする冒険者に襲われたようだが難なく対処したようだった。


 夕食が済むとルミナは入浴をする為に大浴場へと向かう。そこで身体の隅々を石鹸のついたスポンジで丁寧に洗い流して、温かいお湯が張っている湯船へと浸かる。


 「ふう……」


 大浴場にルミナの甘い吐息が漏れる。


こうしてのんびりと湯船に浸かりながら身体をほぐすことがルミナの楽しみの 1つだった。こうすることで心身の疲れが癒やされていく瞬間が彼女は好きだった。


 そして大浴場から上がると、ルミナは屋敷中の扉や窓の鍵を施錠・確認し終えると、自分の部屋へと戻る。


 就寝する前には好きな小説を読むのもルミナにとって大切な時間だ。ちなみに今読んでいるのはとあるメイドと主人が恋に落ちる恋愛ものの小説だった。


 就寝時間になると、ルミナはベットに入り眠りにつく。また明日訪れるであろう充実で幸せな1日を思いを馳せながら。


 「おやすみなさい」


 こうしてルミナの1日は終わるのだった。

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