引越し②
部屋の整理が終えると、ルミナが大浴場の準備をしてくれていたので夕食前に風呂に入ることにした。
どうやらこの大浴場そのものがマジックアイテムになっており、魔力さえあれば自動的にお湯を生み出すという仕組みになっているようだ。
普通の風呂は水を湯船に用意して沸かす等、色々準備に手間がかかるのだが、これはとても便利だ。
それにしても、こうして足を伸ばしながら入る風呂は本当に格別だ。これから毎日入れると思うと自然と笑みが溢れてしまうな。
「やはり風呂は良いなぁ……」
そんな風ににやけていると、脱衣場の方が何やら騒がしいな。何やら嫌な予感がするのは気のせいだろうか?
「お風呂だー!」
何とセレーナが一糸纏わぬ生まれたままの姿で大浴場へと乱入してきたのだ。
湯気によって隠されてよく見えなかったが、やはりセレーナはモデルのようにバランスの良い体型だな。
「ちょっとセレーナ、もう少し落ち着きなさいよ」
「滑ると危ないですよ?」
そしてユフィアとアイビーも後から続く。
2人はセレーナと違いバスタオルで前を隠してはいるが、太ももや脇腹、そしてその凄まじい胸は殆ど隠しきれていない。むしろこっちの方が逆に魅力的に思えた。
「ルイ様、お入りになっていたのですね」
「1番風呂は私が良かったのになー」
「入っているなら入っているって言っておきなさいよ」
しかし、それでもチラチラとつい視線が3人の方に動いてしまうのはやはり男としての本能なのだろうか。
我慢しようと理性では訴えているのだがなかなか制御が効かず、ちょっとした仕草だけでもついつい視線が吸い寄せららてしまう。
「とても気持ちが良いですね」
「うわー、こんなに大きなお風呂に入れるなんて夢のようだな」
「悪くないわね」
「いやいや、何で3人は男の俺がいるのにそんなに平気そうなんだよ!?」
恥じらうような素振りを一切見せずに湯船へと浸かり、気がついたら前も右も左も美しい肌色に囲まれることになっていた。
「ルイ様は特別ですから」
「全然平気だよ」
「別に見られても減るものでもないし」
聞いた俺が悪かったな。しかしこのままてまは俺の理性が持ちそうにない。
「俺はもう充分温まったから、身体を洗って出るとするよ」
何とも居た堪れなくなり、視線をなるべく3人に向けないようにして、ゆっくりと湯船から離れようとする。
するとそんな俺にユフィアが寄り添ってくる。
「そうだ、ルイ様の背中を私に流させて下さい。これは眷属としての義務ですから」
おいおい、そんな義務聞いたことないぞ!
「私もルイの背中を流したい! 姉さんも一緒にやろうよ!」
「ア、アタシは絶対にそんなことしないわよ!」
何故か誰が俺の背中を流すのかで盛り上がり始める。
「勘弁してくれよ……」
俺の理性よ、どうか保ってくれ……。
◆◆
大浴場では色々あったが、気を取り直して夕飯だ。
食堂に行くととても良い匂いが漂ってくる。この香りはまさか!
「お待たせしました、師匠直伝の料理です」
そう言ってルミナがテーブルの上に用意したのは、俺にとって見慣れた料理だった。
「これはもしかしてカレーか!?」
色は緑色で少し液体っぽいがこれは間違いなくカレーだ。地球でいうグリーンカレーみたいなものかな。
香辛料たっぷりの緑色のカレースープには一口大の大きさに切られた鶏肉や野菜がごろごろと入っている。
そして何と言っても香辛料たっぷりの刺激的な香りが鼻腔を擽り、それだけでも食欲が増していく。
「では、いただきます!」
まずカレースープのみで味わおうと、俺はスプーン深い皿に沈めて掬い上げると、そのまま口へと運ぶ。
まず感じられたのは辛み。だが辛すぎると言うわけではない。
多くある香辛料を絶妙なバランスで調合されているのか、程よい辛さなのでとても食べやすかった。
そして鶏肉はよく煮込まれているからなのか、口の中に入れただけで瞬く間に崩れる程まで柔らかくなっている。
野菜もスープをたっぷりと吸い込んでいてとても柔らかい。それぞれの違う野菜の食感が心地良い。
別で用意されたパンも普段食べるものよりも断然柔らかくて美味しかった。
「これはこれは!」
「美味しいよこれ!」
「ちょっと辛いけど、なかなかいけるわね」
どうやらユフィア達もカレーを気に入ったようだな。
このカレーは本当に美味しい。確かに美味しいのだが……。
「やはりカレーは米と一緒に食べてみたいな」
ポツリと、そんな言葉が漏れてしまう。
そんな俺にルミナが話しかけてくる。
「よろしければお米は如何でしょうか?」
「あるのか!?」
「はい。師匠がご主人様は大のお米好きだと聞いていたので、念の為にと思って炊いておきました」
女将さん、ルミナ、グッジョブだ!
「では、頼む」
「畏まりました」
そしてルミナは炊き立ての米を持って来てくれた。カレーと米が合わさることでカレーライスとなる。俺的にはやはりこちらの方がしっくりくるな。
そしてカレースープと米を同時に掬い上げで口にする。
「素晴らしい」
口の中に広がる完全な味わいに満足する。
やはりカレーは米あってこそ完全な料理になる。まさかもう食べられないかと思っていたこの味にまた巡り会えるとは、もはや感動でしかない。
あまりにも美味しいので3杯もお代わりしてしまった。だって本当に美味しかったんだもん。
「コーヒーをどうぞ」
「ありがとう、ルミナ」
俺はルミナが淹れてくれたコーヒーを飲む。口の中がスッキリして落ち着くな。
「さて、一段落したところで、今更ながらルミナには俺達について話しておこうと思う」
この屋敷に住まわせて貰っている以上、ルミナには知らせる必要がある。
俺は彼女に【救世の集い】がどう言った経緯で設立されたのか、そしてこれからの方針を教えていく。
「なるほど、貴方方はとても凄い方だったんですね。それならあれ程の実力をお持ちなのも納得がいきます」
すると思っていたよりもルミナは物分かりが良いようだ。感心したように頷いている。
「でしたらわたくしも眷属にして頂けないでしょうか?」
更にルミナは自ら俺の眷属になりたいと言い出した。
「話を聞いていたのか? 俺達は邪神の使徒と敵対しているんだ。俺の眷属になれば君も奴等と敵対することになるんだぞ」
「理解しています。ですが貴方はわたくしの為に大切なこの屋敷を取り戻して下さいました。わたくしは貴方を主人として忠誠を誓いたいのです。その証としてわたくしを眷属にして下さい」
そんな事で、と言ったら怒られるんだろうな。彼女にとってこの屋敷はおそらく命より大切なのものだということは理解している。だからこそこれ程までの忠誠心を見せてくれているのだろう。
「本当に良いんだな、ルミナ?」
「メイドに二言はありません。お願いします」
どうやら彼女の決心は固いようだ。
「分かった。眷属契約、発動!」
俺はルミナを眷属にするべく加護を発動する。するとルミナに淡い光が包み込むと、その左手の甲に眷属の紋章が浮かび上がる。
「どうやらわたくしに新たな加護を得たようです」
「どんな加護か見させて貰うぞ」
名前:ルミナ
種族:妖精族
適性:闇属性
魔力:200000
魔法:ダークボール(小)・テラーミスト(中)・ファントム(大)
加護:不可視化・家内統制
家内統制
自身が領域にしている建物内を自在に把握して操る。ただし生きているものは操れない。
「家内統制か。試しに使って見てくれないか?」
「畏まりました。家内統制」
ルミナが新たな加護を発動する。すると家具がふわりと浮かび上がりると、まるで手足のようにそれを自在に操る。
更に試してみたところ、どうやら屋敷内の状況ならどこにいても分かるらしい。つまりこの屋敷内に関してはルミナが圧倒的に有利ということだ。
「これならお掃除が捗りそうです」
そう言ってルミナは大量の箒や塵取り、雑巾、はたき等を自在に操り始める。他人が見たら間違いなく心霊現象だと思うだろうな。
--眷属を得たことにより新たな加護を獲得しました。
また新しい加護が増えたようだな。さて、今回はどんな加護が得られたのかな?
名前:ルイ
種族:人間
適性:無属性
魔力:3000000
魔法: マナチェーン(小)・マナバレット(中)・マジックキャンセル(大)
加護:鑑定慧眼・危機察知・魔力纏鎧・異常無効・空間収納・自己回復・禁忌解呪・眷属契約・眷属念話・真偽看破・広域探索・座標転移
座標転移
座標を設置することにより、互いの座標を行き来することが出来る。座標は変更が可能で最大3ヶ所まで。
おお! ここに来て転移系の加護を得ることが出来たぞ! 制限付きではあるがかなり使えそうだ! 早速試してみよう!
俺は屋敷内の大広間を1つ目の座標に、屋敷外の庭に2つ目、3つ目を自分の部屋にしてみる。
「座標転移」
そして加護を発動すると、俺は瞬く間に大広間から庭に、庭から自分の部屋へと転移することが出来た。
「凄い! 本当に転移出来たぞ!!」
いかんいかん、感極まってテンションが高まってしまった。少し落ち着こう。
更に検証をしてみて幾つか分かったことがある。
1つ目は転移には魔力を消費すること。どうやら 1度転移すると魔力が10000消費するようだ。これは持ち前の魔力量があるので全然大丈夫だ。
そして2つ目。転移する時に俺が触れている人物も一緒に転移することが出来るようだ。これならユフィア達を置き去りにすることはないな。
これなら長距離の旅の途中であってもこの屋敷に戻ってこれるから、これはかなり便利な加護だな。
「これで正式に貴方様の眷属になれたのですね。これからは一生懸命お仕え致しますね、ご主人様」
「ご主人様は少し照れるけど……改めてよろしくな、ルミナ」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
こうして俺に4人目の眷属が出来たのだった。




