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救世のルファディア  作者: yato
第3章 混獣編
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活動拠点③

 リリラさんに頼んで訳あり物件に案内して貰う。場所はどうやらオルフィンの西側で中心部からだいぶ離れているようだ。


 しかし賑わっている中心部と違ってこの辺りはとても静かで過ごしやすそうだ。それにとても治安が良さそうなのが好印象だな。


 「あれが最後の物件となります」


 ようやく着いたか。


 そこに建っていたのは落ち着いた雰囲気の豪邸だった。


 リリラさんによるとこの豪邸は今から10年前、 1人の女資産家の手によって建てられたものらしい。


 元々、女資産家はA等級冒険者として名を馳せていたのだが、依頼中で負った怪我によって引退を余儀なくされ、以降は資産家として大いに活躍していたそうだ。


 しかしそんな彼女も病には勝てず、3年前に亡くなったそうだ。


 それから色々あってこの屋敷はゴードン商会に渡ったそうなのだが、それから奇妙なことが起きるようになった。


 誰もいないのに視線を感じたり、触れてもいないのに物が勝手に動いたり、何処からともなく騒音が響いたりする等の現象が起きるようになった。


 あまりにも不気味な出来事が相次いだことにより、いつしかこの屋敷を購入しようとする者はいなくなり、現在に至るということだ。


 「我々の間では女資産家の幽霊がこの屋敷に取り憑いているのではと考えています」


 「女資産家の幽霊……」


 ゴードン商会は名のある除霊師に依頼を頼んだらしいのだが結局失敗。どうにも出来ない状況らしい。


 「良さそうな雰囲気だな」


 派手でもなく地味でもなく、落ち着いた雰囲気の建物に一瞬で俺は気に入ってしまう。それはユフィア達も同じようで、とても喜んでいる様子だ。


 「取り敢えず中を見てみよう。では早速中の案内をお願いし--って、リリラさん、どうしたんですか?」


 「……いえ、申し訳ないのですが私は遠慮させてください」


 「どうしてですか?」


 「この屋敷に何かあるのは本当なんです。もしもの時に私がいれば皆様のご迷惑になると思いますので、ここで待たせて貰います……」


 リリラさんのこの怯えよう。まさか本当にこの屋敷には幽霊がいるのか?


 「分かりました。俺達だけで見てきます」

 

 「本当に申し訳ありません」


 リリラさんにもしものことがあれば大変だしな。本当はユフィア達にも外にいて貰いたいけど、絶対について来る言うので同行させる。


 屋敷の鍵をリリラさんに借りて門を開けと、まずは広い庭が眼前に広がる。


 長年人が住んでいないと聞いていたので、雑草が生い茂っていると思っていたのだが、何故かきちんと手入れされており、しかも花壇には様々な種類の花が咲き乱れている。


 そしてプールの水も今からでも入れそうな程透き通っており、とても涼しげだ。


 屋敷には入ると大広間が俺達を出迎える。


 構造としては地下には倉庫が、 1階には調理場、食堂、浴場、便所、訓練場が、2•3階にはそれぞれ6部屋ずつ備えられている。


 うん、内装はとても綺麗でオシャレだ。外装を見て思ったが余程この豪邸を建てた女資産家のセンスが良かったようだ。


 「とても素敵です!」


 「見て見て! お風呂に訓練場まであるよ!」


 「へえ、良いんじゃない?」


 どうやら女性陣にも大変好評のようだ。


 ただ 1つだけ、どうしても腑に落ちないことがある。


 どうしてこんなにも綺麗なんだ?


 庭の時もそうだったが、屋敷内も細かいところまで掃除や手入れされており、埃 1つすらない。長年誰も住んでいない筈なのにこれは明らかに異常だ。

 

 誰かがこの屋敷を定期的に掃除しているとでもいうのか? だとしたら一体誰がそんなことを……?


 深まる謎に頭を悩ませていると--


 「………………………ケ」


 「ん? いま何か言ったか?」


 「いいえ」


 「?」


 「空耳じゃない?」


 気のせいか?


 「…………テ…………ケ」


 『--っ!?』


 今度はユフィア達も聞こえたようだな。つまりこれは空耳なんかではない!


 「デ……テ……イ……ケ」


 とても暗くて苦しげで、男なのか女なのかも分からないような寒気を感じてしまう声が屋敷内に響き渡る。


 やはりこの屋敷には幽霊がいるのか?


 「……出テ……イケ……」


 徐々に声がはっきりとしてくる。それと同時に周囲にある椅子や机が震え出す。これが俗に言う心霊現象というものなのだろうか。初めて見たぞ。


 「ココカラ出テイケ!」


 一際強い声が屋敷内に響き渡ると、何処からともなく出現した黒い煙が渦を巻いて一箇所に集まり出す。やがてそれは半透明に透けた女性へと姿を変える。


 あれが、この屋敷を建てた女資産家の幽霊なのだろうか? 明らかにこちらを敵視している。


 「ルイ様、ここは私に任せて下さい。霊が相手なら私の浄化魔法が有効の筈です。ターンアンデッド」


 ユフィアがアンデッドに効く浄化魔法を発動すると、眩い光が女資産家の幽霊にへと降り注ぐ。


 「出テイケ!!」


 「そんな、浄化魔法が効いていない!?」


 何故かユフィアの浄化魔法が効かなかったようだ。


 もしかして、女資産家の幽霊は相当以上に強力なのか? 生前はA等級冒険者をしていたと効いているし、あり得ないことはない。


 「だったらこれならどうだ!」


 俺はレイヴェルを取り出して女資産家の幽霊へと突き刺す。


 レイヴェルは如何なる不浄の存在を滅する神槍。これなら確実に消滅させることが出来る筈だ。


 しかし、ここでまた非常事態が発生する。


 「ココカラ出テイケ!!」


 「……嘘だろ!?」


 確実にレイヴェルを突き刺した筈なのに、女資産家の幽霊が消滅しないなんて絶対にあり得ない!


 「出テイケ! ダークボール!!」


 すると女資産家の幽霊の周囲に魔法陣が出現し、そこから闇属性の球が放たれる。


 こいつ、魔法まで発動するのか!


 放たれる闇の球を避けながらもう 1度女資産家の幽霊にレイヴェルを突き刺す。しかし、結果は同じで消滅させることは出来なかった。


 「くそ、どうすれば……!」


 必死に対策を考えるも為す術なく女資産家の幽霊に俺達は翻弄されてしまう。


 「もう、本当にあれは幽霊なのかしら!? まるで別の存在のようだわ!」


 「……別の存在。……そうか分かったぞ!」


 ユフィアの浄化魔法だけでなくレイヴェルの力でさえ女資産家の幽霊を消滅させることは出来なかった。つまり効果を発揮しなかったということだ。


 だとしたら考えられることは 1つだけだ!


 「マジックキャンセル!」


 俺が魔法を発動すると、女資産家の幽霊は嘘のように一瞬で消滅してしまう。やはりそうだったのか……。


 「……消えた?」


 「もしかして成仏したのかしら?」


 「ルイ様、今のはもしかして……」


 突然女資産家の幽霊が消えてセレーナとアイビーは困惑している様子だが、ユフィアは気がついたようだ。


 「あれは幽霊なんかじゃない。魔法によって作り作られた、ただの幻影だ」


 あれが幽霊ではなく魔法によって作り出されたものならレイヴェルで祓えなかったのも頷ける。


 そしてあれが魔法だということはそれを発動している存在がいるということだ。


 「広域探索」


 俺はその存在に加護を発動する。そしてそいつは今、この屋敷内にいる。そしてその場所は3階の空き部屋だ!


 俺達はすぐにそこへ向かうと、そこには誰もいなかった。だが俺の広域探索は確かにここを示している。


 「ここにいるのはもう分かっている。大人しく出てきてくれ」


 ……‥……………………………………………。


 反応なしか。少し強引になるが仕方がない。


 「出て来ないのならこっちはもう容赦しない。覚悟しろ」


 そう言って俺はレイヴェルを構える。


 「……ちょっと待て! もう降参しますから!」


 すると、ようやくこの幽霊騒動の真犯人が姿を現した。


 「……メイド?」


 年齢は中学生ぐらいだろうか、人形のように整った顔立ち、黒髪のおかっぱと黒い瞳、幼く小柄で細身な身体を身に纏うのは濃紺ワンピースにフリル付きの白ワンピースとカチューシャのメイド服、そして1番気になるのが背中にあるまるでクロアゲハのような羽だ。


 「この方はもしかして妖精族ではないでしょうか?」


 妖精族。


 とても臆病な性格の為普段は人前に姿を見せない種族だ。高い魔力と背中に生えている昆虫のような羽が特徴だ。


 名前:ルミナ

 種族:妖精族

 適性:闇属性

 魔力:20000

 魔法:ダークボール(小)・テラーミスト(中)・ファントム(大)

 加護:不可視化


 不可視化

 自身と触れているものを透明にする。


 確かに妖精族で間違いないようだな。まさかこんなところで希少な種族と出会えるとは思わなかった。


 「君が魔法で幻影を見せて俺達を脅かそうとしたんだな?」


 「……はい」


 「どうしてこんなことをしたのか説明して貰おうか」


 「……はい」


 少女--ルミナは怯えながらもことの経緯を話し始める。


 元々ルミナは妖精族だけが住む妖精の国の生まれらしい。


 しかし彼女は妖精の国では不吉とされる黒い羽を持って生まれた為に酷い迫害を受けていたそうだ。


 それでルミナは妖精の国から逃げ出し、天涯孤独の身となった。そんな彼女に手を差し伸べたのがこの屋敷の主である女資産家だった。


 女資産家はルミナのことをまるで娘のように接しただけでなく常識や作法等の教育を施した。それにより彼女は立派なメイドになったという。


 今まで迫害されてきたルミナにとって女資産家との生活はとても幸せなもので、いつまでも続くとそう思っていた。


 しかし、その幸せも長くは続かなかった。


 女資産家は不治の病にかかり、為す術なくこの世を去ってしまったのだ。


 そのせいで屋敷は商人の手に渡ってしまう。しかもその商人は屋敷を取り壊して、商品を保管する為の倉庫を作ろうとした。


 女資産家との大切な思い出が詰まった屋敷を取り壊すことを良しとしなかったルミナは今回の騒動を思いついた。


 魔法で女資産家の幻影を生み出し、自身の姿を透明にして家具を動かしたりして商人を追い出したのだ。


 それからもルミナは同じようにこの屋敷を購入しようとする者を脅かしては立ち退かせ、いつしか女資産家の幽霊が出るという噂を作り出した。


 いつまでもこの屋敷が無事であるように。


 「なるほど、そういう事情があったのか」


 「……はい、脅かして申し訳ありません」


 ルミナは申し訳なさそうに謝ってくる。


 「それで、これからもルミナはこの屋敷を守っていくつまりなのか? この屋敷は既にゴードン商会が買い取っているんだ。物分かりが分かる相手なら兎も角、常識が通用しない相手がいつかは現れるぞ?」


 「この屋敷はわたくしにとって大切なものです。何があっても守り抜くと決めたのです。たとえこの命が失われることになったとしても……」


 どうやら彼女がこの屋敷に対する思いは相当なもののようだ。このままではいずれルミナの身が危ない。


 そうならない方法が1つだけある。


 「だったら俺達をこの屋敷には住まわせてくれないか? 勿論ルミナにはずっとここにいても構わないし、決してこの屋敷を取り壊すことはしない。それならお互いの利害が一致するだろう」


 「…………本当にいいんですか?」

 

 「ああ。これ以上ルミナとは戦いたくないし、俺達はこの屋敷が気に入ったんだ。みんなもそれで良いだろう?」


 「はい。ルイ様がそう仰られるのなら」


 「良いよ!」


 「好きにしたら」


 「ユフィア達も了承してくれたし、どうかな?」


 「わたくしとしてもこの屋敷に住まわせてくれるのであれば文句なんてありません。どうかよろしくお願いします」


 よし、交渉成立だな。そうと決まればさっさとやるべきことをするとしよう。


 俺達は一度外に出て、リリラさんにこの屋敷を購入することを伝える。


 念の為にルミナのことは伏せておく。心霊現象が彼女によって起こされていたと知られたら色々と面倒なことになるからだ。


 暫くしたら女資産家の幽霊を退治したと言えばルミナが疑われることはないだろう。


 そして20000000リルを現金で支払い、契約書にサインする。


 「これで契約は完了です。今日からこの屋敷はルイさんの物です。出来れば幽霊なんかに負けないで下さいね」


 そう言ってリリラさんは行ってしまった。こちらこそ、なんか騙すような真似をして申し訳ない。


 屋敷に戻って無事に購入出来たことをみんなに告げる。


 ユフィア達は素敵な豪邸に暮らせるようになったことに喜び、ルミナはこれからは安心して暮らせることに安堵している。

 

 「と、いうわけでこれからよろしく頼むな、ルミナ」


 「はい、こちらこそよろしくお願いします」


 こうして俺達は新たな拠点を手に入れた。

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