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救世のルファディア  作者: yato
第2章 世界樹編
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それぞれの昇格試験③

C等級昇格試験当日。


 俺は指定された時間よりも早めに集合場所へと訪れていた。今回の昇格試験のリーダーを任せられたからには他の冒険者よりも行動に気をつけなければならないからな。


 念の為に30分程早く到着すると既に試験官のゾールさんがいたので、今回借りる馬と馬車を確認しておく。


 馬車は通常のものよりも大きく、今回昇格試験を受ける6人の冒険者が乗るのに不都合はなさそうだ。


 そして馬車を引く2頭の馬。普通の馬よりは全然大きい。ゾールさんが言うにはワークホースという魔物らしい。


 名前:ワークホース

 種族:魔獣種

 等級:E

 魔力:300


 ワークホース

 主に運搬用として扱われる馬型の魔物。体格は通常の馬よりは大きく、温厚で体力も多いので主に馬車等を引く為に飼われていることが多い。


 このワークホースは冒険者ギルドが特殊な訓練で調教しているので、安心してもいいようだ。


 多少に普通の馬よりは大きいかもしれないが、普段はスレイプニルであるグラニといるからか、どうしても小柄に思えてしまうな。


 「おはよう、ルイ」


 「今日からしばらくよろしくな!」


 馬車と馬の確認をしていると、エリオとクードの2人が現れる。


 「待たせたな」


 「みんな早いわね。少し遅れたかしら?」


 そして拳闘家のジョーゴーと魔法使いのリーナとも合流する。


 そして約束の時間である6時を告げる鐘の音が鳴る。


 「……どうやら置かれている者がいるようだな」


 もう集合時間は過ぎているというのに今だに姿を見て見せないのは弓使いの猫人であるニャルナだった。


 他の冒険者達も気にしているのかキョロキョロと周囲を見回している。


 「ニャルナが指定された時間になっても来ないんですが、こういう場合はどうなるんですか?」


 まさか大事な昇格試験だというのに遅刻する者がいるとは想定していなかったので、念の為にゾールさんに確認をする。


 「それはだな……」


 「遅刻だにゃ!!」


 ゾールさんが質問に答えようとした時、慌ててこちらに走ってくるのは遅刻をしたニャルナだった。


 「寝坊してしまったにゃ! 本当にごめんなのにゃ!」


 「……ニャルナ、今回の昇格試験は失格とする」


 何度も遅れたことを必死に謝ってくるニャルナだったが、ゾールさんはそんな彼女に無慈悲にもそう告げた。


 「待って欲しいにゃ! 遅刻したのは確かだけどまだ出発していないにゃ! 少しくらい多めに見て欲しいにゃ!」


 まだ盗賊退治すらしていないのにここで失格になるのは流石に嫌なようで、必死に弁明するニャルナ。


 しかし、それでもゾールさんの意志は固いようだ。


 「『少しぐらい』だと? もしこれが他国の貴族や王族を相手にしても同じような言葉が言えるのか?」


 「それは……」


 「お前が自分の足を引っ張るのは勝手だ。しかし今回の昇格試験は仮にでもパーティを組んで行う。それが他の面子にまで被害が及ぶかもしれないのだぞ? それを自覚していない奴にC等級冒険者になる資格はない。出直して来るんだな」


 「………………はいにゃ」


 流石に反論の余地がなかったのか、ニャルナはかなり落ち込んだ様子でこの場を去ることになった。


 流石はC等級昇格試験ともなると甘さは許されないようだな。冒険者としての責任を持ってこの昇格試験を受けよう。


 「ではこれからC等級昇格試験を開始する。全員気を引き締めて行うように!」


 こうして俺達のC等級昇格試験が始まった。



 ◆◆



 ガタゴトと揺れながら俺達を乗せた馬車は盗賊のアジトへと向かっている。

 

 話し合いで最初に御者台に座るのエリオとゾール、次がニーナとクード、その次が俺とジョーゴーの順番で、これを3時間毎に交代することになった。


 「それで、本当にB等級魔物のタイラントリザードを倒したの?」


 「まだ疑うか。儂はこの眼ではっきりと見たんだぞ」


 「ルイの実力は折り紙付きだぜ。それに魔法だった使えるんだ!」


 「買いかぶりすぎさ」


 こうして他愛もない話をして親睦を深めていく。全員なかなか親しみやすい性格だったのですぐに打ち解けるようになった。

 

 エリオともクードはD等級昇格試験を共に受けて意気投合して以降、2人はずっとパーティを組んでいるようだ。そして今回のC等級昇格試験に合格出来たらクラン設立を視野に入れているらしい。


 魔法使いのニーナは既に【魔導の探究】という魔法使い専用のクランに入っているようで、彼女は期待の新人らしい。それならD等級冒険者でありながらあれ程の魔力量を保有しているのも頷ける。


 拳闘士のジョーゴーは所謂一匹狼という奴だった。元々戦闘が好きな性格だったので実家の鍛治師を継がずに冒険者になったそうだ。それに時々闘技場で金銭を稼ぐ為に参加しているそうだ。


 俺もこの昇格試験を合格してC等級冒険者になったらクラン設立をすると伝えると、どうやら俺が美少女達を侍らせているという情報をクードが掴んでいたらしく、非常に羨ましいと彼に小突かれる羽目になってしまった。


 小休憩の為に馬車を停めて、盗賊退治の打ち合わせをする。


 ゾールさんが言うには盗賊達が根城にしている洞窟まではあと5時間程で着くそうだ。


 ここで問題となるのはどの時間帯で盗賊のアジトへと奇襲を仕掛けるかだ。


 俺はアジトに奇襲を仕掛けるのは19時以降にしないかと提案した。


 理由はその時間帯なら殆どの盗賊達がアジトに集まっていると思われるからだ。折角盗賊達を殲滅する為に来たというのに取り逃すのは良くないと思われる。


 それとその時間帯なら奴らは食事や酒を口にしている頃の筈だ。食事中なら奴らも油断しているだろう。それに酒を飲んでいてくれたら僅かでも思考が低下しているはずだ。


 「良い考えだね」


 「賛成だ」


 「決まりね」


 「異論はない」

 

 どうやら他のみんなも賛成してくれたようで、俺達はそれ合わせて作戦を練ることにする。


 それから4時間後。


 俺達は盗賊達がアジトにしている洞窟から離れた場所にあるバナの街へと到着した。


 俺達は作戦の最終確認を終えて、軽い食事をとって盗賊のアジトへと向かう。勿論、目立たないように馬と馬車は宿屋に預けて徒歩で向かうことにしている。


 1時間程歩いてようやく盗賊達のアジトである洞窟へと到着した俺達。


 洞窟の前には2人の若い盗賊が見張り役として佇んでいる。洞窟内には僅かだがたくさんの笑い声が聞こえている。


 「道案内は終わりだ。後は自分達で何とかしろよ」


 そう言ってゾールさんは何処かへと去ってしまう。おそらく遠くから俺達のことを観察するのだろう。


 さて、まずはあの見張り役2人を何とかしないとな。あいつらに大声でも上がられたら面倒だ。仕留めるなら気づかれずに仕留めたい。


 エリオとニーナの魔法で見張り役を仕留めるということを考えたが、魔法を発動する際に気付かれる可能性があるとのことで諦めた。ジョーゴーも拳闘士という性質状、隠密には適していない。


 そうなると残った俺とクードが見張り役を仕留めることになる。


 クードは獣人属性特有の身体能力と気配を消すことには長けた斥候なので適任だと判断した。


 しかし彼は人を殺めるという経験がないので実践経験のある俺と一緒に動けば多少は落ち着くだろう。


 俺とクードは見張り役に気付かれないよう慎重に近づく。そして俺の合図と共に見張り役2人を仕留めた。奴らは声を上げることなく絶命し、そのまま倒れた。


 「………………」


 あれ程テンションが高いクードがじっと倒れている見張り役を見つめている。悪人とは言え人を殺したという罪悪感があるのだろう。僅かに震えている。


 「良くやったぞ、クード」


 俺はそんなクードに肩を置いて褒めた。確かに悪人とは言え人を殺した。だがそれはこれ以上この盗賊による被害がもう出ないということでもある。


 俺の言葉にクードは少しだけ強張った表情を緩めて「すまない」だけ言った。


 気を引き締めたクードは洞窟内の確認をする。クードによれば洞窟内には情報通り30人近くの盗賊達が飯や酒を口にして騒いでいるそうだ。しかも余程浮かれているようで、武器や防具をまともに装備していない様子らしい。


 そして運の良いことに今回は人質らしき人物はいないそうだ。これなら心置きなく盗賊退治に集中出来るな。

 

 俺はエリオ達に合図を送ってこちらに来させる。


 実戦経験のあるジョーゴーはともかく初めて人が死ぬという状況を目の当たりにしたエリオとニーナは思わず死体から視線を晒してしまう。


 だがこれからアジトに突入するんだ。この程度で根を上げられては困る。


 「盗賊達は予想通り食事中のようだ。殆どの盗賊達は油断しているからまずはエリオとニーナが火力のある魔法で奇襲をかける。そして隙が出来た瞬間に俺とクード、そしてジョーゴーで盗賊達を仕留めていく。これでいいな?」


 「おう!」


 「了解した」


 「……分かったよ」


 「……ええ」


 クードやジョーゴーはともかく、エリオとニーナは若干心配だな。ここはリーダーとして厳しくいう必要があるな。


 「エリオ、ニーナ、もし出来そうにないのなら今ここで昇格試験を棄権しろ。ここはもう戦場になるんだ。その程度の覚悟で一緒に行動されると迷惑だ」


 俺は厳しくも正直な言葉を2人に告げる。


 それを聞いたエリオは申し訳なさそうに、ニーナは悔しそうに眉を顰める。


 「……弱気なところを見せて申し訳ない。奇襲攻撃は任せて」


 「そんな風に言われて黙って帰る訳には行かないわ。やってやるわよ」


 どうやら腹を括ったようだな。これならもう大丈夫だろう。


 「では行こう」


 俺達は気を引き締めて洞窟壁画へと進むと、盗賊達が宴会をしている広場へと着いた。


 盗賊達は俺達がアジトに侵入していることすら気づかない様子で、呑気に飯や酒を楽しんでいた。


 「手筈通りに行くぞ。みんな準備はいいか?」


 俺の言葉に全員が戦闘準備に入る。


 「よし、行くぞ!」


 「エアレイド!」


 「アクアスラッシュ!」


 そして俺の掛け声と同時にエリオとニーナは魔法を発動する。


 「な、何だこれは!?」


 「敵襲だ!?」


 突如出現した魔法陣に盗賊達が騒ぎ始めが、もう遅い。奴らが気付いた時には既に魔法陣から魔法が放たれていた。


 『ぎゃあああああああああああっ!?』


 エリオとニーナの強烈な魔法が盗賊達を襲う。ある者は複数の鋭利な風で身体を切り刻まれ、ある者は水の刃で身体を両断され、瞬く間に盗賊達は断末魔と共にその生涯を終えることになる。


 「行くぞ!」


 「おうよ!」


 「承知!」


 エリオとニーナの魔法が止まるのと同時に俺とクード、ジョーゴーが盗賊達へと突っ込む。突然の奇襲に盗賊達は慌てふためいている様子で、今なら難なく仕留めることが出来る。


 「ふんっ!」


 「ぐっ!?」


 流石は実践経験があるだけにジョーゴーは盗賊達を何の躊躇もなく蹴散らしていく。彼の拳闘士としての実力は本物で洗練された動きで相手の急所を狙って仕留めていく。


 「くたばりやがれ!」


 「ぎゃあっ!!」


 そしてクードも先に見張り役を仕留めておいたのが功を成したようで、いつもように短剣を振るって盗賊達を仕留めていく。獣人族特有の身体能力と身のこなしによって盗賊達は翻弄されてしまう。


 「くそ、奇襲なんて卑怯だぞ!」


 「寝言は寝てから言え」


 「がはっ!?」


 散々悪どいことをしておいて卑怯なんて言葉を使うことに苛立ちを覚えながら、俺は手にしているレイヴェルで襲いかかって来る盗賊達を始末していく。


 やはり盗賊達は相当な酔っているのか、まともに戦うことが出来ないようなので、楽に仕留めることが出来た。


 「くそ、こいつら強え! 逃げるぞ!」


 そして情報にあった盗賊達の棟梁と思われる仮面の男が勝ち目がないと判断したのか2名程の部下を連れて逃げようとするのが視界に入る。


 俺は盗賊達を薙ぎ払いながら出入口へと向かおうとする棟梁達よりも早く先回りする。


 「逃がさないぞ」


 出入り口塞ぐようにして、レイヴェルの穂先を棟梁達に向ける。


 「まさか……テメェは……!?」


 すると、俺の姿を見て棟梁はわなわなと震え出す。


 「まさかこんなところで会えるとは思わなかったぜ!」


 そして棟梁は自ら仮面を取り、その素顔を晒した。


 「お前は……ガイか!?」


 そう、この棟梁の正体はかつて共にD等級昇格試験を受けたことがある元冒険者のガイだった。髪や髭を生やしてはいるが間違いなく奴だ。


 あまりにも粗暴で自分勝手な性格が災いしてD等級昇格試験には不合格、さらに暴れ回ったせいで捕まった。その後は冒険者証を剥奪されて2度と冒険者には戻れなくなり、オルフィンを去ったと噂で聞いている。


 「まさかこんなところで盗賊の棟梁をしているとは、堕ちたものだな」


 「誰のせいでこうなったと思っていやがる!? あの時昇格試験に合格さえしていればこうはならなかったんだ! それを全部お前が邪魔したせいだぞ!!」


 うん、完全に八つ当たりだな。相変わらず自己中心的な性格だな。


 「テメェだけは絶対に殺してやる! 死にやがれ!」


 すると棟梁--ガイは自慢のフレイムアックスを俺に目掛けて振るってくる。さらに同時に部下2名が手にしていた剣で両サイドから襲ってくる。


 「甘いな。マジックショット」


 俺はまずガイの配下2人の頭を魔弾で撃ち抜き、そしてレイヴェルで奴の一撃を受け止める。


 「な、何だと!?」


 まさか渾身の一撃が受け止められるとは思っていなかったようで、唖然としつつも直ぐに後退をして再びフレイムアックスを構える。


 「くそ、一度防いだからと言って調子に乗るなよ!」


 そう言ってガイはフレイムアックスを何度も大きく振り回してくる。


 「……話にならないな」


 技術も鋭さ等一切ない、本当にただ力任せに振るわれるだけなので回避するのは簡単だった。D等級昇格試験の時からまるで成長していないな。


 「来るな! 来るんじゃねえ!!」


 叫びながら取り乱しているガイはフレイムアックスから複数の火球を俺に目掛けて放ってくる。


 俺はその火球を全て避けながらガイへと接近すると、レイヴェルを振るって奴の両腕を斬り落とす。


 「ぎゃああああああっ!? 俺の腕がああああぁぁぁぁぁっ!?」


 両腕の切断面から大量の血を吹き出しながらガイは断末魔の叫びを上げる。

 

 「何で……冒険者じゃなくなってから折角楽しいことを見つけたのに、何でお前はいつも俺の邪魔をするんだよ! お前さえいなければずっと楽しいままだったのによ!!」


 「知るかよ」


 これ以上悪党の戯言は聞くに耐えないので、とどめを刺すことにした。レイヴェルの穂先がガイの頭部を貫く。


 「あ、が……っ」


 頭部を貫かれたガイはそのまま倒れて2度と動くことはなかった。この男は最期の最期まで自分勝手な奴だったな。


 棟梁であるガイの死を見届けると、俺は他のメンバー達の様子を見やる。どうやら既に決着しているようで、盗賊達は全て死体へと変わり果てていた。


 「よし、盗賊は全て退治出来たようだな」


 俺はレイヴェルに付いた血を払うと、全員の無事を確認する。


 ジョーゴーは無傷、クードは怪我をしているようだが擦り傷程度、エリオとニーナは初めて人を殺したのが相当堪えているのか明らかに顔色が悪いな。


 「そいつはもしかして、ガイの野郎か?」


 するとクードがこちらに近寄り、ガイの死体を見つめる。


 「ああ、冒険者でなくなってからは盗賊として生きるようになったようだな」


 「相変わらずのクズ野郎だな……」


 「こいつの死体は俺が持ち帰ろう。他の盗賊達も懸賞金がかけられている可能性があるから念の為に回収しておく」


 「分かった。みんなに手伝って貰おうぜ」


 そう言ってクーは他のメンバーに死体を集めるように指示した。エリオとニーナは流石にまだ立ち直っていないようなので、盗品の確認をさせることにした。


 どうやらガイはまだ盗賊になってから日が浅いようで、盗んだ品物もそれほど多くはなかった。


 ガイを含む盗賊達の死体と盗まれた品を空間収納で回収する。これにて盗賊退治は終了だな。


 「今日はもう遅いからここで野営をすることにする」


 俺達は野営の準備をして一夜を過ごした。


 翌朝にバナの街で馬と馬車を回収してオルフィンへと帰還した。


 結果は勿論、全員合格した。これで俺はC晴れて等級冒険者となった。


 ちなみにガイは賞金を懸けられておらず、強奪した盗品もそれほど価値がないものばかりだったので100000リルにしかならなかった。5人で分けて20000リルか。全く、死んでもなお役に立たない奴だったな。


 「おかえりなさいませ、ルイ様」


 「お疲れー!」


 「無事に昇格試験に合格出来たようね」


 ちょうどユフィア達もD等級昇格試験を終えたようだな。あの表情からすると全員合格したようだな。


 「よし、合格祝いに豪華なパーティと行きたいところだけど、その前にクランを設立しようか!」


 折角冒険者ギルドにいるんだ。こういうのは早いめに済ませるのが1番だ。


 さっそく俺達は受付カウンターに行き、受付嬢のアリスさんにクラン設立の申請をする。


 「条件は満たしているので大丈夫ですね。それでクラン名はどうしますか?」


 クラン名。これは既に決めている。ちなみに発案者はユフィアだ。


 「クラン名は【救世の集い】です」


 こうして俺達のクランは設立されたのだった。

これで第2章は終わりです。

第3章もぜひ楽しんでください。

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