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救世のルファディア  作者: yato
第2章 世界樹編
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それぞれの昇格試験②

 D等級昇格試験当日。


 約束の時間に合わせてユフィア、セレーナ、アイビーの3人は冒険者ギルドへと顔を出す。

そこには受付嬢のアリスが出迎えてくれ、用意された会議室へと案内される。


 ちなみに従魔を昇格試験に連れて行くのは禁止されているのでクルは受付に預かって貰うことになった。


 会議室にはユフィア達以外にも2人の冒険者が待機していた。


 1人は長剣と軽装な鎧を装備した女剣士。


 もう1人は大きめな棍棒を装備した女戦士だった。


 そしてどちらにも胸元に戦士の格好をした乙女が象られたバッジを身につけている。


 「揃ったね」


 ユフィア達が会議室に入るのと同時に1人の女ギルド職員が入室してくる。


 女性にしてはかなりの長身で、並の男なら力負けしてしまいそうな卓越した肉体、まるでひと睨みで相手を萎縮させてしまいそうな鋭い眼光、何より他者を圧倒してしまいそうな威圧が彼女に凄みを与えている。


 「今回の試験官を務めるエレオーナ=バンスレイだ。よろしく」


 「エレオーナ=バンスレイ……」


 名前ならユフィアや2人の冒険者達にもも聞いたことがあった。【疾風】の異名を持つA等級冒険者のギルド職員だ。


 「まずは自己紹介から始めなさい。貴女からよ」


 先に指名されたのはユフィアだった。彼女は指示通りに自己紹介を始める。


 「ユフィアです。主に光属性魔法が得意です」


 「私はセレーナ。弓が得意だよ」


 「アイビーよ。森属性魔法を使うわ」


 ユフィア達が自己紹介をし終えると、今度は女冒険者2人が自己紹介を始める。


 「私はメリカ。【戦乙女】に所属している女剣士だ」


 「アンジュよ。同じく【戦乙女】に所属している戦士よ」


 「ほう、お前達が【黒薔薇】のアナスタシアがクランリーダーを務める【戦乙女】のメンバーか」


 彼女達が告げる【戦乙女】と言う名のクランにエレオーナは笑みを浮かべる。


 そしてユフィアもそのクラン名とクランリーダーのことについては知っている。


 【黒薔薇】のアナスタシア。それはこの世界でたった6人しかいないと言われている最高位の冒険者の1人だ。


 そして【戦乙女】にはある女尊男卑と言う信念を掲げており、男冒険者を毛嫌いしているクランとして有名だった。


 なのでそんな彼女達が受ける今回のD等級昇格試験に男冒険者がいなくて少しホッとするユフィアだった。


 新しいクランを設立するには3人共この昇格試験に合格する必要がある。なので不合格になる訳には行かなかった。


 「では自己紹介が終わったところで早速昇格試験の内容を発表する」


 そう言ってエレオーナが取り出したのは全体が金色の鳥の像だった。


 「全て純金で出来た像だ。価値は5000000リルはくだらない代物だ。これを隣町に届けて貰いたい」


 「なるほど、今回は配達系依頼ですね」


 ルイが受けたD等級昇格試験とは若干内容が違うようだが、別の街へ遠征に行くと言うのは同じらしい。念の為に遠征用の準備をしていたので心配はいらないようだ。


 今回のD等級昇格試験の内容は黄金の鳥像をハザーヤの街にいる商人に届けることだった。オルフィンからハザーヤの街までおよそ2日半の距離。


 もし破損及び紛失させてしまったらD等級昇格試験はその場で全員失格。更に弁償料金まで発生するというものだった。


 ただし、今回はあくまで配達依頼なので、たとえ事故や魔物等に襲われて負傷したとしても依頼品さえ無事に届けられたら昇格試験は問答無用で全員合格出来ることになっていた。


 「私はあくまで試験官として監視するだけだから。昇格試験中は何があっても助けないからそのつもりで」


 そう言ってエレオーナは会議室を出で行く。


 まずは配達品をメリアが持っていた運搬袋というマジックアイテムに収納することになった。この袋は収納する量に限りがあるが決して破損することはないとメリアから説明される。


 そして次は役割分担を決める。馬の扱いが出来るのはユフィアとメリカだけなので交代で御者をすることになり、セレーナとアイビー、アンジュは周囲の気配を探るのに適しているので見張り役をすることになった。


 そしてエレオーナに馬と馬車がある場所へと案内される。


 「では早速これを使おう」


 するとセレーナが容器を取り出して、中の液体を数滴馬車に垂らす。


 これは魔物だけが嗅ぎ取れる特殊な薬品で、魔物除け効果があった。普段はグラニそのものが魔物除けになっているので使用する必要がない(グラニやクルは魔物なので嫌がる)のだが、今回は役に立ちそうで、セレーナも鼻が高い気分だった。


 「これで魔物は近寄らない筈だよ。あとは盗賊が現れないことでも祈るしかないね」


 「セレーナ、それはフラグが立つから言わないで」


 こうして女だけのD等級昇格試験は始まった。


 最初の日はまさに順調と言っていい程だった。天候はまさに雲 1つない青空、セレーナの魔物除けの薬品のお陰で魔物と遭遇することもなく、その日は終わる。


 問題が起きたのは次の夜だった。


 焚き火を囲いながらユフィア達は夕食をとっていた。僅かな時間ではあるがメリカとアンジュともそれなりに仲良くなり、会話が弾むようになっていた。


 食事はそれぞれが用意しておいた干し肉や乾パン等と言った携帯食料を口にしている。


 いつもならルイの空間収納から作り立ての料理が口に出来るのだが、今はそれが出来ない。彼の存在がどれだけ凄いのか改めてユフィア達は実感することになる。


 「せめてデザートくらいはまともなものを食べましょうよ」


 流石に干し肉や乾パンでは飽きたのか、アイビーは小さな植物の種を取り出すと、そのまま地面へとポトリも落とす。


 「植物促進」


 そして加護を発動させると、種は瞬く間に成長を遂げ、芽が出て、花が咲いて、実へと成っていく。


 それは間違いなくメロンだった。ルイに食べさせて貰った日から、アイビーはこのメロンの味を気に入っており、よくこうして育てて食べているのだ。


 一瞬でメロンが育つという有り得ない状況を目の当たりにしたメリカとアンジュは思わず目を丸くしてしまう。


 そんな彼女達を他所にユフィア達は普段通りに切り分けられたメロンを食べている。ついでにメリカとアンジュもお裾分けとしてメロンを貰い、そのあまりの美味さに感動することになる。


 「いやはや、恐れ入ったよ。他の冒険者が貴女達は優秀だと聞いていたけど予想以上のようね。貴女達、私達が入っているクランの【戦乙女】に入る気はない? 貴女達ならリーダーも気にいると思うわ」


 メリカの突然の勧誘にユフィア達は一瞬驚く様子を見せるが、彼女達の返答は決まりきっていた。


 「有難い申し出ですが、お断りさせて頂きます」


 「ごめんね」


 「嫌よ」


 まさか断られると思わなかったのか、ユフィア達の即答にメリカとアンジュは呆けてしまう。


 「どうしてだい? 女というだけで男共に舐められたことがないとは言わせないよ? 貴女達の美貌ならどんな男からも不快な視線を向けられることも多いだろう? 私達のリーダーは【黒薔薇】のアナスタシアと呼ばれるS等級冒険者なんだよ。【戦乙女】に入ればもう不快な思いをしなくて済むんだよ」


 「お誘いは大変嬉しいのですが、我々にはお慕いしているお方がいますので貴女方のクランには入ることが出来ません」


 「だからごめん」


 「ちょっと! アタシは別にそんな風に思ってなんかいないわよ!」


 どうしてもユフィア達はの才能を諦めきれないメリカはこれでもかと言う程自分が入っているクランの素晴らしさを語るが、ユフィア達には然程興味がないのか、全然聞き入れて貰えない。


 するとアンジュは何を思ったのか、とんでもない発言をする。


 「貴女達、その男に騙されているんじゃない?」


 『--っ!』


 アンジュの言葉に反応するユフィア達を見て、彼女はさらに続ける。


 「貴女達が慕っているその男だって、きっと貴女達の美貌だけが目当てなのよ。あーあ、やっぱり男はどいつもこいつも下衆ばかりね! そんな男なんかといるよりも【戦乙女】に入った方がずっと--っ!?」


 アンジュの言葉は最後まで言うことは出来なかった。その前にまるで蛇に睨まれた蛙のように恐怖による威圧で動かなくなってしまったのだ。それはメリカも同じだった。


 当然、その威圧を放つのは目の前の3人。セレーナとアイビーは完全に怒りを露わにし、ユフィアは微笑んだままだが尋常ではない威圧を放っている。先程まで優しいそうだった微笑みが今は怖く思えてしまう程に。


 アンジュは今更ながら後悔した。彼女達の逆鱗に触れてしまったことを。


 すると、恐怖で震えているメリカとアンジュに対して、ユフィアは口を開く。


 「我々のことはいくら悪く言っても構いません。ですが我々の主を悪く言うことは決して許しません。分かりましたか?」


 ユフィアの言葉にメリカとアンジュは何度もも頭を縦に振るう。


 「……お食事はここまでにしましょう。あとは決められた順番で見張りをして明日の早朝から出発しましょう。最初の見張りはアンジュさんでしたよね? お願いしますね」


 そう言ってユフィア達はそのまま自分達のテントへと行ってしまう。


 『はあぁ〜〜〜〜〜……』


 威圧から解き放たれたメリカとアンジュはまるで魂が抜けるような感覚を感じながら大きくため息を吐いた。


 「……何よ今の威圧……有り得ないわ……」


 「……そうね、身体が竦んで動かなかっわ。まるで本気になったリーダーみたいだったわ……」


 「あんな人達があんなにも慕っている男って、一体どんな奴なのよ……」


 「さあね、少なくとも敵対だけはしない方がいいかも……」


 メリカとアンジュは未だに感じる恐怖を抱えたまま一夜を過ごすことになるのだった。



 ◇◇



 一夜を明かしたユフィア達は早朝から出発することにした。このペースならお昼までには着く計算である。


 このまま何事も起きないでハザーヤの街まで着くことを祈っていたが、どうやらそうもいかなかった。


 なんとまるでここを通るのを知っていたかのように待ち伏せしていた20人程の盗賊達が襲ってきたのだ。


 しかもその盗賊の棟梁のユフィア達が知っている人物だった。


 「まさかここでまた出会えるなんて、嬉しいこともあるようだね!!」


 何と棟梁はセレーナとアイビーが冒険者登録した時に絡んできたチャラ男だったのだ。よく見ると配下の盗賊の中にはチャラ男と共に絡んできた冒険者もいる。


 あの一件でチャラ男は冒険者としての権利を剥奪されてしまい、途方に暮れた末に盗賊として生計を立てるようになったそうだ。


 そんな時、クランを設立していた時の元部下から今回の試験内容を盗み聞きしたことを教えられ、かつての恨みを晴らすべくこのような強攻に出たらしい。


 「あの盗賊達は我々3人で対処します。メリカさんとアンジュさんは配達品を持ってこの場から離れて下さい」


 「あ、貴女は何を言ってるの!? こんな状況なんだから昇格試験どころではないわ! 近くにはA等級冒険の試験官いる筈だから助けてくれる筈よ!」


 「それはないですね。あの方は『昇格試験中は何があっても助けない』と仰っていました。なので頼るのは無理でしょう」


 「そんな……」


 ユフィアの言葉にメリカとアンジュは言葉を詰まらせてしまう。


 「幸い、彼らの狙いは個人的な私怨がある我々3人だけのようです。貴女方2人は急いで配達品を持ってハザーヤの街まで届けてください。馬車を走らせれば1時間もかからない筈です」


 「貴女達を置いて我々だけ逃げろと言うの!? そんなこと出来る訳ないじゃない!?」


 「そうよ! 私達も戦うわ!」


 他人を見捨てて自分だけが助かるという状況がどうしても受け入れられないメリカとアンジュは武器を手に戦おうとする。


 するとユフィアはそんな2人に喝を入れる。


 「我々は今、冒険者として依頼を受けている立場です。そして今回の依頼は依頼品を無事に目的地まで届けることです。それを予想外のことが起きたらと言ってそれを投げ出すのは間違っています。依頼を達成させるにはそれが最善の策です!」


 「--っ!」


 ユフィアの言葉にメリカのアンジュの顔付きが覚悟を決めたものへと変わる。


 「我々3人が一斉に攻撃を仕掛けたらお2人は馬車を走られせてください!」


 「分かったわ」


 「では行きます! ライトアロー!」


 「十連矢射!」


 「リーフショット!」


 「はあっ!」


 ユフィア達の総攻撃と同時に馬車を走られせるメリカとアンジュ。いきなり攻撃を仕掛けられて盗賊達も慌てふためており、何事もなく突破することが出来た。


 ユフィアの予想通り、盗賊達は彼女達にしか興味ないようで、メリカとアンジュを追う者はいなかった。


 2人は唯々ハザーヤの街に向けて馬車を走らせる。そして街へと到着した彼女達は無事に黄金の鳥像を商人の元へと届けた。


 これにより彼女達はD等級昇格試験を合格とみなされた。


 そして昇格試験が終了するや否や、メリカとアンジュは直ぐにエレオーナにユフィア達の救援を要請する。


 そこは流石試験官と言ったところか、彼女達が依頼品を商人へ無事に届けた時点で既に手配しており、今頃は盗賊達の制圧にかかっている頃だと告げる。


 それでも気が気でないメリカとアンジュはそわそわしてじっとしていられなかった。


 しかし、そんな彼女達の心配をよそにユフィア達は無傷の状態でハザーヤの街へと訪れた。その後ろにボロボロになって拘束された盗賊達を引き連れていた。


 エレオーナによると救援に向かったギルド職員が駆けつけた時には既に盗賊達はユフィア達によって一網打尽にされていたそうだ。


 「……どうやら私達の心配は不要だったみたいだね」


 「……そうね」


 自分達との実力の差を改めて痛感するメリカとアンジュ。


 こうしてユフィア達は無事に昇格試験を合格し、D等級冒険者へとなったのだった。

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