↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
82/85

82 特攻前夜

「ふ、ぉおおおおおああッ!」


 咆哮し、黒剣を幾度も打ち付ける。

 目の前の、僅かに透き通る全く同じ形状の剣に当たる度、辺りに仄白いスパークが弾ける。


「まだまだ眠たいぞ。そんな剣筋じゃな」


 黒髪で、瑠璃の目を持つ男が、そう言いながら易々と攻撃を返してくる。


「ぐっ……!」


 しかし、こちらもこの数日、闇雲に身体を動かしてきただけでは無い。

 俺は自らの手を閃かせ、ヴルヘリットさん周辺に三連撃を浴びせた。それにより、左右と上に次元の狭間が生まれる。


「くっ……」


 チャンスだ。

 そう悟ると同時に踏み込むと、相手の剣が瞬いた。


「……“展開”」


 彼がそう言うと同時に、正三角形の次元の狭間があちこちに現れ、元の裂け目を描き消してしまう。

 それだけに留まらず、男は裂け目のひとつに身を乗り出し、瞬間、全く別の狭間から弾丸の如く飛び出してきた。


「まじかっ」


 辛くも避けるが、彼はまた直ぐに別の裂け目に入り、跳弾するように辺りの空気を切り裂いていく。

 どこから来る。という迷い、焦りを何とか沈め、俺はただ相手が攻撃してくるその瞬間を待った。

 まだ。まだだ。まだ来ない……。

 心の水面を完全に凪らせ、空気の振動、僅かな掠音、培ってきた戦闘勘。全てをフルに使い、その瞬間を待つ。

 そして、後方の水面が僅かに揺れーー。


「……そこだッ」


 瞬間、俺は振り向き、剣を打ち込んだ。

 剣と剣が有り得ない速度で衝突し、かなりの大音響が周囲を震えさせる。


「ほう」


 男は一瞬、僅かに頬を緩めた。

 それに対し、俺は思わず心中でよし、と達成感に浸る。

 相手はそれを見抜いたのだろう。


「……ふっ」


 一息の間に俺の目の前から消え、それを認知した頃には、背後より剣の鍔で頭を穿たれた。


「いでっ!」


 無様に転がる俺に対し、夢世界の住人、ヴルヘリットさんは苦笑を浮かべる。


「油断大敵だ」


 彼はそれだけ口にして、剣先を向けてきた。


「う、すみません」

「謝るのはいいが、戦場では容赦なく首が吹き飛ぶぞ」

「……肝に銘じときます」


 上半身だけ起こし、両手を上げたところで、ヴルヘリットさんが剣を引いてれる。


「特に、次の戦場は難関なんだろう」

「らしいですね。十年近く突破出来てないとか……」


 記憶を辿って情報を伝えるが、俺が見聞きしたものは彼も知っているのか、極薄い反応だけ示した。


「……おっと、目覚めが近いな。今日はこれくらいか」

「ですね。今回もありがとうございました」


 今日は“展開”を完成させる修行を早々に諦め、単純な戦闘技術を磨かせて貰ったのだ。そのお礼を素直に言い、俺は目覚めを待つ。

 徐々に薄れてく意識そのままに、目の前の景色が緩やかにフェードアウトして行った。








「……ふご」


 鼻を鳴らしながらの起床に、目の前の顔が苦笑を浮かべる。


「……みんな仮眠に留めてたのに……あなただけよ。熟睡してたの……」


 俺は身体に巻いている薄い毛布をかき寄せつつ、眼前の少女の目を見て微笑んだ。


「あ、マクロちゃん。おはよ」

「…………おはよ」


 この前あんな事件があったにも関わらず、普通に接してくれる事に内面感謝する。

 それと同時に、辺りの人気が無いことに気づいた。辺りを見回しても、黒髪の少女以外は姿が見えない。


「あれ、他のみんなは?」

「……もうとっくに準備終わってる。あなただけなかなか来ないから……わたしが態々駆り出されたわけ」


 まじか! と心の中で叫ぶ。


「やべぇ。じゃあ急がなきゃ。来てくれてありがとう。……くぅ、それにしても、今日だけはイクスの水風船食らっても良かったな」


 出遅れるくらいなら、という意味合いだったが、何故かマクロちゃんは軽蔑の目を向けた。


「……もしかして、あなたマゾ……」

「違うしここにもそんな言葉がある事に驚きだよ!」


 俺は思い切りツッコんだ後、迅速に集合場所に向かうべく、もうずっと使っているブーツの靴紐を固く結んだ。

この前電車乗ったら、隣の人が友人に対し「俺の友達の職場、クラスターになっちゃってさ〜」とか話してるのを横耳に聞いてめちゃくちゃビビりました。作者です。

皆さんも体調には充分気をつけてください。

それでは、次回もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。