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83/85

83 一方その頃っていうモノローグ、最近聞かないね。

「遅いぞ」


 と、アルティ隊長に言われるのも無理はない。

 何せ俺は、集合時間より十分近くも遅れてしまったのだ。

 しかしそれはあくまで隊で集まる時間なので、全体での最終点呼はこの後行われる。


「……マクロ。あんた、この男に何もされなかったろうね?」


 アズサさんが、俺と共に戻ってきたマクロちゃんにそう問う。


「別に……今日は何も」

「今日“は”!?」

「……この前、森の茂みで」

「だぁあああああああああぁあっ!」


 大声をあげて誤魔化すも、逆に周囲の目線を集めてしまう事態に。

 やべ。と、思うのも束の間、時間丁度に今作戦の最終確認が行われ始めたので助かった。

 アズサさんからの視線がチクチク刺さるが。


 その後全体会議も終わり、俺達は所定の位置へ来ていた。

 今から、凄惨な戦いが始まるのだ。

 十年落とせていない戦場。実感がイマイチ湧かないからか、俺の心は不思議と平常を保っている。

 しかし、このまま闇雲に突っ込んでいいのか、という疑念はまとわりついていた。

 何かしら楽に突破できる手段があれば、と思った所で、一つアイデアが浮かぶ。


 今までの戦いと確かに違うところが、一つあるじゃないか。

 俺が自身の考えを隊長に伝えると、少し悩んだ後に了承を得る。

 アルティさんは他の部隊にも説明し、特に揉めることなく納得してもらった。恐らくそれは、俺の作戦がいいからという訳でなく、隊長の説得の仕方が上手かったからだろう。

 その後間もなく、開戦の合図である炎魔法の花火が、破裂音と共に天を照らした。


「では、第一遊撃隊、出撃するぞ!」

「了解!」


 隊長の合図と共に、俺達はどの部隊よりも前へ先行する。

 直後、目の前にある南大門がゆっくりと開け始めた。

 奥には敵であるモンスター達がごまんといる。

 あまりの数に足がもつれそうになるが、只管に耐えて誰よりも前へと駆けた。


「やってやれ、タクマ!」

「その剣の力は信じてるっスよ!」

「……がんば」


 何人かの声援に背中を押され、俺は門が開ききる瞬間に跳躍した。

 僅かながら俯瞰で見つつ、渾身の一撃を放たんと剣を呼び出す。


「《剣招来(ブレイドコール)》っ……ふ、ぉおおおぉおおおッ!」


 腹の底からの叫びと共に、俺は限界まで大きく目の前の空間を斬り裂いた。


「ミギャアアアアアア!」

「ぷるるるるるふすっ!」

「ぱぉー、ぱぉー!」


 結果、大門より何種類もの悲鳴が重なって鳴り響く。

 恐らく、これでかなりの数の敵を減らせるだろう。早速出鼻を挫いた事で、相手は混乱しこちらは波に乗れる。

 これが俺の考えた作戦だ。


「よし、タクマの技が消滅した瞬間に攻めるぞ。無理に数を減らそうとしなくていい。ただ目の前の敵に集中して行くぞ!」

「了解!」


 高まる指揮に困惑中の敵。

 この戦い、いける。

 圧倒的有利な状況であるが故に、俺は油断していたのかもしれない。

 そう気づくのは、数時間後の自分だった。











 一方その頃。

 ディッセル王国は、市民の協力と皇帝の強引な指揮により、ほぼ魔王軍侵攻前の状態まで復興していた。

 特に王城は優先的に修理していたため、寧ろ以前よりも頑強になっている。

 その王城の一角。最上階のとある部屋に、五度ノック音が響いた。

 部屋の中央にある豪奢な長机の前に座る美丈夫が、扉に向かって問う。


「なんだ」


 深みがありつつも透明感のある声に、嗄れた声が答える。


「……ヨゾラ部隊、ティサーユです」

「入れ」


 その命令に、男は「はっ」と一言だけ返して迅速に入室した。


「魔王が勇者の一味である元騎士、ユズリ様をお連れになられたと情報が入りました」

「なに?」


 直ぐに反応を示す美丈夫だったが、ヨゾラ部隊の男は更に続ける。


「加えて、ユズリ様を追い勇者タクマ様が、予定より早い段階で魔王領域へと侵攻したそうです」


 美丈夫は背もたれに背を預けつつ、一度長い息を吐いた。


「そうか。しかしあのレベル0の者なら、領域内の魔物に囲まれれば終わりだろうな」

「それが……勇者様は、我が国の騎士団に入隊し、共に戦場を駆けているそうです」

「……ほう」


 美丈夫は体勢を戻すと、一瞬何かを逡巡したような表情をしてから問い質した。


「報告は以上か?」

「はい」

「そうか。もう良い。下がれ」

「はっ」


 嗄れた声の男は、その一言と共に音も立てず退室する。

 そして、豪奢な机に肘を立てつつ、男は眉間に皺を寄せたのだった。


「……ドューユーつもりだぁ……? ヴァーナ……!」


 押し潰したようなその声は、広い部屋に残響もせず消え去った。

夜空の剣が届いたのですが、興奮のあまり部屋で振り回していたら先端を思い切り壁にぶつけました。作者です。

タイトルの通り最近一方その頃ってフレーズ聞いてないなーと思いつつ今話を書きました。

まぁ、主人公視点から外れて物語を描いても、それが面白く感じるかどうかはかなり好みが分かれる所なのでそういう理由なのかもしれません。

どうでもいい事しか書いてないのに長文になってしまったので、今日はこれくらいにしておきます。

それでは皆さん、次回もよろしくお願いします。

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