15 風の都
馬車の荷台に揺られ、約二日。
俺達は遂に、風の都と言われる都市……“リーアス”に到着した。
「着いたーっ!」
思わず声を上げてしまうのも無理は無い。
何故なら……目の前の光景は、絶景そのものなのだから。
ばっくりと穴の空いた大地の中に聳え立つ巨木。その枝葉の先にはいくつもの建物が建設されており、その一つ一つが他に無い優美な装飾が施されている。
ただ、これだけでは“風の”都とは言わないような。確かに辺りに吹く風はかなり強いが……と考えた時点で、一旦思考を引手のおっちゃんへ切りかえた。
「あ、おっちゃんありがとう! ハーシンだけじゃなくて、ここまでタダで送ってくれて」
「いいってことよ。俺もあの村出身だからよ。仲間を助けてくれた礼だ」
既に宴も開いてもらった上に物品まで頂いているのに申し訳ないな、と思ったが、今更返上するのも無礼極まりないので素直に受け取る。
「そんじゃ、俺は近くの村で色々補給するからもう行くぞ。楽しんでな」
楽しむとはどういう事だろう。ここらは有名な観光スポットなのだろうか。どの道冒険者にかける言葉じゃないような……と思った所で、あの巨木へのルートが一切無いことに気がつく。
俺はどういうことか聞くべく、いつの間にか崖の近くに設置されたフェンスにまで寄っているユズリの元へと小走りで駆け寄る。
「ねぇ、ここから先ってどうやって……」
進めばいいの? と言おうとした声は、甲高い少年のような声に掻き消された。
「うぁああああああっ! どいてどいてぇええぇえええーッ!」
後方からの声に慌てて振り向くが、誰も居ない。
しかしどこからか聞こえる落下音……と気づいた瞬間、上を見上げると……。
その刹那、何者かが猛突撃してきた。
それだけで済めば痛ぁ……とボヤく程度だったが、不幸な事に衝突した威力は凄まじく……。
柵を破壊しつつ、俺は底も見えない深淵の崖へと身体が投げ出された。
あまりに突然の出来事に、空中で一瞬息がつまった。その後落ち着いて現状確認を済ますと。
「ひぎゃぁあああああああああっ!?」
落下と共に、情けない叫び声を上げてしまうのだった。
そりゃこんな高い所へ叩き出されたら例え勇者様(多分)である俺だって叫びくらいするしマジでどうしようこの状況。
もう落ち着いてんのかザワついてんのか分からない、つまり混乱した心情のまま体に受ける猛風に少しでも乗ろうと手足をめいいっぱいに広げる。
だがそれだけでは当然の如く落下速度は下がらない。もう、終わりだおしまいだ……と諦めかけたその時。
「うぉおおおお間に合えぇええええいッ!」
少年の声とは対照的に、野太い親方声が耳を突く。
どこからとか、誰だとか考えるより先に、ぼすん! という音ともにクッション上を跳ねるような衝撃が身体を襲ったのだった。
「いやぁ、ホントすまねぇ、あんちゃん!」
どうにかこうにか無事生還した俺は、目の前で土下座する、職人服の様なものを着た男と少年に対しどうすればいいかと頬を搔いていた。
「本当よ! 観光……じゃなくて旅の為にちょっと寄っただけなのに、こんな目に合うなんて……」
まぁ、“こんな目”に合ったのはユズリじゃなくて俺なのだが、仲間として慮ってくれているのだろう。
「いやはや本当すまねぇなぁ。お詫びの印に、俺のマシンに乗っけてやるからよ!」
「バカヤロウ! てめぇのガラクタマシンなんざ乗っけたら、まァた迷惑かけるに決まってらぁ! すんません。代わりと言っちゃなんですが、あんた方がこの街にいる間はあっしのマシンをお貸ししますんで」
そんな二人の会話に、俺は一言。
「マシンって何?」
俺以外の三人が、その場で固まった。
数秒後、俺を崖に突き落とした張本人の少年が声を上げる。
「な、あんちゃんマシンも知らねぇで来たのか? この風の都に!」
そんなん言われても、俺この世界に来たばっかですし。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
前日にストック書いとくの忘れてヒィヒィ言いながら今話を書き上げた作者です。
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