14 長袖を着るという事は、季節は秋くらい。
主役二人が抜け出すなんて、非常識だろう。
そんな言葉が囁かれるかもしれないが、今はユズリと話をすることが最優先だ。
「……あの、さ」
村の離れにある井戸。その付近にある長椅子に二人で腰掛け、俺が遂に話を切り出す。
「俺、小学生の時……って言っても分からないか……小さい時さ、遠足の時いくつかの班に別れるんだけど、その中でリーダーを決めることになったんだ」
顔は俯いてよく見えないが、ちゃんと聞いてくれていると信じて続ける。
「それで……あの頃の俺今より人見知りでさ、ホント酷かったんだけど……それでも、リーダーとかって憧れてて。皆に尊敬されたりしてるのが、凄いなって……俺もそうなりたいって思って、立候補して成れたんだけど……」
俺はそこで、一呼吸置く。
「ダメだった。全然!」
少し大声で、朗らかに言い放つと、彼女が僅かに顔を上げた気がした。
「やっぱりリーダーとか向いてなかったんだなぁ俺。言うこと聞かせられないし、班の子逸れさせちゃったり、班員の子が頑張って探したりしてくれたんだけど、俺はミスばっかでなんも出来なかった……」
そろそろ広げた風呂敷を畳切れなくなってきたので、強引に締め始める。
「ま、まぁ、それから俺は、分相応を心がけるようになったんだよ。えっと、それで何が言いたいかって言うと……皆似たような経験して次に進んでいくと思うからさ、ユズリも今回の事バネに次に活かせばいいと思うよ」
俺のヘタクソ過ぎる慰めに対し、ユズリは困った様な顔でこちらを見上げた。
「もう、何それ……でもありがと」
気を使ってくれたのだろう、彼女は微笑を浮かべ礼を言う。
その後、どこか吹っ切れたように立ち上がった。
「うん、決めた。もう感情だけで判断しないし、私も分相応を心がける。でも……」
月明かりに照らされた彼女は、一度口を噤んでからこちらに振り向く。
「私は手の届く範囲の人達は皆助けたい! だから……もっと強くなる。どんな難題も、解決出来るように」
力強い目線に射抜かれた俺は、頭で考えるより先に立ち上がった。
「手伝うよ、俺も。何だかんだ、人助けして喜んで貰えたら嬉しいし」
これは半分本心だが、もう半分はユズリと違い、村人を見殺しにしようとした自分への戒めでもある。
まぁ、今回は結果が良かっただけで、実際正面から仕掛けてたらより酷い目に合っていただろうが。
「それは嬉しいけど……タクマ、私を助けてくれた時、目立ちたく無いって言ってなかった?」
う、と呻きながら後退りつつ、頬をかいて適当な言い訳を頭の中でこねくり回す。
「えっとぉ……あれは、その、俺の国ではああいう場面の時、そういうのが仕来りなんだよ! うん」
まぁ、だいぶ誇張しているというか……九割八分位は虚偽だが、実際幾つかの作品では先程のような台詞を言う日本人も居た。
だからギリギリ嘘では……いや、そんな事ないな、完全な嘘だな。うん。
「へ、変な仕来りね……まぁいいか。そろそろ戻りましょ。まだ宴も終わってないだろうし」
俺は冷や汗をかきつつ頷いて、歩き出す彼女の後を着いて行った。
そして、宴が収まるその時まで、俺達は騒ぐのだった。
「見てこれ、かっちょいいー! やっぱ冒険者は一張羅着てないとなぁ!」
俺はこの前の件の報酬として、紺青色のコートを貰った。
初めはこの依頼の請負人であるユズリに譲渡しようとしたが、彼女は既に持ち前のローブを着ているので、これ以上の厚着はいいと断られてしまったのだ。
「うん。結構似合ってるんじゃない? 道具も買い足したし、そろそろ出発しましょうか」
この村の人々も、もう暫くは身内だけで安静な生活を送りたいだろうというアイデアで、俺達は早くもここから出ようとしていた。
「そういえば……この村を出たら、次はどこに行くの?」
ひょんな問いに、彼女は楽しそうな笑みを浮かべ、人差し指を立てる。
そして……。
「ふっふっふ。次に向かう場所は……“風の都”よ!」
それを聞いた俺は……
何だそれ。という感想と、新たな冒険の匂いの二つの感情が浮き上がった。
こんばんは。偶にこのあとがきの本来の目的を忘れかける作者です。
次回からいよいよ新天地!新たな物語がスタートします。
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