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マスコットを作ろう(3)


「ついにできた、できましたよ!!」


 エリスが倒れてから数日後、休みを経て再び作業にとりくんだエリスは、ついに目当て物を完成させる。


「本当ですか!?」


 エリスの叫びにつられ、掃除道具を放棄してエルメナがかけよってきた。


「ふふ、まさか私がここまで苦しめられるとは。人工精霊、奥が深いですね……。ところでエルメナさん、依り代の方はできていますか?」

「もちろんです、ちょっと持ってきますね!」


 そういうとエルメナは店の奥へかけていき、胸にエリスを形どったぬいぐるみを抱きかかえて戻ってくる。


「おー、見事な物ですね。エルメナさんは裁縫が得意なんですか?」

「得意ってほどでもないんですけど、たまに趣味でやったりはします」


 エリスに褒められ、エルメナは恥ずかしそうにつぶやいた。


「裁縫が得意なら、今度そういった魔道具の製作もしてみますか。まぁそれはさておき、私の徹夜の結晶をお披露目するとしましょう!」


 受け取ったぷちエリス人形を依代に、人工精霊を埋め込んでいく。


「うん、いい出来です。一回しか作り方を見せなかったのによくできていますね」


 エリスは人工精霊の製作につきっきりだったため、依代の製作はすべてエルメナが担当した。

一応ユリアの依頼を受けた時に作り方はエリスから習ってはいたのだが、今回は全て一からエルメナが作り上げたため、その出来にエリスは感嘆の声をあげる。


「さて、果たしてうまくいきますかね」


 問題なく人工精霊を埋め込むことに成功はしたものの、まだ正常に動くかはわからない。

エリス自身初めて挑む難易度だっため、珍しく不安げな表情を浮かべて、人形をみまもっていた。


「あ、いまぴくりと動きましたよ!」


 エルメナの声につられるように、ぷちエリス人形はゆっくりと起き上がる。


「ふぅ、どうやら成功みたいですね。いやあ……疲れました……」


 またふらふらと倒れそうなエリスを心配しながらも、エルメナの視線はエリス人形に釘付けだ。

人形はひょこひょことおぼつかない足取りで立ち上がると、エルメナの方へと近づいていく。

エルメナがそっと手を差し伸べると、ぎゅっとその腕にしがみついた。


「か、可愛い……!」


 エルメナは危ない目をしながら、自分の腕を這い上ってくるエリス人形を見つめる。


「エルメナさん、一応その子はお店のマスコットになる予定だからな持ち帰ったりはしないようにな。後エリス、紅茶いれてやったから一度こっちで休め」


 そんな彼女の姿を見て、ゾルが若干引きながらも忠告し、ついでにとふらつくエリスに声をかけた。


「ありがとうございます。はぁ、生き返りますねえ……」


 席に着いたエリスは紅茶を一飲みし、一仕事終えたとばかりにほっと一息つく。


「あのエリス人形は結局何ができるんだ?」

「んー、教えこめば簡単なお店の手伝いくらいはさせられるかもしれません。ただ、強制力をだいぶ削ぎおとしたので妖精本来の自由奔放さが色濃く出るでしょうし、思い通りに動かすことはできないでしょうね」


 エリスの説明にゾルはふむと考え込む。


「となると、道具というよりはそれなりの知能をもった生き物として扱うべきなのか」


 ゾルの言葉にエリスはそうですねと頷いた。


「今回製作した人工精霊は、魔道具としてみるならば失敗作もいいところです。思い通りに動かせない道具など欠陥品でしかないですからね。だからまぁ、あれを言葉で表すとすれば魔道具ではなく擬似生命といったところでしょうか」


 じゃれつくようにエルメナにしがみつき、自分の定位置だといわんばかりに彼女の肩にすわる人形を見て、エリスはそう口にする。


「エ、エリスさん! この子に名前をつけてあげたいんですけど!」

「そうですね、そのままぷちエリス人形と名前をつけるわけにはいかないですし。何かいい案がありますか?」


 エルメナにそう聞いてみるが、彼女もうーんと唸っていてなかなかいい案がうかんでこないようだった。

そんな様子をみて、ゾルがじゃあと手をあげる。


「マスコットキャラということだし、この喫茶の名前からとってノワールと呼ぶのはどうだ?」

「私は賛成です。この店の名前には私も愛着がありますし。エルメナさんはどうですか?」


 どうやらエルメナも気に入ったようで、いいと思いますと頷いた。


「今日からあなたはノワールです。これからよろしくね、ノワール」


 エルメナが自分の肩に座ったノワールへ声をかけると、わかったとでも言うように自分の片腕を上げた。


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