魔王と聖女の共同戦線(1)
ギルド本部の一室。
そこで、ユリア、エリス、ヴァンの三人は今回の件について、お互いの知っていることを話し合っていた。
「っつーことは、フォルナ教内部に呪詛魔法使ってくるような奴がいるってことか?」
エリスとユリアの話を聞き、ヴァンが面倒臭そうに唸る。
「私もこんなすぐに実力行使に出てくるとは思いませんでしたが、今現在わかっていることを考えると、おそらく間違いないでしょう」
急遽ヴァンに呼びつけられたユリアは何事かと驚いたが、エリスに関わることだと言われ、何かが起こったことを把握し急いで駆けつけた。
そしてことのあらましをエリスから聞いて、自分が知っていることと結びつけながら推理していく。
「私、あの魔法生物通して呪詛魔法かけ返してみたんですけれど、フォルナ教で結構強力な呪いにかかった人とかいませんか?」
あっけからんとなんだか恐ろしい事を言っているエリスに、ユリアは呆れた眼差しをおくりつつも、調べてきた内容を彼女に教える。
「いますよ。それもとびっきりの大物が。フォルナ教のトップ、教皇本人です。外部には体調不良で通してますが、いま教会上層部は教皇が呪われたってあたふたしてますよ」
あのおっさん嫌いだったんでいい気味ですね、とユリアもユリアで聖女らしくないことをつぶやいた。
「お前ら実はめちゃくちゃ似た者同士なんじゃないか……? まぁいい。で、フォルナ教の狙いは結局何なんだ」
「十中八九、エリスの持つ魔剣でしょうね」
あるいは、エリス自身か。
だがその事はまだユリアも確信を持てているわけではないため、ひとり胸中に収める。
「イグルツさんも私の魔剣が狙いだといってましたね」
「その剣ってのはよっぽど価値のあるものなのか?」
ヴァンが訝しげな顔でエリスを見るが、エリスもどうなんでしょうと首をかしげた。
「そもそも、エリスはどこでその魔剣を手に入れたんですか」
ユリアはおおよそ魔剣の正体に気がついていたが、あえてそれを口にはせずエリスに尋ねる。
「……怒らないで聞いてくださいね? 実は私もわからないんですよ。というのも、私幼い頃の記憶がなくて、一番古い記憶を辿っても、確かその時はすでにこの剣を持ってたんですよね」
「そうなるとなんの手がかりもなしか……。ゾルあたりとか何か知ってないのかね」
盛大なため息をつくヴァンとは対照的に、ほぼ予想通りだったエリスの答えにユリアは自分の立てた仮説への自信を固める。
「エリスの魔剣は、恐らくクルツの持つ聖剣の姉妹剣。女神フォルナの聖剣の対となる、女神アイリスの聖剣です」
「……え、でもこれ私が言うのもなんですけど、聖剣というにはあまりにも禍々しい見た目してませんか」
そう言ってエリスは魔剣を取り出し、じっくりと眺める。
しかしどこからどう見ても神聖さのかけらも見えない。
「なんらかの原因で魔界の魔力で汚染されたんでしょうね。それは元の聖剣からは明らかに変質しています。とはいえ聖剣は聖剣、教会にとってその価値は計り知れない」
「なるほどなぁ。それで連中、その剣を血眼になって探してるって事か」
それを聞いたエリスが、ぽんと手を叩いてひらめいたと言わんばかりに目を輝かせた。
「それならこの剣をフォルナ教に渡しちゃえば一件落着ですね!」
そんなことをのたまうエリスを、ユリアはかわいそうな物を見る目で眺める。
「アホですかあなたは。相手は呪詛まで使ってくる相手ですよ? そんな奴らに強大な力を持った、変質した聖剣なんて渡したら何が起こるかわかったものじゃありません。そんなんだからゾルにポンコツと言われるんですよ」
ユリアの言葉にエリスはしょぼんと肩を落とした。
「み、みんなして私をポンコツポンコツって……」
落ち込んでいるエリスを放置し、ユリアはヴァンへと向き直る。
「恐らく、教皇含め教会上層部にはエリスが元魔王だという事、そして彼女がまだ生きているという事は知れ渡ったと考えて間違いないでしょう。公表は出来ないでしょうが、秘密裏に彼女の暗殺を企て、魔剣を強奪しようとするかもしれません。そのため、まずはエリスの警護を固めるのがいいと思います」
「あぁわかった。それにしても意外だな、フォルナ教の連中は魔族を毛嫌いしてるってのに、ユリアがエリスの事をそこまで心配してるなんて」
不思議そうにそう口にする、ユリアはふいとそっぽを向いて苦々しく口を開く。
「別に私は魔族を嫌ってはいないですよ。まったく別の理由で私はエリスが嫌いですが、それでも」
嫌いなんですか!? と涙目になるエリスを無視し、ユリアは言葉を続ける。
「エリスは友人です。友人が危険に晒されてるなら、心配するのは当然でしょう」
それを聞いて、エリスはにこりと口元を綻ばせた。
「私は引き続き、教会に潜って教皇周辺を探ろうと思います。そこで、エリスに頼みがあります」
なんでしょう? と首をかしげるエリスにユリアは悪い笑みを浮かべて、とある提案を持ちかけた。
「あなたは魔道具店を経営してますよね? そこで一つ、魔道具を作ってもらいたいんですが……」




