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恥ずかしがりやな頼れる仲間(2)

「似合ってますよエルメナさん」


 冒険をしにいく約束をした日の翌朝、エルメナはエリスからもらったよりすぐりの魔道具と、身軽に動ける冒険者用の服装を身につけていた。


「あの、本当にいいんですか? こんなに頂いてしまって……」

「大丈夫です。ギルドから貰った補助金でまかなえる範囲で揃えましたから。今日は頑張ってきてくださいね」

「ありがとうございます!……ボク、頑張りますね」


 そう言ってエルメナはぱしりと自分の頬を叩いて気合いを入れる。

と、そうこうしているうちにリーンとミラが店を訪ねてきた。


「おはようございますエリスさん! エルメナちゃん!」

「おはようございます。エルメナさん今日はよろしくお願いしますね」


 二人に迎えられ、エルメナは力強く店から一歩を踏み出す。


「二人とも今日はよろしくお願いします。エリスさん、ゾルさん、行ってきます!」

「あぁ、頑張ってこい」

「冒険者に怪我しないようになんていうのは無粋ですが、気をつけてくださいね」


 店内で見守るエリス達に一礼をして、エルメナはリーン達と共に店を発つ。

そんな弟子の勇姿を見えなくなるまで見送ったエリスは、店に戻るとそそくさと水晶を引っ張り出した。


「エリスも随分心配性だな。エルメナさんはお前よりよほどしっかりしてるから大丈夫だと思うぞ」

「まぁ私もそんなに心配してるわけではないですが、可愛い弟子になにかあったら大変ですから」


 そんなエリスの様子をみながら、親バカの素質があるとは意外だったとゾルがつぶやく。


「全知の水晶よ、エルメナ・リンメルの姿を映し出せ!」


 エリスがそう呟くと、水晶の中にエルメナの姿が映し出される。

以前ミラの適正診断にも使われたこの水晶は、魔族軍のもつ道具の中でもとびきり便利なものだ。

歴代の魔王は、この水晶を使って勇者の動向を把握し、数々の試練を与えて自分好みの強さにした後、魔王城へと招き決戦を行ったらしい。

そんな便利な道具があるならさっさと勇者を倒せばいいじゃないかとエリスも思っていたが、結局自分も全く同じことをやったので他人のことは言えない。

もっとも、他の魔王と違って育て上げた上で真っ向から叩きのめしたわけだが。

ちなみに歴代魔王曰く、なぜそんなまわりくどいことをするのかといえば、皆口を揃えて「どうせ戦うなら戦いがいがある奴がいい」ということだった。

欲望に忠実な魔族の王に相応しい、頭の悪い動機だとエリスのかつての部下の一人が言っていた。


「なんとか二人と仲良くやれてるみたいですね、よかったよかった」


 水晶の中には、顔を赤くしながらも楽しそうに二人と談笑するエルメナの姿が映し出されている。


「だからいっただろう、大丈夫だと。さぁ、エルメナさんのことはあの二人に任せて、エリスはさっさと店を開ける用意をしようか」


 てきぱきと作業をすすめるゾルに言われ、しぶしぶとエリスは開店の準備を始めた。





「今日の依頼はイータープラントの討伐だよ。最近数が増えてるから適当に数を減らして欲しいんだってさ」


 イータープラントは街から離れた場所に生息している植物で、一見ただの美しい花だ。

だが、本体は地面の下に埋まっており、花につられて近寄ってきた生物や、気づかずに上を通ったものなどに食らいついて餌とする。

花の周囲の土が不自然にやわからくなっていたり、掘り返されたようになっているかどうかで見分けることができる。


「あの、一応二人がどういう戦い方をするのか教えてもらってもいいですか?」


 街の外にでた三人はイータープラントの生息地を目指し歩いていた。

目的の場所に着く前に、エルメナは二人の戦闘スタイルを知りたいと質問する。


「私は近接担当で、手数とスピードを活かして時間稼ぎするのが主な仕事かな」

「私は魔法で仕留める役ですね。リーンが時間を稼いで、その間に私が魔法でモンスターを処理するというのがいつもの流れです」


 それを聞いてなるほどとエルメナが頷く。


「エルメナちゃんには敵を集めるのと、私と一緒に時間稼ぎをしてもらおうかな」

「わかりました。……足を引っ張らないように頑張ります」


 そう言って強張るエルメナの肩を、緊張しすぎだぞーとリーンがぱしぱし叩いた。


「さて、着きましたね」


イータープラントの群生地にたどりついた三人は、地面の様子に注意しながら慎重に進んで行く。


「それじゃぁいっちょうやりますか! ミラ、よろしくね」


 短剣を構えたリーンは二人から少し離れた場所にある、掘り返された後のある土を軽く踏んだ。

すると地面が急激に盛り上がり、中から歯のようなギザギザが大量に生えた巨大な葉がリーンに食らいつこうと姿を表した。

リーンは慌てることなく、持ち前の身のこなしを用いてイータープラントの攻撃をかわしていく。


「準備できた! リーン、下がって!」


 ミラの声を聞いたリーンは、急いで身を翻しイータープラントから距離をとった。


「ファイアアロー!」


 地上へおびき出されたイータープラントは、なすすべもなくミラの魔法の直撃を受け燃え尽きていった。


「っと、こんな感じかな!どうだった?」


 一仕事終えたとばかりに笑顔で戻ってきたリーンが、どんなもんよとエルメナの前でガッツポーズをする。


「かっこよかったです! ミラさんの魔法もすごかったですし」


 目を輝かせてリーンとミラを褒めるエルメナに、二人はえへへと照れ笑いを返した。


「さて、それじゃあ次いこっか!」

「あ、ちょっと待ってください」


 再び駆け出そうとしたリーンを、エルメナが引き止める。


「少し試してみたいことがあるんです」


そういってエルメナは、カバンから幾つかの魔道具を取り出した。


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