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日頃の感謝をこめて(2)

木の箱改め自動食器洗浄機制作現場にて、エルメナはせっせと木の板を掘っていた。

エルメナに任された仕事は、水を沸騰させるための過熱の効果を持った印を刻むことだ。


「ふぅ……疲れた……」


やってることはエリスが下書きした木の板をそれ通りに彫刻刀で彫っていくだけなのだが、少し間違えると最初から全てやり直しのためとても神経を使う。

また、彫刻刀そのものも特別な魔道具で、これに魔力をこめながら掘らないといけない。

そのため、元々魔力量が少ないエルメナは、感じる疲労感も結構な物があった。


「無理しなくていいですよ。一回で全て掘らなくても休みながらやれば大丈夫ですから」


そうアドバイスするエリスは、慣れた手つきで金属のパイプに印を刻んでいく。

木より扱いが難しい金属に、加熱の効果よりも更に複雑な印を刻んでいるというのに、その作業スピードはエルメナと比べるまでもない。


「すごいですね師匠。金属の加工は難しいってギルドにいた時よくみんなが愚痴っていたのを聞いてたんですけど、そんな手際よくできるなんて」

「慣れればそれなりにできるようにはなりますよ。最も、私の場合人より少しばかり魔力の保有量が多いので、それで少し楽できてるというのもありますけど」


実際エリス並のスピードで魔道具を加工していったら、そこらの人間ではすぐに魔力が尽きてしまうだろう。

半分力を封じられてるとはいえ、いまだかなりの量の魔力を保有しているエリスだからこそできる芸当だった。


「さて、今日はこれくらいにしておきましょうか」


ゾルが店じまいを始めたのをみて、エリスが夢中になっているエルメナに声をかける。


「はい。……なんか腕がプルプルします」


ずっと緊張していたためか、彫刻刀も離しても少し手が震えていた。


「最初はみんなそうなりますよね。私もそんな感じでした」


そんなエルメナの姿に、魔道具の作り方を習い始めた頃の自分を思い出して懐かしそうに微笑む。

ちなみにエリスは最初の頃、自分の力が強すぎて、よく板をぶちぬいていたため、力をこめない事に全神経を注いでいた。


「この調子ならあと数日もあれば終わりそうですね」


エルメナの進行具合を見て、エリスはうんうんと頷く。

なかなかできのいい弟子のようで、初めてにしては上手くできていた。


「大分加減がわかってきたので、明日はもっと早くできると思います」


実際に手を動かして自信がでたのか、エルメナにしては珍しく自信のこもった目でエリスにそう言った。


「頼もしいですね、それじゃあ明日も頑張りましょう」


はい! と言ってエルメナの元気な声が店内に響き渡った。




そして数日後。

ついに魔道具を完成させた二人は、閉店した店の中でゾルにお披露目会をしていた。


「ゾルさん、普段の感謝の気持ちをこめてこんなものを作ってみました」


じゃじゃーん! と食器洗浄機をゾルの前へともってくるが、ゾルは訝しげな顔をする。


「ありがとう、と言いたいところだがこれはなんなんだ? ミミックか何かか?」


そこはせめて宝箱でしょうとつっこむエリスに、やりとりを聞いていたエルメナが苦笑をする。


「一見ただの木箱ですか、これはとても便利な道具なんです。そこのお皿をお借りしますね」


そう言ってエリスはまだ洗われていない皿を木箱の中へ入れていく。

そして木箱の蓋をしめ、魔力をこめ始めると、中から水が流れるような音が響きだした。

1分ほどたったあと、エリスが魔力の供給をやめぱかっと蓋を開ける。

もわもわと立ち上る湯気の中から、綺麗に汚れが落ちた皿が現れた。


「ほう、これは確かに便利だな!」


そう言ってゾルは興味深げに箱の中身をのぞく。


「これ、水を加熱する部分はエルメナさんが作ったんですよ。よくできているでしょう?」

「そうなのか。エルメナさんもありがとう」


そう言ってゾルが礼をいうと、エルメナは恥ずかしそうにはいと頷いた。


「今回はゾルさんのために作ったので何を作っているのかは伏せておいたんです。……あの、どうでしょう使えそうですか?」


ちょっと不安そうに尋ねるエリスに、ゾルが珍しく笑顔でうなずく。


「あぁ、是非使わせてもらう。ありがとうなエリス」


その言葉を聞いて、エリスは嬉しそうに表情を綻ばせた。

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