↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
20/28

第20話【美海先輩、菜々を救う】

女子高校生の朝寅菜々は、数字と会話が出来る能力を持っていた。


【キャラと数字紹介】

渋谷大河・菜々の幼馴染。陸上部の有力部員。特性がある。

美海先輩・陸上部の先輩。凄い巨乳。

35・菜々のお気に入りラグランTシャツの胸のプリント。世代的感覚が菜々と近い。

12・祖父から貰った腕時計の文字盤。執事風キャラで好奇心旺盛。菜々とは子供の頃からの付き合い。


●毎日夜に上げられるように頑張ります。

「おお、これはこれは、超高級ブランドの〇〇〇様で御座いましたか。お姿がチラリとお見えになられただけで、あたりが一段階明るくなったように感じます。流石で御座います」


「おっ、あんちゃん、分かってるねえ」

 スーツの男の腕時計は文字レスタイプで、カレンダーの数字『30』が、菜々の腕時計12の問い掛けに反応した。


「月一回の出番にそんな事言われちゃったら、おいら、嬉しくて照れっちゃうな、わはは、そういや、先月の出番なんか、しどくてよお……」

 場の緊迫した空気にそぐわない江戸っ子口調の30は雑談に突入する。


 たじろいだ12だったが、雑談を遮るように切り出した。

「ところで30様、わたくしのお嬢様がたった今、困った状況に置かれていまして……」


「ああ、すまねえなあ迷惑かけちまって。この男、色々追い込まれててさ、ちょっと今、ドロボウやってんだよ」

 数字の会話を聞いていた菜々が息を飲む。


「仕事もしねえのに、しる間(昼間)っから背広着てよお、あたりの家、物色してるって寸法さあ」

「こないだの金庫事故も、通報するマネだけして、お巡り来る前にトンづらさ」

「そっちの嬢ちゃん、数字と喋れっだろ。気をつけな、こいつ、仲間にしようとつけ狙ってるぜ」

「こいつもさ、元は悪いヤツじゃなかったんだけどな。親父さんの工場を潰されちまって……」



 30の話を聞いていた菜々は、完全に身体が固まってしまった。

 スーツの男からの問いかけにも答えられず沈黙したままだ。


 精神的に追いつめられた菜々は、反射的に助けを求めるように腕時計を見た。

 男も菜々の視線の先を追う。


 二人の注目を浴びた12が喋り出した。

「お嬢様、御安心ください。わたくし、ここでは何も起こらない予感がします。少々このまま御辛抱いただけますか!?」

 もちろんその声は、スーツの男には聞こえていない。


「その時計に、何かあるのか!?」

 菜々の緯線に違和感を感じた男が問い詰めようとした時、背後の扉が開いた。


「ごめんねえ、重い物、持たせちゃって」

 後ろを振り返りながら傘を閉じて店に入って来たのは、練習着姿の美海先輩だった。

「いえ、全然大丈夫ですー」

 その後から遅れて店に入って来た、山積みの洗濯物のカゴを持った大男は……。


 美海は、菜々の姿が見えた瞬間、後ろの大男の横に移動してピタリと身体を寄せた。

 自慢の巨乳が大男の腕に着きそうな至近距離だ。


「あらあ朝寅さん、偶然ね、私達、今、居残り練習終わりなの。ね、大河君」

 『私達』というワードに強いアクセントがあった。

 大河の顔を見ながら美海はカゴを一緒に持つ素振りを見せる。


 しかし大河は、それを振り払うようにして菜々に数歩近づいた。


「うわ、菜々ちゃん!! 偶然だね!! 今、居残り練習終わったとこなんだ!!」

「……大河、それ、たった今、美海先輩から聞いたわよ!?」

 いつも通りの大河の大河っぷりに、菜々は苦笑いが漏れ出る。

 その後ろで、アピールの小芝居が秒で閉幕した美海が、手持ち無沙汰に両手をぶらつかせていた。


「なるほど、名前は、あさとらなな、か……」

 スーツの男は小さく呟いた。


(あ、名前バレた)

 と菜々は内心焦ったが、それよりも男の異変が気になった。


「……いい友達がいて、楽しそうな学生生活だな」


 先程と違って表情が歪んでいるように見えた。

 明らかに、身体全体から負のオーラを発している。


 美海も男の異様さに気付く。

「朝寅さん、この方は……」

 問われた菜々はSOSの表情を向けた。


 それを受けた美海の顔付きが変わった。

 強い視線がスーツの男を射抜く。

「申し訳ございません、私の後輩が困っているようなので、お声掛けは控えていただいてよろしいでしょうか!?」

 先程の甘ったるいアピール声とは全く違う、毅然として芯のある発声だった。


 場数を感じさせる警告の直撃を受けた男は、明らかに怯んだ。

「……へっ、バカにしやがって、どいつもこいつも……」

 ぶつぶつと何か呟きながら、視線を逸らして立ちあがり、店から出て行った。

 男の背中は、雨と暗闇の中に溶けたように見えなくなる。


 大河は、カゴの洗濯物を抱えたまま事態を見つめていたが、異変は去ったと解釈したのか、くるりと振り返り、洗濯機の中に衣類を投入した。


「朝寅さん、あの人知ってる人なの!?」

 携帯端末を取り出しながら美海は問い掛ける。

 その質問の返事に菜々は、慎重になる必要があった。

「……いや、知ら……覚えてないです」

「そうよね、朝寅さんの名前も知らなかったみたいだし」

 美海は、菜々の都合の良い方向に事態を解釈してくれた。


 会話をしながら端末を操作していた美海は、どうやら学校に連絡をしているようだった。

 通話が繋がった直後の第一声で学年と氏名を名乗り「緊急です」と告げ、状況を的確に伝える。


「警察には学校から通報してくれるそうよ。あと、顧問がここまで迎えに来てくれるって。それまでには洗濯物の乾燥、終わってるかしらね」

 通話を終え、笑顔を菜々に向けた。


(……美海先輩、スゲえ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。