第16話【菜々を救え・数字達の逆襲】
女子高校生の朝寅菜々は、数字と会話が出来る能力を持っていた。
【登場人物と数字の紹介】
渋谷大河・菜々の幼馴染。高校時代で身長一八〇㎝。特性がある。
●毎日夜11時台か0時過ぎに上げられるように頑張ります。
――小学校での高学年時代、数人の女子が菜々を精神的にいじめていたのは事実だ。
いじめグループのリーダーとなった女子はタレント事務所に所属していて、いくつかのCМやドラマに出演経験があった。
その活動を遥かに上回る『詐欺被害防止』のメディア露出が切っ掛けで、菜々はターゲットにされてしまう。
いじめの手口は、校内のコミュニティから菜々を孤立させる方向に力が入っていて、陰湿さが際立っていた。
男子達のサイン破き事件は『切っ掛け』に過ぎない。
自信を失っていた菜々はいじめに対応する気力が無く、それは長期間続く。
それを目の当たりにしていた数字達は、何とか菜々を救おうとする。
一際怒り狂ったのはスタジアムジャンパーの1955であった。
陣頭に立ち、励ます言葉を菜々に注ぎ続けたが、根本的な解決には至らなかった。
目的のために手段を選ばない1955は、菜々を救いたい一心で、自室のネットに繋がる端末と共謀していじめ女子グルーブの身辺を調べ始める。
こちらから攻撃出来るネタを探したのだ。
数字達にとって電気的な情報の閲覧と操作は容易なのだが、これは『数字のルール』に抵触するギリギリの振る舞いだった。
菜々の「学校に行きたくない」という呟きを言質として数字達は行動していたのだが、いささか強引な解釈でもあった。
そしてついに1955達は、女子グループが常習的に万引きをしている事実を突き止める。
犯行が記録されているスーパーの防犯カメラ映像も入手した。
非行の証拠を得て狂喜乱舞した1955は当初、犯行の動画をそのまま動画サイトに投稿しようとした。
女子グループへの報復にはこれ以上無い策だと思われた。
それに、腕時計の12が異議を申し立てる。
元々12が嫌いな1955は、反論と暴言のミックスを連射した。
反論もしくは暴言を華麗にスルーした12は、いつもよりゆっくりした口調で説明を始める。
「防犯カメラの動画を上げれば、溜飲は下げる事は可能でしょう。しかしその場合、女子グルーブが通う学校名も世界に向けて暴かれます。その学校にはお嬢様も通われております。世間からのよからぬ視線がお嬢様にも向けられてしまう危険性が……」
それを聞いた1955の反論もしくは暴言が急停止する。
配慮が足りなかった恥かしさと、嫌いな12に論破された不快感。
1955はそれらの感情を押し殺すように
「……じゃあ、どうすればいいのさ」
と絞り出した声で策を請うた。
自らのプライドより、菜々を救う事が出来る可能性を優先させたのだ。
12は1955の感情に気付かぬフリをして胸を張って言った。
「わたくしに考えがあります」
と。
数日後、保護者が使用している学校の連絡用アプリに不審な広告が掲載される。
その内容は、女子生徒の一部が常習的に万引きをしている、という告発で、数人の実名が記載されていた。
クローズドなアプリなので、内容が外部に漏れる事は無かった。
「誰のイタズラだろう!?」
と保護者達が戸惑う中、告発リストに実名が掲載されていた女子グループのリーダーの父親が激怒する。
事実確認のために父親は娘に詰問した。
娘は、告発の内容を完全否定した。
酷いデマだと号泣している我が子を見て父親は、告発は虚偽であると確信する。
大人の目の届かない場所で日常的に非行な振る舞いをしていたリーダーにとって、嘘で保護者を騙すのは簡単な作業であった。
仲間の女子数人は告発に怯んでいたのだか、リーダーの恫喝で沈黙させられている。
告発には証拠が添付されておらず、それが父親を勢いづかせた。
保護者が集う親睦会の席で父親が
「この中にウチの娘を貶めようとするヤツがいる!! 娘の芸能活動に嫉妬してるヤツに違いない!!」
とぶち上げてしまう。
会の出席者は揃って鼻白んだ。
元々、人格的に問題がある人物であったのだが、今回の告発が切っ掛けで最後の箍が外れてしまったように見えた。
父親は学校の朝礼にも突撃した。
体育館に集まる全校生徒の前で、娘は無実であるとの主張と、デマをバラ蒔いた人物への脅迫を行おうという魂胆だった。
しかしこれは先生達によって阻止される。
体育館の入り口で叫ぶ父親は職員達に囲まれ、学校の敷地外に出されてしまった。
この時、子供達の大半は、リーダーの女子に同情的であった。
「あの子が万引きなどする訳が無い」
「父親が怒り狂うのは当然だ」
涙ぐんで見せるリーダーに複数の同級生が寄り添い、励ましの言葉をかけた。
その日の夜7時頃だった。
先のアプリに、女子グループが万引きしている動画がアップされる。
それらは丁寧に日付順にファイルされ閲覧しやすく編集されていた。
犯行場面には名前入りのテロップが付いている程の念の入りようであった。
被害に遭っていた店は二桁で、件数はそれを遥かに上回っていた。
犯行のメンバーはその都度変わっていたのだか、リーダーの女子はそれら全てに関わり、恫喝で仲間をコントロールしていた証拠の音声やテキストも添えられて公開された。
「フェイク画像だ」
とリーダーの父親が火消しをする間も無く、警察と被害の店に通報が行われており、動画は本物である事がその日の深夜に確定する。
翌日、リーダーは学校を休み、程無く転校をした。
かかわった女子達も同様に学校に姿を見せなくなる。
数字達はその結果を大いに喜んだ。
1955の執念の調査と、相手方へのダメージを増幅させる12の事前リサーチとシナリオが、見事なまでに辛辣に決まったのだった。
リーダーの父親が初手で、事態を穏便に納めようとしていたら、結末が違っていた可能性が高い。
しかし12は、父親の性格に問題がある事を掴んでいた。
この一件で1955と12は、数字達の中で一目置かれる存在となる。
いじめ被害は、途絶えた。
ただ、菜々の深刻なダメージの根本は、そこには無かったのだ。




