第14話【数字達も分断!?・揺らぐ菜々の決意】
女子高校生の朝寅菜々は、数字と会話が出来る能力を持っていた。
【登場人物と数字の紹介】
渋谷大河・菜々の幼馴染。高校時代で身長一八〇㎝。特性がある。
12・祖父から貰った腕時計の文字盤。執事キャラで好奇心旺盛。菜々とは子供の頃からの付き合い。
●毎日夜11時台か0時過ぎに上げられるように頑張ります。
1955は保護者的な視点が強く、トラブル時に「かばう」傾向が強い。
ラグラン35は菜々と対等な立場で「一緒に解決しよう」となるが、1955は強権的な保護者意識で「アタシに任せなさい」となるケースが多い。
頼りになる数字ではあるのだが、その四桁の数について触れられると「これ、アタシが産まれた年だと思ってる?」等のウザ絡みが始まり、たちの悪い不機嫌を周囲に振りまくので「数の大きさ」に類する事柄は、菜々や他の数字達にとってアンタッチャブル事項になっている。
(小学生男子の大半はまだ●貞なんじゃないのかなあ……)
菜々はそれに気付いた途端、何だか可笑しくなってしまった。
数日前、クラスの女子達との雑談で知ったばかりのワードだったが、1955がそれを微笑ましく盗み聞きしていたので、今回の引用は偶然ではないだろう。
「なっ、なに笑ってんだよー!!」
リーダー格の童●男子は怒鳴って凄んでみせたが、実際のところ彼は、困惑していた。
絶望に打ちひしがれる予定だった菜々の、想定外の表情……。
その微笑みは逆風となり、彼のコンプレックスを燃え上がらせる。
不快な困惑を解消するため、短絡的な行動を決意した。
拳を握りしめ、菜々にゆっくりと近付く。
取り巻きの男子達も驚いている。
「それは予定に無い」
と言いたげな表情だ。
二人が物理的に接触する寸前に声がかかった。
「菜々ちゃん!!」
「あらあ、knightの登場よ」
1955の声が期待に弾む。
教室に駆け込み声をかけたのは、支援学級で学ぶ、幼馴染の大河だった。
身長は菜々より若干高いが、リーダーの男子と比べるとかなり小さい。
緊迫した教室の空気と無関係な穏やかな表情は、そのまま二人の間に割って入る。
ただ大河は、リーダーを一切見ず、菜々の正面に立つ。
「菜々ちゃんが昨日迷ってたダンジョン、抜け穴見つけたよ!!」
唐突に大河はゲームの話を始めた。
「……!?」
成り行きを見守っていた子供達全員の頭の上に、巨大なハテナマークが浮かぶ。
菜々も呆気に取られたが、思考を強引に大河に合わせた。
「……え、どこに抜け穴が?」
「えっとねえ!!」
持参していたノートを広げて説明を始める。
教室内の、一色触発の緊迫した空気は、大河の穏やかな表情で緩められて行く。
流行しているゲームの攻略法に、数人の子供が興味を示しノートを覗き込んだ。
ペンを持ちながらノートと菜々の顔を交互に見る大河の表情は、保育園時代から変わらない満面の笑みだった。
詐欺被害防止の一件でマスコミに祭り上げられた菜々は、クラスでの立ち位置が微妙に変化していて、菜々自身、居心地の悪さを感じていた。
大河は事件以降、変わらぬ態度で接してくれた唯一の存在だったかも知れない。
しかし菜々は、大河と自宅でゲームを楽しんでいる事をクラスの皆に知られて、何だか恥かしい気分になってしまっていた。
(前はそんな事、思わなかったのに、それに今、あたしを助けてくれたのに…)
以前は当たり前のように手を繋いで歩いていたのに、最近は菜々の方からやんわり拒否するようになっている。
ほんの数十秒前まで、クラス全員の視線を集めていたリーダーは今、振り上げた拳の行き場に迷ったモブキャラにランク落ちしている。
しかし彼は、内心ホッとしていた。
一時の感情で、菜々に怪我をさせていた可能性に気付いたからだ。
そうなっていた場合の責任は、大きい。
想像が恐怖に変わり、急激に感情が醒めて行くのを感じていた。
リーダーは茫然とする仲間の男子達を見ながら、自らが主導で招いた自己嫌悪を、人数分の頭割りで軽減出来ないモノかと考えていた。
その日、学校から帰宅した後も騒動の尾ひれは続いた。
それはスタジアムジャンパー1955の怒号で始まった。
「そもそも!! 12が菜々をけしかけて詐欺防止なんて事をしなければ、今日みたいなバカ男子に絡まれるトラブルになってないんじゃなくて!?」
ジャンパーは「菜々の自室の中で一番見晴らしが良い場所(1955自称)」にハンガーかけられている。
菜々や他の数字達より一段高い場所からの口調が強い。
「私だったら、他人のじいさん助けるなんて、絶対に止めてたわよ!?」
「まだ小学生なのに、記者会見とか、あんな人目につく事させて、もし、菜々の『能力』が悪い人間にバレたりしたらどうするつもりだったのさ!?」
学校は腕時計の着用が禁止されているので、1955の矛先になっている12は、教室でのトラブルに居合わせていない。
猛烈な批判に、勉強机の上のハンカチに置かれた腕時計12は無言だった。
反論出来ないでいるのか、ただ単に相手にしていないだけなのか、心理状態が不明な12であったが、1955の一方的な怒号の最中に、いびきをかき始める。
狸寝入りにも見えたが、誰もそれを指摘出来る空気では無い。
それは1955の怒りに燃料が注ぎ込まれた形になり、罵倒がいびきのボリュームを上回る。
「おじいさんを助けようとしたのは、あたしの判断」
菜々の囁くような力強い声で1955の罵倒が止まった。
同時に、いびきも止まってしまったので12の狸寝入りが確定してしまう。
好奇心を優先しがちな12の振る舞いは、確かに1955が言うように、保護者的な配慮が足りなかったかも知れない。
ただ、今回残した問題は『能力バレ』ではなく、菜々の心へのダメージであった。
(あたし、調子に乗ってたのかな……)
その日、菜々は、眠れなかった。
男子達の、悪意溢れた言葉や表情が頭の中を巡り、消えなかったのである。




