第13話【活躍後・予想外の顛末 】
女子高校生の朝寅菜々は、数字と会話が出来る能力を持っていた。
【登場人物と数字の紹介】
渋谷大河・菜々の幼馴染。高校時代で身長一八〇㎝。特性がある。
12・祖父から貰った腕時計の文字盤。執事キャラで好奇心旺盛。菜々とは子供の頃からの付き合い。
●毎日夜11時台か0時過ぎに上げられるように頑張ります。
菜々は驚いて大声を出しそうになったが、両手で口を押さえて堪えた。
書類を作っていた女性警官が頭を横にかしげて菜々を見る。
「数字と通信て相性イイんだよ、意外と簡単」
警官の視線にかまわず、端末の数字達は対応策の協議を始める。
「でも、おじいちゃんを騙した『掛け子』は恐らく末端の構成員だよね……」
「下っ端、とっ捕まえてもなあ」
「ちょっと私達が頑張れば、詐欺グループの幹部に辿り着けるんじゃないかしら!?」
「あ……うん、イケるかもね」
半信半疑であるが、菜々は両手の掌を合わせて
「じゃ……幹部、捕まえて!!」
と小声で端末に向かってお願いした。
「まかせて、嬢ちゃん!!」
数分後、おじいさんの端末にショートメッセージが届く。
端末を調べていた警官がそれに気付く。
「おい、これ……」
応援に集まっていた警官達が端末を覗き込み、揃って驚愕の表情を浮かべる。
そこには、詐欺を計画した幹部達の個人情報と潜伏先が記されていたのだ。
にわかには信じがたい内容ではあったが、最終的に『グループの内部闘争』と解釈され、後日の捜査を進める上での重要な足がかりとなった。
数ヶ月後、念入りな捜査を重ねた警察が、詐欺グループの一斉検挙に成功する。
その過程で様々な数字達のサポートがあったのだが、菜々は知らされておらず、警察側も気付いていない。
幹部達の逮捕を菜々が知ったのは、おじいさん家族からの連絡だった。
詐欺未遂から数週間後。
事件を未然に防いだ菜々へ警察から感謝状が渡される事になった。
マスコミを集めた会見も予定され、その控室で初老の夫婦と青年に久し振りに対面する。
「あの時、声を掛けて良かったわあ」
夫婦には菜々と同じ年頃の孫がいるらしく、その面影が菜々と重なった事が声掛けの動機になったらしい。
頭に巻くバンダナを新調したと言っていた青年は、控室で生配信の準備をしていた。
「朝寅さん、僕の生配信に出演していただきたいのですが、いかがでしょうか。朝寅さんのプライバシーには配慮させていただきます」
何故か敬語で話し掛けられたが、菜々自身、悪い印象は感じておらず、出演の申し出を了承する。
配信が始まると、ここが警察署である事と会見に招待された理由を、オーバーな小声で自撮りのカメラに向かって喋り出す。
青年は「事件を防いだ立役者」と菜々を紹介したが「未成年なので残念ながら」と顔を映さなかった。
代わりに容姿と言動を、菜々が知らないアニメのキャラクターに例えて絶賛した。
(みんな、イイ人達だな…)
菜々は、人それぞれの暖かさに触れて、気分が良かった。
会見は女子小学生の菜々に質問が集中した。
「お嬢様の、控え目にしていても人目を引いてしまう御容姿。そして、言葉から滲み出る明晰さ聡明さ。記者が放っておかないのも道理ですな」
会見に付き添った腕時計の12は誇らし気だ。
詐欺に気付いた切っ掛けが「数字の声」であるとは言えないので「おじいちゃんの様子が変だったので」と答え、その場を切り抜けた。
『女子小学生・振込詐欺を防ぐ』
そんな見出しで菜々の会見の映像がテレビやネットで配信されると、好意的なコメントが殺到する。
この手の記事としては珍しくインプレッションが多く、SNSでもトレンドに上がった。
しかし菜々はそんな事より、おじいさんに被害が無かった事と、犯人が捕まった事を、心の底から嬉しく思っていた。
「人の役に立つって、気持ちイイよね!!」
「能力を使えば、みんなが、そしてあたし自身も笑顔になるかも知れない!!」
「よーし、もっと頑張ってみるよ!!」
菜々は、自室の数字達にそう熱弁した。
おじいさんの家族から届いた特上寿司を頬張り、暖かい気持ちと明るい将来の展望に心とお腹を満たした。
しかし翌日の学校で、その決意は有象無象の悪意に触れる事になる。
「調子に乗ってんじゃねえよ、菜々ー!!」
一時間目の授業を終えた休み時間、詐欺を防いだ記念サインをくれと迫った男子が、たった今、菜々が書いたサインを破り捨てながら叫んだ。
「サインとか、本気にすんなよー!!」
「はい!! 菜々はバカなヤツ確定!!」
「わははは!!」
取り巻きの男子達がはやし立てる。
菜々は、驚いて思考停止状態になった。
言い返す言葉がみつからない。
その様子を見ていた幾人かの子供達も、男子達の悪意に絶句している。
めまいに似た歪んだ視界の向こう側で、菜々の表情を覗き込むようにして笑い合う顔……。
「男の嫉妬、ハズイわよねえ」
そう吐き捨てたのは、その日、菜々が着ていたスタジアムジャンパーの胸のプリント『1955』だった。
その数字の下には『since』の英文が添えられている。
「菜々の活躍が悔しくて仕方無いのよねえ。菜々を下げても自分達が上がるワケでもなのにさ、ホント、ろくでもない連中よね!!」
「しかも女子一人相手に男子が束になってさ!! 一人じゃ何も出来ない玉無しってバレバレじゃないのさ!!」
「それと、この段取りめいたやり取り……これ、事前に練習してるわね。もっと有意義な事に時間を使いなさいってのよ、この童●野郎ども!!」
わずか数秒の間に毒舌が連射されていたのだが、それは、菜々以外の人間には聞こえていない。
男子達が想定、もしくは期待していた『菜々がヘコんでいる時間』は実際、1955の辛辣な反論で埋まっていたのだ。
こんな時、数字のお陰で菜々は独りにならずに済んでいた。
スッと、冷静になれる。
負の感情が緩和される。




