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第12話【小学生時代・オレオレ詐欺を防ぐ】

女子高校生の朝寅菜々は、数字と会話が出来る能力を持っていた。


【登場人物と数字の紹介】

渋谷大河・菜々の幼馴染。高校時代で身長一八〇㎝。特性がある。

12・祖父から貰った腕時計の文字盤。執事キャラで好奇心旺盛。菜々とは子供の頃からの付き合い。


●毎日夜11時台か0時過ぎに上げられるように頑張ります。

 初めて菜々の『活躍』が公になるのは小学生時代だった。


 駅前まで一人で買い物に出掛けた時にその事件は起きる。


 この頃の菜々は、活発な性格が完全に仕上がっていた。

 雑踏の中を、誰にもぶつからず、すいすいと足を動かす事も出来た。

 自分が思った通りに身体を操れる。

 菜々はそれが、楽しくてたまらなかった。


 目的地に向かう道中、すれ違ったおじいさんが持っている旧式の携帯端末から、数字の声が聞こえた。

 菜々は立ち止まっておじいさんの背中を振り返り、声に耳を傾けた。


「じいさん!! 金、振り込んじゃ駄目!!」

「今、おじいちゃんが話ししてる男、孫じゃないわよ!!」


 端末のダイヤルが悲鳴に近い声を上げていた。

 もちろんそれは、おじいさんには聞こえない。

 聞こえていたのは通話相手の孫と名乗る男の声たげだった。

 急かされているのだろうか、その足取りは落ち着きが無い。


「今、お嬢様とすれ違った御年配、何やら違和感のある御振る舞いでしたな」

 菜々の右腕のアナログ腕時計『12』が嬉しそうに呟く。


「何やら、事件のニオイが……。お嬢様、いかがなさいます?」

「もちろん、困ってる人は助けるわよ!!」

「左様でございますな。流石はお嬢様。しかし、タフなお嬢様とは言え未だ小学生、成人男性の足を止めるのはいささか困難であると、わたくしは愚考いたしますが、何か妙案が御座いますでしょうか?」

 12の声は、状況を楽しんでいるように弾んでいた。


「んんー……」

 腕組みをして傾げた頭で空を見上げる菜々。


「ここは一旦退いて、街のお巡りさんに助けを求める事が最善の……」

「それじゃ遅いよ、おじいさん見失っちゃう!!」

 菜々が12の声を遮る。


「左様でございますな。流石はお嬢様」


 菜々は数秒、何かを考えていたが、唐突に腕組みを解き走り出し、おじいさんの前に回り込み両手を広げ叫ぶ。

「それ、オレオレ詐欺だよ!! 早く電話切って!!」

 かなりのオーバーアクションと、かなりの棒読みだったが、それは、菜々が意図していたものだった。


「は、早くお金を振り込まないと、ま、孫が、会社をクビに……」

 挙動不審なおじいさんと、可愛らしい女子小学生のやり取りに、雑踏の耳目が一気に集まる。


「電話を切って」と「早く振り込まないと」の押し問答が数ターン繰り返されたあと、百貨店の紙袋を抱えた初老の夫婦が声をかけた。

「どうしました?」

 菜々が手短に顛末を伝える。


 その様子を伺っていたアニメキャラのシャツを着た青年が

「それなら、近くに交番ありますから、そこでお巡りさんに相談しましょうか」

 とタブレット端末の地図をかざしながら早口で言う。


 おじいさんは頑なに通話を切らず会話を続けていたが、周囲の人々に説得され促され、交番に向けて憮然とした足取りで歩き出した。


 菜々の意図通り、騒いで見せて周りに助けを求めたのは正解だった。

 子供一人では事態は解決しなかっただろう。

 交番でおじいさんは保護された。

 幸い現金を振り込む前だったので被害額はゼロであった。


「御年配を救いましたな。そんな策を思い付くとは、流石はお嬢様」

 12がオーバーな感嘆の声を上げていたが、人が溢れた交番内で返答するワケにもいかず、右腕の腕時計に見えるように左手で小さくサムアップした。


 程無く、おじいさんの家族が交番まで迎えに現れた。

「じいちゃん、俺は二年前、既に会社をクビになってたじゃん!?」

 そう言った孫の青年は笑顔だった。

「そうじゃったかのう……」

 おじいさんも照れ笑いをする。


 サッパリした身なりの孫は会社をクビになったのではなく、自主退職して自ら会社を経営している事を、菜々は後々知る。


 孫の母親(おじいさんの子)は、お礼の言葉を連呼しながら何度も菜々達に頭を下げた。

 迎えに来た家族は誰も、おじいさんを叱らなかった。

 被害が無くて良かった、と笑い合っている。

 優しい人達が集まった家庭なのだろう。

 暖かい人の空気に触れて、菜々も自然と笑顔になっていた。


「ありがとう、お嬢ちゃん!!」

「私達のおじいちゃんが無事で良かったわあ」

「グッジョブ、日本の小学生!!」

 交番の机の上に置かれたおじいさんの携帯端末からも、菜々へ感謝の声が上がっていた。


 事件に対応していた警官二人は、書類作りや電話連絡に忙しそうなので、その隙に菜々は端末の数字達に小声で話しかけてみた。


「しかし、許せないわよねえ、こんな人のイイおじいちゃんや家族を狙うヤツら」

 菜々の声掛けに対する数字達の反応は意外なものだった。


「俺達なら、その許せない犯人、捕まえられるかもね」


「……え!? そんな事、出来るの!?」

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