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戦闘力レベル99の薬草師〜異世界行っても採集クエストしかやりません〜  作者: 成若小意


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第三十二話 レベル99の薬草師

「いいかモニカ。よく聞け」


 レオンは眉間をもんでいた手を放して、両の手を顔の前で組みなおす。


「まずは、この国の成り立ちを話そう」


「えっと、この前話してくれた、この国はモンスターからの緩衝地帯になっているって話?」


 魔女の家で聞いた話を、ここ酒場アリアドネでも聞けるのは不思議な感じがする。いつもの酒場の騒がしさとは違い、静かな個室でレオンと二人。私にとって大事な場所で、この世界の話を聞く。


「ああ、その話の、さらに前の話だ」


 レオンは目の前に置かれた紅のダンデリオンを、入れてあった手提げにしまいなおす。その簡素な手提げに戸惑いながら、私の手に持たせる。個室ではあるが、万が一を考えて隠してくれたのだろう。


「モンスターは爆心地といわれるところから発生している。そこには石があるだとか巨大な穴があるだとか言われている。俺たちの国の王族の祖先は、その爆心地のさらに向こうから来たらしい」


「その向こう……」


「ああ。爆心地の反対側には、ここと同じように人の住む地域が広がっている、らしい。見たやつがいるわけではないから本当のところはわからないが。王族がここに来たのは200年ほど前だとか。元の土地でも王族で、勇敢な者が新天地を求めてきたとも言われている。本当かはわからないが」


「レオンは疑っているの?」


「俺が、というより、通説だ。王家の血筋を証明するものが誰もいないからな。ここの国はよそからの寄せ集めが多いから、王に対する忠誠などそんなものだ」


 リリィからも王族の話はあまり聞かなかったし、ここに住んでいる人たちにとって王様は遠い存在なのかもしれない。レオンは少し緊張を解いて話を続ける。ここの部分は秘密の話というよりもただの歴史の話だからかもしれない。


「勇敢な者というのはあながち嘘ではないようで、あの爆心地を通り抜けてくるだけの武力はあったということだ。軍隊を保有できるほどの家柄であったということかもしれない。その中に、今の王の直系の王女がいた。その王女は、今の王女と同じような症状で苦しんでいたと伝えられている」


「遺伝性の病気なのかしら。あ、家族に同じ症状が出るっていうこと」


「そうかもな。その王女は、爆心地に近づくにつれ、症状が重くなってきたそうだ。しかし、そこでたまたま見かけた薬草がその症状によく聞いた」


「それが、紅のダンデリオン」


 崖で風に揺れていたダンデリオンを思い浮かべる。当時の喜びはどれほどのものだったのだろうか。


「そうだ。魔術師の塔の連中の研究では、おそらく王女は魔力を吸う能力があったようだ。そのおかげで爆心地を通り抜けるときもモンスターがよけていくほどの魔力を携えていた」


「でも、王女様は魔力を吸いすぎた?」


「そうだ。よくわかったな。その魔力を散らすことができたのが、紅のダンデリオンという植物だった。王女のその特殊な能力と軍隊の武力をもって、爆心地を抜けた先ににあった、人の住む土地にたどり着いた。たどり着いた先でモンスター退治やらなんやらをしているうちに名声や資金を得て、国となったという経緯がある」


「そうなのね。だから伝説の薬草なのに信ぴょう性はあるわけってこと」


 私の言葉にレオンがうなずく。


「当時は王家の持てるすべてをもって、その伝説の薬草を手に入れることができた。だが、今はそういうわけにはいかない。王女一人のために全軍事力を投下するわけにはいかないからな」


「王様のジレンマね。力はあるのに大事なものを守るために使うわけにはいかない」


「ここで視点を少し変えよう。モニカ、前に相談したいことがあるって言っただろ」


「そういえば聞きそびれていたわ」


 あの時は話がそれてうやむやになってしまっていた。


「それに関係している。モニカ、今度は君に会った時のことから話そう。最初は何かを隠している怪しいやつだと思っていた。しかし、ただ能力が高いだけの善良な人間だとすぐにわかった。だからモニカが利用されないように見張っていればいいだけだと思っていた。でも、付き合っているうちに次第に君の特殊性に気づいてきた。これ以上はここでは守り切れないと思った。ここまでの話は覚えているか?」


「えっと、冒険者ギルドとか貴族が出てくるから?」


「そうだ。だから、実は引っ越しをしてもらおうと考えたんだ。俺の伝手がある外国に。そこならさすがに貴族も手を出せない。顔なじみと離れることになるから嫌かもしれないが、薬草採集ができる環境とかはそろえるつもりだし、できるだけ今と変わらない生活をできるようにするように配慮するつもりだった」


 レオンがそこまで考えていてくれたとは。確かにリリィやおばあちゃんたちと会えなくなるのはさみしい。でも、生き方を考えていかなきゃいけないのだから、そこは割り切らなきゃいけないのかもしれない。


「そう、なのね。確かにそのほうがいいのかもしれない。ありがとう、レオン」


「いや、よく聞け。この話は、昨日までの話だ」


 レオンは立ち上がり、私の横まで来た。少しかがんで目線を合わせてくれる。近くなったその存在に、真剣さを感じる。


「紅のダンデリオンは王族が全力で探していた。つまり、この薬草を差し出したら、モニカ、君を全力で探しに来る」


 私の手を包むレオンの体温と真剣なまなざしに気おされる。私なんかよりよっぽど私のことを考えてくれている。


「王族が出てくるんだ。よく考えてくれ、モニカ。ここは生活を守るための正念場だ。何か君に切り札はないか」

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