第三十三話 採集クエスト完了
「私の、切り札……」
「いや、話を戻そう。まずはこの紅のダンデリオンをどうするかだ。王家に献上して、今までの暮らしを捨てるか、それとも、他のいい方法をひねり出すか」
「う~ん。でも、王女様の命がかかっているわけでしょ?」
改めて考えてみる。人の命を見捨ててまで、私の平穏な生活が大事なのか?
「そうね。まあ、いいわよ。別にばれても」
「いやにあっさりだな」
「私は普通な暮らしがしたいだけなの。女の子一人見捨てて平然と生きてなんていられないわ」
それに、いままでレオンに甘えすぎだったかもしれない。
「いいわよ、私が直接渡してくるわ」
何かに気づいたように、レオンが顔を上げる。
「それだ」
「どれよ」
「なんで俺はそれを見落としていたんだ……。いままでは、モニカが悪用されると思っていた。力が強すぎると、国から敵視されるとも思っていたんだ。隠すことばかり考えていた」
「敵視?」
「そうだ。未知の力を持った異分子だ。しかもその力を隠しているのだから、敵と思われても仕方がない」
「そうなのね」
あまりピンと来ていなかったが、そういうものなのだろう。
「でも、モニカ自身が花を届けるのは、妙案だ」
「そうなの?」
「まず敵意がないのを示せる。そして、恩を売れる」
「恩」
そういわれればそうだ。そもそもクエストに出ているし、報酬は言い値と書いてあった。
「それにはモニカ、君が自分自身で自分を売り込まなくてはいけない。できるか?」
この国の風習も知らない。はったりもできない。でも。
うなずく私を見て、レオンはうれしそうに笑う。
「モニカ、君は逃げ隠れをする必要はない。爆心地を渡れる。王との交渉材料も持っている。対等だ。王族と、対等なんだ」
私はレオンの手を取って伝える。
「私の望む生活をもぎ取ってくるわ」
私はこの見ず知らずの土地に、何も持たずにやってきた。
そして、地道に生きて自分にできることをやってきた。
友を得て、職を得て、生きる場所を手に入れた。
レオンとリリィから仕込まれた礼儀作法と、付け焼刃な貴族の言い回しをもって、王家に紅のダンデリオンを献上した。その場にはいろいろな思惑があったのだと思うけれど、私は報酬として魔女の家周辺の土地とフィールドの一部の土地を手に入れた。
家にはレオンをはじめ、リリィ、おばあちゃん、フェルマー、そのほか知り合った人たちがやってくる。
ラゴちゃん夫婦から増えたマンドラゴラの畑を耕すのを今日もレオンが手伝ってくれている。
「そういえば、モニカはレベルの測り直しをしたのか?」
思い出したようにレオンが言う。
「うーん。本当はね、一応は測れていたのよ」
「なんだって? 壊れたんじゃなかったのか?」
「測れた後に、壊れたの」
「どういうことだ」
「上限を超えたのよ」
「……つまり?」
ちょっと怖い顔をするのはやめてほしい。
「つまり、私のレベルは、99以上ってこと」
言葉が出ないレオン。
「レベル99の薬草師なのよ」
呆然自失となったレオンが、回復したころにこう言った。
「それを最初から言っていれば、国がもっと手厚い保護をしてくれていただろうに」
疲れた顔をしてそう言われたが、いいのだ。私は今の暮らしが気に入っている。




