第二十四話 葛藤
前回から間が空いてしまいました。
待っていてくれた方、ありがとうございます。
「まあモニカも最初は監視対象だったけどな」
私の心の葛藤などつゆほども知らず、レオンはあっさりとそう告げた。
「え、ど、どういうことよ」
「そのままだ。そんな年若い女の子で、身ぎれいなのにつても何の理由もなく薬草師になるのは、違和感だらけだ。当然教会にも問い合わせをしたが、あそこはただの保護機関だからな。身元調査のプロでもないわけだから、大した回答はなかった。そこで、自分の目で見て確かめることにしたわけだ」
「それで、自分の目で見て、どうだったの」
そこでレオンはにやりと笑う。普段見せない笑顔をここで見せるのはやめてほしい。
「完全なる、クロだ」
「く、クロ?」
「怪しすぎる」
「怪しすぎる……」
笑いながら酒を口にするレオン。
「そして、それなのに害がない」
「害、ないですか? クロなのに放置してもいいっていうことですか?」
「むろん放置はしていない。上には報告済みだし、少し前まではここに住んでいたから、ここアリアドネの酒場のマスターが様子を見ていてくれた。そして、俺が監視担当になっているからな。……ほかのやつらから口出しはさせない」
突然の話に頭がこんがらがり、いったんご飯を口にして、気持ちを落ち着かせる。
「つまり、レオンはずっと私を監視するために話に付き合ってくれていたの?」
「……逆だ」
「逆?」
「こんな危なっかしいやつをほっておけないだろう。君は自分の危うさも理解していないような人間だ」
レオンの言葉の真意はよくわからないが、私のことを敵視しているようには見えなかった。
「つまり、えっと……。心配してくれているってこと?」
「ありていに言えば」
またもや思いがけない肯定をしてくれるレオン。珍しくこっちに向き直り、私の目をじっと見てくる。
「それで? 君は何を隠しているんだ? そして実力レベルに見合わない。もし実力がレベルの通りなら活動可能領域も見直してもらう必要があるし、俺にはその権限もある」
「う~ん。まあいっか。レオンによく考えたら、隠さなきゃいけないことでもないし」
「まあまて、聞きだしたのは俺だが、モニカの素性がここで漏れるのもよくない。誰が聞いているかわからないからな。場所を変えよう」
魔女の家に送ってもらいがてら、話をすることになった。前にもこんなことがあったが、酒場ではなく、隣をレオンが歩いているのは相変わらず慣れない。
魔女の家への道は、町の中心部を抜け、建物もまばらになってきた地域も抜け、森や草原近く――いわゆるフィールドの付近を歩く。なので、モンスターこそいれど人はほとんどいないし、いてもすぐわかる。つまり内緒話にはもってこい。
「こんな道を毎日帰っているのか。やはり危ないな」
「うーん。最初はそう思っていた時もあるんだけどね。あ、さっきの話の続きなんだけど、私実はレベルがちゃんと測れてなくって」
「レベルが測れてない? ギルドの登録時に正式に測るだろう」
「そう。でも測定器が壊れちゃったの。だから、登録したレベル15以上の実力はあるのよ。そのずれがレオンには変にみえたのね、きっと」
嘘は言っていない。測定器の針は降り切れてしまったし、リリィ曰くその後煙を上げて壊れてしまったそうだ。我ながらうまくごまかせた。
「測定器が、壊れた?」
レオンは難しい顔をしながら顎を撫でているが、それ以上突っ込んでくることはなかった。




