第二十一話 甘い、話
「は〜、疲れた! やっぱり我が家が一番!」
魔女の家のソファにたどり着き、もはやこの世界において第一位の安住の地となったこのソファに身を投げ出す。
あれからフェルマーはコンコンと魔術師の塔の劣化具合に対する愚痴をこぼし、その後二、三の植物の知識を与えてくれて、最後に私に「一番弟子にしてやろう」と弟子入りをさせてくれてから、解散した。
「それにしてもドロドロしてたな〜」
どこの世界でも権力争いやいざこざはあるものだけど、それはここでも変わらないようだ。剣と魔法のファンタジーのようなこの世界でも。
「浅い部分だけで平穏に暮らすのが一番よね」
家に帰ってからしばらくは、フェルマーから教えてもらった薬草の知識をなんとか組み合わせたりして、マンドラゴラのラゴに花を咲かせようと頑張ってみた。けれど、花どころか葉っぱも枯れたままだ。
レオンが来た時に巻いてあげた麻布も果たして効果があったのか。でも脱がせるのもなんだかかわいそうなので、洋服のように着せたままにしている。
「最近レオンとも会ってないな」
フェルマーに会いに行くために遠征していたこともあり、酒場からは足が遠のいていた。
花は咲かないし、レオンにも会えていない。フェルマーの生き様に当てられて、なんだかどっと疲れてしまった。
「……そういえば、もうすぐだっていってたわよね」
今日行くべき場所を思いついた。
「リリィ〜。久しぶり!」
「モニカ〜。ようやく会えたわ〜」
リリィの勤めているお店の二号店が開店したのだ。
冒険者だらけのこの町でも甘党は結構いるようで、お店は賑わっている。職人や食堂のおばちゃん、お姉さん方、ギルドの職員だけでなく、マッチョの冒険者もちらほら。
私は店の端の方の席で甘味を食べながら、リリィが休憩に入るまで待たせてもらった。
もともと休憩時間に喋れるようにと招かれていたので、それほど待たずにリリィはエプロンを取りながらやってきた。手にはメニューにない商品を持ちながら。
「モニカ、これ試食してほしくって」
「え、いいの? 私で」
「もちろんよ〜。モニカは他にはない視点があるからね」
食に溢れていた日本から来ているのだ。私の舌はここでこそ活かされるのだろう。薬草師じゃなく、グルメリポーターもいいかも、なんて思いながらここ最近会あった出来事をつらつらと話す。
「そういえば、リリィは貴族の知り合いとかいる?」
「いない、いない!」
思った以上に慌てる様子に逆に驚いてしまう。私が思っている以上に貴族と平民との隔たりは大きいようだ。いい機会なのでリリィにこの世界での貴族制度やタブーなどを聞いておく。
一通り説明が終わり、試食品も食べ終わったころ。そろそろ帰ろうかという私に、リリィがそういえば、と話しかける。
「そういえば、モニカのほうが知り合いいるじゃない」
「え?」
なんとなく予感していた言葉が出てくる。
「レオンよ」




