第十九話 戦い方はいろいろ
戦う薬草師、フェルマー。
彼は冒険者チームと組んで行動しているようで、モンスターを狩る冒険者たちと遜色のない動きをしていた。その様子は今まで見ていた薬草師の人たちとは全く違っていて、驚いてその様子をただ眺めてしまった。
よく見ると、ほかの冒険者たちはそれぞれの武器を使う中、彼は違うもので戦っていた。その場に生えている毒草を使ったり、腰につけたポーチから取り出した、特殊な植物で火薬玉の威力を上げたり。つまり、薬草師として戦っていたのだ。
(確かに、今使った毒草はもぎたてが一番効果が高い。火薬玉を増強させたのはファイヤーフラワーの実かしら。少なくとも町の付近では手にはいらないわね)
見ているだけでも得るものが多い戦いだった。
モンスターの群れをあらかた狩り尽くし、後始末に入り始めたので、そろそろいいかと近寄り、改めて挨拶をする。
わざわざ時間を割いてくれるというのだ。せめて邪魔をしないようにと緊張して話しかけたのだが、杞憂だったようだ。
「お前が聞きたいことあるとかいうやつか。教えてやるけど、陰気くせー町の薬草師に生かせるとは思わないけどな」
私は全く歓迎されていなかった。
「マンドラゴラの生態? まあアイツラはある程度需要はあるが捕るのは厄介だからな。俺なら地面に火薬を仕掛けて一気に爆発させて大量捕獲、だな」
フェルマーは聞かれたことに答えるには答えるのだが、その態度はあきらかにこちらを見下しており、今も鼻で笑いながら、作業片手にの説明だ。
「いえ、捕獲方法ではなく、花を咲かせる方法を知りたいのです」
受付のマリアからはあまり詳しい説明がいっていなかったようで、改めて説明をする。
「はあ? 花を咲かせる、だ? こっちは薬草採集を専門にしてるんだ。栽培なんてチマチマしたことは知らないね」
話し方にいちいち棘があるのが辛い。ここまで嫌悪感をあらわに接せられるのは久しぶりな気がする。
「まあ、花か。花な〜。アイツラが花をつけ始めると厄介なことになるから、早めに採っちまうことしか考えてなかった。逆に花がどうやればつくのか分かれば、対処も楽になる……か?」
確かにこんな忙しい場面で押しかけて質問されるのは迷惑だとは思うが、ならばなぜ、マリアに了承の返事をしたのだろうか。
今も、一度退けた質問を再考してくれている。根っからの悪い人でもないようだ。
結局マンドラゴラに花を咲かせる方法はわからなかったものの、その後も狩場での薬草の知識を、不遜な態度ながらもアレやコレやとフェルマーは教えてくれた。
「まあ、町のしみったれた薬草師なんかはこの薬草の見分け方なんかわからないだろうがな」
大抵の説明の後にけなされるものだから、せっかくいい人だと思おうと思うたびに、イメージは下方修整されるが。
「これの採り方はわかるか? わからんだろな、引きこもりの薬草師なんかに」
何度目かのこの言い回し。いい加減腹が立ってきたので、反論してやった。
「わかりますよ? 私も意外とアウトドア派なので」
そう言って、フェルマーが採ろうとしていた猛毒の花を、教科書にはない取り方ーー素手でむしり取ってやった。手に魔力を集中させると、薄いベールのようになるのだ。魔力に物を言わせた力技だが、これが一番花にダメージが少ない。
「どうです? 先生」
「……正解だ」
フェルマーはびっくりした顔のまま、そう呟いた。




