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戦闘力レベル99の薬草師〜異世界行っても採集クエストしかやりません〜  作者: 成若小意


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第十五話 騙されるのも悪くない

「モニカ?」


 普段会わないところで顔なじみと会うと、一瞬状況が分からなくなることがある。そして、不意打ちで人に会うと、よくわからないことを口走ってしまうこともまた、よくある。


「えっと、あ、お久しぶりです」


 言ってから、自分で違和感に気づく。

 こんな場所で「お久しぶりです」も何もない。


 普段酒場でしか会わない男ーーレオンに、こんな樹海の奥深く、マンドラゴラの密生地で会ってしまった。だというのに、普段会わない親戚に会ったような挨拶をしてしまった。


 レオンは軍服を着込んでいるところを見ると、なにか機密行動を行っているところなのだろう。


 一呼吸置いて状況がゆるゆると頭に入ってくる。背中にどっと汗が噴き出る。


(バレる、バレる)


 レベルを下に偽るということが、どう悪いことなのかはよくわからない。レオンに対して悪いことをしているわけではないし、堂々としていてもいい気がする。しかし、ここでレオンにいろいろと問い詰められたりしたら、どうしたらいいのかわからなくなるだろう。


 しかし、どうにもレオンの様子もおかしい。


「ああ、久しぶりだな」


 私の話に乗ってくれる。


「えっと、あー、いつのまにか、こんなところにまできてしまっていたのね。まだ森の入り口付近だと思っていたー」


 あまりにも棒読みだが、ヤケだ。


 流石にレオンの眉も少し歪む。しかし。


「……俺もいつの間にか深入りしすぎた、みたいだな。ここは危ない。一緒に帰るぞ」


 いつもの堂々とした目つきとは全く違う。こちらに視線を合わせず、周りを見回す。警戒しているのか、警戒を装っているのか。


 考えてみると、いくら軍人のレオンとはいえ、こんなところで一人で立っているのはおかしい気がしてきた。単独行動とかもあるのかもしれないけれど、レオンもきっとやましいことがあるのだろう。


 一瞬だけ目が合う。

 お互いに、これ以上ここにいたくないという意思だけは共有できた気がした。


「さあ、帰りましょう」





 お互い徒歩にしては早く樹海を抜け、町へと続く少し廃れた道を二人で歩く。


(そういえば、レオンとはよく会うけど酒場以外でこうして並ぶのは初めて)


 なんとなく感慨深い思いを抱きながら。少しホクホクした気持ちで歩く。


(マンドラゴラの土も回収できたし、レオンともこうして会えた。ほんと、久しぶり。いつぶりだったかし……ら……)


 黙々と歩く中、最後に会った時のことを思い出す。


(水魔法をぶっ放した時、だったわ……)


 正確には会ったわけではないが。またしても冷や汗をかく。ボロを出さないようにこのまま黙っていようと思ったのだが、


「最近何をしていたんだ?」


 突然核心を突く会話を始めるレオン。


「えっと、何って……」


「最近家に帰っていないだろ?」


「あ〜。何かと思ったら、そのことね」


 私の帰宅事情を知っているのは、別にレオンが私のストーカーとかそういうわけではなく、単純にレオン行きつけの酒場の二階が私の家だからだ。


「最近家に当てがついてね。引っ越すことになったの」


「引っ越し? そんな金あるのか」


「もらったのよ」


「……そんな家をポンポン他人にやるものか。騙されているんじゃないか?」


 レオンの眉がわずかに寄る。

 冗談ではなく、本気でそう思っている顔だった。


「そんなことないわよ。魔女のおばあさんが家を移るみたいだから、庭の世話と引き換えに住まわせてもらってるの」


「なるほどな。それならわからなくもない」


「あ、そうだ。レオンも引っ越し手伝ってよ」


 わざとらしく明るい声で言うと、レオンはゆっくりとこちらを見た。


 レオンは深く息を吐き、こめかみを指で押さえた。


「あの()()()を移動させるのか? 植木鉢だらけだっただろ」


 レオンは私のストーカーではないが、私の部屋に入ったことは、ある。



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