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第37章―1 ドイツ本土における末期航空戦

 新章の始まりになります。

 米内洋六中佐は、1942年7月末にはリューベック市近郊に駐屯していており、ドイツ軍の最後の反撃に備える日々を、事実上は送っていた。


 既にエルベ川を日本海兵隊は渡河しており、他の英仏等の連合軍も、ルール工業地帯を巡る戦闘に勝利を収めて、主力部隊はエルベ川を渡ってベルリンを目指し、一部の部隊を以て、プラハやウィーンを目指そうとしている。


 そして、米内中佐の耳に入っている情報が正しければ、ルール工業地帯に加えて、バイエルン地方も英仏等の連合軍の占領下にほぼ置かれつつあり、8月以降にはベルリン、プラハ、ウィーンに対する最終攻勢が発動される筈だった。


(尚、この時点では、米内中佐のような最前線の将兵には、ユダヤ人部隊を使ったポーランド地域に対するバルト海上陸作戦を展開して、ベルリンを迂回して対ソ戦に備えた動きをするという作戦は、まだ伝わっていなかった。

 敵を騙すには、まずは味方からの精神で、日本海兵隊はオーデル川の河口部に上陸し、港湾都市であるシュチェチン市を制圧する作戦が、欺瞞作戦として、米内中佐らに内示されている状況だったのだ)


 そういった裏事情もあることから、米内中佐は、いわゆる「急いで待て」の精神から、遠く離れた日本本土からの補充兵の到着、及びそれによる部隊の再編制等を、粛々と行っている状況だった。


 そして、それはそれなりに忙しいことではあったが、ドイツ陸軍による直接の妨害、具体的には再反攻が行われるような状況にあるのか、と言われれば、そんなことは無く、最前線に展開しているのに、気が抜け過ぎでは、と言われそうだが。

 米内中佐にしてみれば、部隊の再編制等に勤しめる状況にあった。


 尚、こうなっているのには、それなり以上の裏事情があった。


 米内中佐は、時折、爆音が空から聞こえる度に、空を仰ぎ見るようになっていた。

 それは、これまでの戦場経験から来る反射的な行動だったが、今となっては、自分でも反射行動にも程がある、と自覚している行動だった。


 1942年のこの当時、ドイツ本土における制空権、航空優勢は、英仏日等の連合軍が完全に握っていると言っても、過言では無くなっていた。

 そうしたことから、それこそ最前線で戦っている部隊はともかくとして、やや後方にいる連合軍の部隊は、ドイツ空軍の空襲をほぼ警戒しない事態が起きていたのだ。


 実際、ドイツ空軍にしても、最早、活動しているのは戦闘(爆撃)機部隊だけ、と言っても過言ではない状況に追い込まれていた。

 具体的な機種名でいえば、Bf109、Fw190が昼間は行動し、Bf110が夜間に行動すると言っても過言ではない状況に、ドイツ空軍はあったのだ。


 それ以外の機種、例えば、双発爆撃機や輸送機はどうした、と言われそうだが。

 そんな機種を飛ばすくらいならば、戦闘(爆撃)機を活動させるのが、まだしもドイツ防衛を考えるならばマシ、とドイツ空軍最上層部は判断しているのが現実だった。


 何故にそのような判断に至るのか、と言えば。

 まず第一に、空軍どころか、全ての軍部、いやドイツの民生全体にまで及んでいる燃料不足の現実が挙げられる。

 1942年のこの頃、ドイツ全体は石油燃料不足にあえぐ惨状に陥っていた。


 更に言えば、ドイツ空軍の搭乗員の練度の低下は深刻になる一方でアリ、それなりに操縦経験があれば爆撃機部隊から戦闘機部隊へと転属させてでも、搭乗員の練度を確保しようとする事態に、ドイツ空軍は陥っていたのだ。


 そう言った背景があっては、後方にいる連合軍の地上部隊に対する空爆を行なう等、ぜい沢極まりない行動だ、と言われても仕方のない状況に、ドイツ空軍はあるとしか言いようが無かったのだ。

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