第37章―2
更に言えば、1942年7月当時の英空軍と日本陸海軍航空隊を主力とするドイツ本土等への爆撃は、完全にベルリン周辺を中心とする東ドイツ地域や旧チェコ地域、更には、旧オーストリア地域にまでも向けられる事態にまで至っていたのだ。
そして、ギリシャが連合国側に立って参戦したことから、英空軍の戦略爆撃機部隊の一部が、ギリシャ本土へと展開することになった。
更に、それを背景にした英仏日等の連合国政府の恫喝が、東欧諸国政府に裏から行われたことから。
例えば、ルーマニアでは、駐留していたドイツ軍をルーマニア軍が包囲して、投降を促す事態が引き起こされることになり。
ルーマニアに駐留していたドイツ軍にしても、戦況に鑑みて、ルーマニア政府に投降する事態が引き起こされることになったのだ。
他の東欧諸国、ハンガリーやスロヴァキア等でも、似たような事態が引き起こされることになった。
(尚、既述で言うまでも無いことかもしれないが、旧ユーゴスラヴィア王国内では、それこそ三つ巴の死闘が既に展開されていたこともあり、こういった連合国政府の恫喝は余り効果があったとはいえず、チトー率いるパルチザンが、ひたすら戦った末に、旧ユーゴスラヴィア王国領の解放、新政府樹立を行なう事態が引き起こされることになった)
そういった背景が、ドイツ本国において、更なる資源不足、特に石油不足を引き起こす事態を引き起こすことになり、ドイツの継戦能力を損なうことになっていた。
その為に、それこそ英日を主力とする戦略爆撃機部隊が、ドイツ本土上空を我が物顔に飛び交い、戦略爆撃を遂行することで、更にドイツの継戦能力が損なわれる、悪循環が引き起こされることになった。
そして、そう言った事態が起きているのを、米内久子は、いわゆる肌感覚で知ることになった。
「整備は完璧に為されているようだ。それでは、全機を出撃させる」
「それでは、御武運を祈ります」
今日も今日とて、型通りと言えば、完全に型通りになっているが、ドイツ本土を目指して出撃する日本海軍航空隊、更に言えば、その装備する重爆撃機は、日本の中島飛行機が、苦心惨憺の末にライセンス生産に成功したB17重爆撃機になっている、航空隊の面々に対して、そのようなやり取りを米内久子達は行うことになっていた。
久子は、決して口には出さず、顔にも出さないように努めながら、色々と考えてしまった。
ある意味では、遅すぎて最前線に登場した、としかB17重爆撃機は言いようが無い存在だ。
だが、私たちの祖国、日本の様々な事情からすれば、これが精一杯だったのだ。
そんな忸怩たる想いを抱く一方で、久子はドイツ本土への爆撃行が断行されても、日本陸海軍航空隊の損害が、今ではそれなり以上に局限されているのを、内心の一部では誇りを持って、考えてもいた。
それこそ1年以上前から、日本陸海軍航空隊は、欧州に徐々に展開する事態が生じていた。
そして、欧州に展開当初は、ドイツ空軍が未だに強大だったこともあって、日本陸海軍航空隊は、悪戦苦闘を暫くの間は強いられることになったのだ。
だが、現在の時点、というか、現在から過去を振り返ってみる限り、そういった日英独双方の悪戦苦闘、死闘が、それこそランチェスターの法則を徐々に発動させることになり、結果的にドイツ空軍を大いに損耗させる事態を引き起こしていた。
現在ではドイツ空軍が英日等の航空隊を積極的に迎撃して損耗することは、却ってドイツ空軍の継戦能力を損なっているのではないか、という主張をする者が、ドイツ空軍内で増えているらしい。
そんなドイツ軍の面々の主張は実は正しいのではないか、そこまで久子は考えてしまった。
尚、この後の話で描きますが、実はB17重爆撃機のライセンス生産に成功したものの、色々とトラブルが起きざるを得なかったのです。
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