第36章―8
ともかく、そういった航空優勢が、日本軍とユダヤ人部隊との進撃、基本的に北海沿岸部に沿った進撃を容易にする事態を引き起こすことになった。
(度々の既述になるが)ユダヤ人部隊の蛮行を警戒したことから。
「我々が先鋒に立って、ブレーメンを制することになるとはな」
「仕方ないですよ。ドイツ政府にしても、祖国ドイツの国土防衛に必至ですからね。だからこそ、国民突撃隊を編制したのでしょうが」
「国民突撃隊が、あまり役立っているとは言い難いな」
「それこそ真面な武器が供給されておらず、自分が家から持ち出してきた銃器に合った手持ちの弾薬が尽きたら、そこまでという兵が、それなりどころではなく存在するようですから」
「そういった状況にある国民突撃隊の隊員の士気が高い訳が無いか」
「そもそも練度が、色々な意味でお察しになります」
「確かにな」
(そんな少し長い)やり取りをした後、米内洋六中佐と西住小次郎大尉は、戦禍に遭ったブレーメン市街を改めて見回して、お互いに少し物思いに耽った。
ブレーメン市街を巡る攻防戦は、それなりに熾烈なモノに成らざるを得なかった。
ブレーメンは歴史がある北西ドイツの主要都市の一つである。
大司教座が置かれており、ハンザ同盟に所属していた主要都市の一つでもあった。
更に言えば、市街地には飛行機製造工場や造船所があり、連合国の空軍、航空隊にしてみれば、重要な戦略爆撃の目標の一つにもなっていた。
そういった様々な事情が、ブレーメンで激戦が展開される要因となったのだ。
(他のドイツの主要都市を巡る戦闘でもよくあったことだが)ブレーメン市は、連合軍というか、日本軍等が攻め込もうとする以前から、連合軍の戦略爆撃の目標となっており、それなり以上の損害を結果的に被ることになっていた。
それこそ昼間は戦闘機の護衛が付いた日本陸海軍航空隊の戦略爆撃を警戒し、夜間は英空軍の戦略爆撃を警戒する日々を、ブレーメン市民は送らざるを得ず、完全な安眠の日々は暫く奪われていたのだ。
昼夜を問わずに爆撃がいつ行われるのか、という警戒した日々を送らざるを得なくては、そして、実際に爆撃が行われたことまでがあっては、ブレーメン市民の心身の消耗は多大なものがあった。
そして、その消耗は、実際に爆撃が行われた際には、結果論から言えばだが、消耗した市民が空襲に対処するのを困難にさせて、様々な損害を増大させる事態を引き起こしたのだ。
そういった前段階があったことから、日本軍、海兵隊がブレーメン市を攻撃、制圧しようとするまでに、ブレーメン市街の2割が瓦礫の山となっていて、飛行機製造工場や造船所は活動を停止する事態を引き起こすことになっていた。
それでも、ブレーメンを守り抜こうとするドイツ軍や国民突撃隊の覚悟、士気の高さは、十二分に敵である日本海兵隊からも称賛に値するモノではあったが、現実的な観点から言えば。
ブレーメン市街に対して、日本海兵隊が実際の攻撃を行なう前から、大量の戦術爆撃が浴びせられる事態が引き起こされることになった。
又、ブレーメン市への補給を途絶させようとする、様々な航空攻撃も同時に合わせ行なわれた。
勿論、ドイツ空軍は、そう言った攻撃を阻止しようとしたし、地上部隊は出来る限りの対空射撃を行なうことで、少しでも攻撃を妨害しようとしたが。
航空優勢が失われている中で、こういった懸命の抗戦がどれだけ役立つか、というと極めて哀しい現実を引き起こすとしか、言いようが無かったのだ。
その為に、日本海兵隊が実際にブレーメン市街への地上攻撃を行なう際、ドイツ軍や国民突撃隊は十二分に抗戦できたとは言い難い事態が引き起こされることになった。
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