第36章―5
後、付言するならば、チトー率いるパルチザンが、英仏日等の連合国政府最上層部にしてみれば、最もユーゴスラヴィア王国領内をまとめるのに無難というのも、本来は共産主義者の集まりと言えるパルチザン支援を英仏日等の連合国政府が決断した理由だった。
それこそ共産主義者のパルチザンを叩こう、と叫びながら、その一方で、クロアチア独立国は、民間人のセルビア人やボシュニャク人らを積極的に虐殺し、チェトニクにしても大セルビア主義から、民間人のクロアチア人やボシュニャク人らを虐殺しているのが現実で、ドイツの一般SSでさえも目を背ける惨状がユーゴスラヴィア全土で起きていると言っても過言では無いのが現実だった。
更に言えば、ユーゴスラヴィア王国を下手に分割しては、それこそ周辺諸国が自国の利益を追及して介入する事態が起きて、英仏両国政府がその対応については苦慮する事態が将来的に垣間見えている、という現実もあった。
この辺り、伊政府も暗に同意していて、英仏に味方すると内々では言っている事案ではあったが。
(更に言えば、ユーゴスラヴィア王国の内戦勃発直後は、チェトニクを支持していたのに、手のひら返しにも程がある、と言われそうだが。
伊政府にしても、チェトニクによるクロアチア人等の民間人虐殺の現実から、チェトニクに手を貸す訳にはいかない、と考えるようになっていたのだ)
ともかくユーゴスラヴィア王国の内戦は、凄惨極まりない状況下にあって、速やかに収める必要がある、と欧州の主要国政府は考えるようになっており、又、米日等の政府も賛同しつつあった。
そして、人間として赦されない話になるかもしれないが、ある程度は民族の住む土地を、強制的に分割して、小規模な複数の民族国家を建設させるべき、という意見が無かった訳ではない。
だが、この世界大戦当時の現実からすれば、下手に外部の国、英仏伊等がそうしたらどうか、と介入するようなことをしては、あの土地は自分達のモノだ、部外者が口を出すな、と言って、外部の国までが攻撃される危険を否定できなかったのだ。
いや、むしろ積極的に攻撃しかねないのが現実だった。
実際にユーゴスラヴィア王国領内の安定をもたらすために介入した筈のドイツ、ハンガリー、ブルガリアのみならず、伊までもが、パルチザンのみならず、自分の味方以外のユーゴスラヴィア王国の全ての住民から攻撃を受けている、と言っても過言ではない事態が引き起こされていたのだ。
こういった現実からすれば、チトー率いるパルチザンが、ユーゴスラヴィアを共産主義国家とし、王制を廃止して共和国にもしよう、と叫んでいるのを支持することが、数十年単位で見ればのことになるが、一番、自分達は血を流さずに済み、又、ユーゴスラヴィア王国内の住民の血が流れるのを少なくする方策ではないか、という声が英仏伊等の政府最上層部から挙がるのは、ある意味では当然だった。
(誰しも自国民の血を流したくは無いのだ)
ともかく、ユーゴスラヴィア王国内の住民の流血を控え、更には自国民の血が流れるのも少なくする方策となると、現時点での最良の方策はチトー率いるパルチザン支持ではないか、と英仏伊日等の政府最上層部は考えることになり、伊政府はチェトニク支持を打ち切り、パルチザン支持に寝返る事態が起きた。
そして、先走った話になるが、こういった各国の支持を受けたことから、チトーはユーゴスラヴィアの新国家首班になるのだ。
更に言えば、こういったパルチザン支持の実績から、対ドイツ戦終了後の英政府を中心とする謀略、工作において、多くの共産主義者がスターリンを見限る事態が徐々に起きることにもなったのだ。
本来ならば、話の中で描くべきですが、話の流れが悪くなるので、ここで補足します。
それこそユーゴスラヴィアが戦乱の巷になっては、それこそ数十万人単位の難民が周辺諸国に溢れ出して、それを祖国に還れ、と周辺諸国が追い返しては、無責任な世界輿論から、非人道的行為だ、とフクロにされる現実があるのです。
(実際に史実の1990年代のユーゴ内戦の際に周辺諸国は世界輿論から、内戦から逃れたユーゴの難民を人道的観点から積極的に受け入れろ、とフクロにされたのが現実です。
その一方で、世界輿論は難民によって周辺諸国が被った被害からは目を背けた現実が)
そう言った背景から、この複雑な事態が起きました。
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