第36章―2
英国のBBC放送としてみれば、全く与り知らぬ事態ではあったが、BBC放送は、英軍の外人部隊であるユダヤ人航空隊、それも女性搭乗員から成る部隊が、ベルリンの総統官邸に対する爆撃行を成功させたことについて、
「ヴァルキューレが、ベルリンの総統官邸に対する爆撃を成功させたようなものだ」
という報道を、結果的に行なってしまっていたのだ。
この辺りだが、BBC放送関係者にしてみれば、そんなことは全く知らなかったことだ、と言い張る事態ではあったが。
反ヒトラーのドイツ政府、軍関係者の多くが、深読みし過ぎる事態を結果的に引き起こしたのだ。
反ヒトラーのドイツ政府、軍関係者の多くが、ヒトラー暗殺成功に伴うドイツ政府クーデター計画について、英仏日等の連合国政府は熟知している。
更に言えば、このクーデター計画を、ヒトラー総統率いるドイツ政府に暗に知らせるようなことを、英仏日等の連合国政府は行いもしたのだ。
これは、英仏日等の連合国政府が、今更、ドイツ政府、軍関係者の一部が、実は反ヒトラー、反ナチス主義者だと言っても、これまでヒトラーやナチス党に加担していたことから、情状酌量等の余地は皆無で、ヒトラーやナチス党関係者と同様に処断する、と言っているのではないか。
其処まで、多くの反ヒトラーのドイツ政府、軍関係者が勘繰る事態を引き起こしたのだ。
そして、それなりのカバーを付した上で、反ヒトラー、反ナチスのドイツ政府、軍関係者が、英仏日等の政府、軍関係者と予め通謀した上で、自分や家族の身の安全をこれまでにも図ろうとしていたのだが。
英仏日等の連合国政府、軍関係者にしてみれば、心外極まりないことながら。
ドイツ政府、軍関係者にしてみれば、これまでの連合国政府、軍関係者との事情、やり取りから、英仏日等の連合国政府、軍関係者は、ドイツ政府、軍関係者を断じて許すつもりはなく、寛大なことを口先で言っているだけで、内心は違うと多くが憶測する事態が起きてしまったのだ。
(実際問題というか、それこそ転生者のカナリス提督でさえ、史実では全く起きなかったこと、更には、これまでに自分の持っている転生前知識とは違った事態が、余りにも起きていたことから。
BBC放送の報道は、「ヴァルキューレ作戦」を英仏日等の連合国政府、軍は把握しているのを、暗に示しています。
更に言えば、英仏日等の連合国政府、軍は、「ヴァルキューレ作戦」が仮に成功しても、それによるドイツ軍の弱体化を悪用して、ドイツ政府に対して更なる悪条件を突きつけるだけでしょう。
という部下達の情報分析を、カナリス提督が黙って受け入れる事態を引き起こしてしまったのだ)
ともかく、そうした英仏日等の連合国政府、軍の動きを受けたドイツ政府、軍内部の更なる動きが、何とも皮肉なことに、ドイツ政府、軍関係者の殆どが、史実と異なって反ヒトラー、反ナチスの行動を起こさない事態を、結果的に引き起こすことになった。
更に言えば、このカナリス提督の「ヴァルキューレ作戦」に対する行動が、(この世界では)カナリス提督が、熱狂的なナチス支持者で、反ユダヤ主義者、ホロコースト支持者だったという悪名が、21世紀以降にまで遺される最大の要因ともなった。
ドイツ軍関係者の多くが、カナリス提督について、次のような断罪を下している。
「中独合作を推進し、スペイン内戦でフランコ将軍を見捨てる等、ヒトラー総統の腰巾着としか、言いようが無い行動を執り続けていた。本人はナチス党員になっていないが、それさえも偽装としか、自分には考えられない。ドイツ軍の最大の恥といえる人物だ」
そこまでカナリス提督は、叩かれることになったのだ。
転生前の知識は無双、と一般的にされますが、それが転生によって改変された歴史世界で常に役立つか、というと、却って逆に働くことも稀ではない、と私は考えます。
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