第35章―24
そんな裏事情(?)があったのだが、そんなことを公言できないのは、カテリーナ・メンデス大尉にしても、米内久子にしても、お互いに察していると言うか、分かり合っていることだった。
だから、久子は当たり障りのないことを、小園安名中佐らに言って、お茶を濁すことになった。
又、カテリーナにしても、久子から励まされたとだけ、事実上は言って、原隊に復帰していった。
更に久子らにしても、ブルターニュ半島のブレスト近郊の基地に、改めて向かう事態が起きたのだ。
そして、お互いに本来の所属に戻った後のことを、まずは描くならば。
カテリーナは、陰では部下の死を悼み続けたが、表面上は部下を始めとする同胞、ユダヤ人の仇を討たねば、と公言しては、周囲の面々を鼓舞して、改めて最前線で戦おうとする事態が起きることになった。
とはいえ、それは以前とは異なる事態が生じるのは、止むを得ないことだった。
例えば、カテリーナらが、ベルリンへの爆撃行に成功したことは、P38戦闘機の評価を急上昇させることに繋がって、まずはユダヤ人航空隊が保有する軍用機が相次いで、P38戦闘機へと改編される事態を引き起こすことになったのだ。
(更に言えば、それに伴って、これまでユダヤ人航空隊が保有していたP39戦闘機や99式襲撃機は最前線での任務から、徐々に第二線へ、更には後方任務へと事実上は回されていくことになった)
そして、ユダヤ人航空隊と言えば、P38戦闘機を装備している、というイメージが、それこそ後々にまで広まる発端になっていくのだが。
それは余りにも先走った話になる。
又、カテリーナ自身が、ある程度は部下との関係を見直すことになった。
ベルリンへの爆撃行に随行した自分の直属の部下3人について、優秀だし、それに他の部隊との腕の平均化を図る必要がある、といって上官と協議して、自分の部下から他の小隊に転属させて、新たな部下を迎え入れたのだ。
といっても、同じ中隊内ではあるのだが、少なくとも密接過ぎる繋がりを続けるのは、それこそ親が子離れしないようなもので、上官として良くないし、それに部下が戦死した際に、再び自分が心を病みかねない、とカテリーナ自身が考えたのだ。
(尚、この転属は旧来の部下から猛反発を受けたが、貴方達も成長する必要があるという理屈と、上官としての権威で、カテリーナはねじ伏せることになった)
そして、カテリーナは、原隊での前線任務に復帰することになった。
一方の米内久子だが。
ブルターニュ半島のブレスト近郊の基地に戻った久子は、改めて目を見張りながら呟いた。
「これがB17重爆撃機」
久子は、自分が実用の軍用機としては初めて整備した97式飛行艇を思い起こした。
あれも4発機だったが、飛行艇だった。
これは、自分が整備する初めての4発の陸上機になる。
更に言えば、様々な面で97式飛行艇に優っている。
エンジンは排気タービンを装備しており、防弾も充実していて、最初期の頃は自衛用の機関銃も少なかったと聞くが、自分達が整備するのは改良型(史実で言えば、B17E)を、中島飛行機がライセンス生産したモノとのことで、それなり以上の機関銃を装備している。
これまで、自分達はB23重爆撃機を装備していたが、このB17重爆撃機ならば、それ以上の戦果を挙げることが可能になるのではないだろうか。
そんなことを考える一方で、それなりに経験を積んできた整備兵としては、どうにも冷めた考えも久子は浮かんでならなかった。
4発機ということは、エンジンも4基あるということで、出撃の整備が大変になることでもある。
更に日本でライセンス生産しているとは、色々とトラブルが多発しそうね。
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