第30章―5
さて、カテリーナとカルロ、メンデス家の姉弟の会話だが、全く根も葉も無い話では無かった。
カナリス提督の下には、複数の情報源から怪しい話としてだが、その情報が届いていた。
「スペインのフランコ将軍が再起を果たそうとしているか。更に英仏日等も密かに加担していると」
カナリス提督は、その情報を分析した報告書を読みながら、(内心で)独り言を言った。
カナリス提督は、祖国ドイツの将来を昏く考えていた。
皮肉なことに自分が歴史に介入したことで、祖国は3年も早く敗北を迎えようとしている。
更に言えば、独ソ戦を避けられたのは良かったが、ソ連の大地に投じられたSS等が、フランスやベネルクス三国に投じられた結果、ユダヤ人が西欧で大量に殺戮される事態が起きてしまった。
そうなった一因だが、表向きは英領パレスチナ出身の外人部隊としてユダヤ人部隊が奮戦し、ドイツ軍に多大な損害を与えたことが、報復としてユダヤ人狩りを過熱させたとか。
その一方で、第二次世界大戦の終結が、それなりに見えつつある中、日英を中心に連合軍内では、ユダヤ人部隊を今後どうするのか、が話し合われているようだ。
下手に彼らをパレスチナに送り込んでは、歴戦のベテランとなった彼ら彼女らのことだ。
それこそ一時的には、アラブ諸国の軍隊を一蹴する事態が起きかねない。
そうなったら、アラブ諸国は報復を叫ぶことになり、最後にはパレスチナの地は血で血を洗い、ユダヤ人か、アラブ人か、どちらかがパレスチナの地から絶滅するまで戦争を続ける事態が起きるのではないか。
そう日英等の連合国政府最上層部は懸念を深めているらしい。
そして、自分も日英等の連合国政府最上層部の懸念を笑い飛ばせない。
実際に、西欧の地で起きたのは、そういったことだ。
反ユダヤの空気が予てから漂っていて、その空気に煽られた結果、それこそ隣人までがユダヤ人に刃を向ける事態が起きてしまったのだ。
その被害を受けたユダヤ人が、パレスチナにおいてアラブ人に向ける刃を緩めるだろうか。
更にその被害を受けたアラブ人は、イスラム教徒としてジハード(聖戦)を叫び、ユダヤ人の絶滅を図るのではないだろうか。
その一方で、日英等はソ連の態度に不快の念を高めている。
バルト三国やポーランド東部等、ソ連は侵略の果実を貪婪に貪っている。
この際、ソ連を挑発しよう、そして不当な侵略行為をソ連にさせることで、戦争に倦みつつある自国民を戦争に駆り立ててはどうか。
そんなことを、日英政府の最上層部等は考えているらしい。
そうしたことから、目を付けられたのがスペインだ。
スペインは今や共産党政府による一党独裁体制が確立したと言っても過言ではない。
表向きは民主主義の多党制国家だが、共産党以外の政党は全て共産党の指導を受け入れる、いわゆるヘゲモニー政党国家に陥っており、ソ連の衛星国家になっている。
そして、こういった状況に反政府を叫ぶスペインの国民の一部は、スペイン内戦で敗れたフランコ将軍を英雄視して、祖国への帰還を待望している。
更に言えば、スペインの植民地の指導者層の間では、昨今の世界大戦の流れから、内々にフランコ将軍を支持する事態が起きつつあるとか。
だが、スペイン内戦で敗れて、イタリアで亡命生活を送っているフランコ将軍には手足となる将兵がいないと言っても過言では無く、スペインをフランコ将軍が取り返すのは困難な状況だ。
こうしたことから、英国のユダヤ人部隊をフランコ将軍に提供して、スペイン内戦再びという事態を引き起こし、ソ連政府を挑発しようと日英等の政府最上層部は考えているらしい。
カナリス提督は、日英等の謀略に戦慄する想いをしてならなかった。
これで、第3部を終えて、一旦は完結します。
此れまでにも散々に叩かれていますが、作者の私の精神安定の為ということで。
平に緩く見て下さるように、お願いする次第です。
そして、今後ですが、この3月上旬以降に、第4部を投稿して、連載再開と考えています。
第4部では、ドイツ政府崩壊等を描いて、スペイン問題の解決を匂わせる(?)事態が起きるまでを描く予定ですが、予定は未定、ということを平に現時点ではお願いします。
そんな状況にありますが、現時点では第3部完結ということで。
平に緩く見て下さい。
尚、次の部の第4部以降については、2026年3月上旬以降に投稿を開始する予定です。




