第30章―3
余りにも重い話を続けるのはどうか、と考えるので。
少なからず違う話を、差し挟んで描くことにしました。
そんな事態が、欧州にいる両親(?)に起きていること等、日本本国内に当時は居る米内仁や藤子にしてみれば、どうでもいいことと言っては過言だが、率直に言えば全く興味がないことで、自分達の今後のことが、遥かに重要極まりないこととしか、言いようが無かった。
米内仁は、先日、上級生である菅野直らの卒業式を見送っており、いよいよ海軍兵学校の最上級生になって、一年後には自分達も欧州に派遣されるだろう、という現実を、徐々に重く考えつつあった。
「本当に後1年で、この世界大戦が完全に終われば良いのだが、それは無理だろうな」
それが仁の(内心での)口癖に、完全に最近はなりつつあった。
実際、仁が考える限り、ドイツが英仏日等からの無条件降伏勧告を受け入れても、世界に完全な平和が訪れることはないだろう。
ドイツが無条件降伏したら、今度はソ連との間で、英仏日等が戦う事態が起きるだろうな。
ソ連は赤軍を見せ金として、東欧や中近東に対して軍事的恫喝を行ないつつあり、実際にバルト三国やポーランド東部を併合してしまった。
(更に言えば、お手盛りの住民投票を行い、住民の殆どがソ連邦への加入、併合を大歓迎した、という宣伝を垂れ流す事態が起きている)
このことに英日等は公然と不快感を示し、対ソ戦も辞さないとの強硬姿勢を示しつつあるとか。
仁は、将来を何とも昏く考えざるを得なかった。
その一方で、仁の義妹(?)の藤子はどのようなことを、その頃に考えていたのか、というと。
「お兄様が戦死されたと聞きました。心からお悔やみを申し上げます」
「そんな畏まったことを言わないで。覚悟は決めていたし」
藤子は、同級生とそんなやり取りをしていた。
(尚、同級生は覚悟は決めていた、と言いながら、涙を零して泣いている有様だった)
「それでね、兄は兄嫁と出征前に関係を持っていたことから、私からすれば甥か姪が間もなく産まれるの。私は兄嫁と協力して、甥か姪を育てて、我が家を護るつもりよ」
藤子の同級生は、愛国少女の一人として、そんなことを藤子に言って前を向いた。
「それは素晴らしいですね」
藤子は、同級生に言って、それはそれで話は終わったが。
藤子は改めて考えた。
仁さんと自分が結婚する前に、仁さんは戦場に行ってしまう。
そして、仁さんが戦死したら、仁さんの子が米内家を継げなくなってしまう。
仁さんが戦死した場合に備えて、仁さんの子を自分が産み育てるのが、許嫁としての務めでは。
実際に同級生の兄嫁は、そう考えて行動したではないか。
祖国日本を愛して、更に米内家を護ろうとするならば、許嫁として、将来の米内家の嫁として、自分は仁さんが出征する前に、仁さんの子を身籠っておくべきではないだろうか。
藤子は、まだ女学生の身に過ぎないのに、完全に暴走している、と傍から見れば思われそうなことを、想わず考えていた。
そして、藤子はその考えを、完全に隠し通せている、と考えていたのだが。
実は気づいていた人がいた。
小林はるは、孫の藤子の最近の挙動を見る度に考えざるを得なかった。
藤子は、本当に私の末娘の千代に、悪い意味で似て育った気がする。
血は水よりも濃い、と言われるが、その顕現ではないだろうか。
千代は悪い意味で自分に誇りを持ち過ぎていて、自分の想う通りに相手も動いてくれると考えて行動した結果として、藤子を産むことになり、更には自分の思い通りに成らないことに絶望して自裁した。
藤子も似たことをやらかす気がして、自分は仕方がない。
藤子は自らの義兄の仁と、結婚前に自分から関係を持ってしまう気がする。
とはいえ、それを下手に押し止めようとすると、完全に藪蛇になる気が。
はるは悩むしか無かった。
御感想等をお待ちしています。




