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【ニキ】003話:~新スキル【起死回生】~

 ボス部屋に突入した瞬間、僕の世界は固定され視界はブラウン色に染まった。

 俯瞰的視点から見える僕の現状。


 右からの視点で斧を持ったデカいゴブリンが僕の頭にそれを振り下ろしている姿が。


 左の視点から斧を持って振るうその腕の筋骨隆々とした丸太のような太さが。


 上からの視点でデカいゴブリン……ドデカゴブリンと呼ぶが、ドデカゴブリンが一足飛びで僕まで接近したことが、ホール型の戦場のど真ん中についた足跡の窪みでわかる。


 僕の顔面ドアップでそのなにもわからぬアホ面を晒して相手の動きを視認すらできてないことが一目で……いや僕のアホ面はいいんだよ、なにも見えてないのは僕自身が一番理解してるんだから!


 顔面ドアップをコメント付きの配信画面視点でお送りされるのはもうなんも言わん。

 コメントで「平和そうな顔してるな」とか「これがヤ〇チャ視点顔か」とか色々言われてるが僕はなにも言いませんよ!


 そうして死因を完璧に把握した僕は戻ってきた。

 場所はボス部屋の扉の前。

 この先に進めばまたあの攻撃が飛んでくるのだろうか?

 いやでも、来るとわかっていればシミターを構えることだってできるはず。

 よし、もう1回行ってみよう。


 レッツゴー!


 ~~♪ ~~~~♪ ──to be continued……


「だ~めだこりゃ」


 僕はシミターを片手に悪態を吐いた。



〈コメント〉

:ヤ〇チャ視点である限りどの道無理じゃないか?

:今なんかドデカゴブリンの初期位置扉の目の前になってたぞ?

:完全に龍郎ニキがくるの待ち構えてて草

:そのうち斧を振り上げた体勢で待ち構えるようになるんじゃないか?

:これはコンティニューするくらいで攻略できるのか!?

:龍郎ニキ、これは次回に続くの?



 暇なのでぶんぶんシミターを振り回して型を確かめつつ頭を捻る。

 なお型とか言ったけど要するにただゴブリンとの戦いで磨いてきた我流である。


 先程の挑戦、僕はシミターを頭上に掲げて咄嗟に防御の姿勢をとった。

 結果、そのまま叩き潰された。

 そりゃあそうだよ、当たり前じゃんか、あんなのズルだって。

 ん、今なんかブーメラン飛んでったな……いや気のせいだ。


 とにかくだ。

 今の僕じゃあのドデカゴブリンに勝てないことがわかった。

 ならどうするか?

 鍛えるしかないじゃんよ。

 レッツゴー!


 ~~♪ ~~~~♪ ──to be continued……

 ~~♪ ~~~~♪ ──to be continued……

 ~~♪ ~~~~♪ ──to be continued……


「だぁぁぁぁぁっ!! 勝てないぃぃぃぃ!!」


 というか見えない!

 まじでドデカゴブリンが僕を殺す瞬間どう動いていたのか、それを知るのは視界がブラウン色になってからだ。


 ここで僕はようやく気付いた。

 今の僕が挑むべきはドデカゴブリンではなかったのではないかと。

 もっと鍛えるに相応しい相手がいるのではないかと。



〈コメント〉

:むしろなんであの展開からドデカゴブリンに行った?

:その事実に気付くまでにもう300回は死んでるんですよあなた?

:薄々、もしやとは思ってたが、さては龍郎ニキあほの子だな?ww

:いやでもちょっとずつ手応え増してるって! 反応よくなってるよマジで!

:本当かぁ?



 視界で当たり前のように僕の心の声と会話するようになった視聴者たちの声が映る。

 いや、500回も挑戦しないうちに諦めるのはちょっと違うだろ、諦めるってそんな簡単にしていいことじゃないはずだと僕は思う。

 それを僕はあの病院生活で「動けるうちにあれやっておきたかったなー」とか「あそこであの夢を追いかけてたら事故の運命とは違う道を進んでたかも」とかよく思ったものだ。

 まぁ今となってはどうでもいいんだが。


 要するに!


「あと300回は挑戦する。次の手に逃げるのはそれからだ」


 僕はシミターを持ち直してまたボス部屋の扉を押し開いた。



〈コメント〉

:単純なんだけどなんかかっこいい(笑)

:龍郎ニキの生き方はそれでいいと思う!

:地味に500回の挑戦100回オーバーしてるのは根性から? それとも計算ミスから?

:泣けるぜ龍郎ニキ。俺もあんたを見て夢を追う覚悟を決めたぜ!

:ねぇなんでここの人たち当たり前に無言の龍郎ニキと会話してるの? 実は適合者なの?



 視聴者たちの応援の声。

 そうだ、諦めないってのはこういうことだろ。

 挑み続けるってのは見られ続けるってことだ。

 だから僕は──!


 ~~♪ ~~~~♪ ──to be continued……

 ~~♪ ~~~~♪ ──to be continued……

 ~~♪ ~~~~♪ ──to be continued……


 ──600回目の死を迎えました!

 全然見えねぇよ。

 もう無理だよ。

 これもう鍛えるってレベルじゃねぇぞぉ!

 人間の領域超越しないと勝てる勝てないの土台に入れないって!


 迷宮鬼畜すぎ~。


 扉の前で大の字になって天井を見上げる僕。

 ここまでようやく辿り着けたんだから、時間がかかっても次の階層へは進みたい。

 けどそれをここまでのゴブリンたちと戦うくらいで少年漫画の如き覚醒を果たせるのか? という点には疑問を抱く。


 もっと別の方向性、それこそこれまで貯めた迷宮ポイントを使って女神ちゃんねるで何か買えないか……とぽちぽち探す。

 もともと日々の暮らしで食事とか清潔化とかするだけなら迷宮ポイントは余ってたんだ。

 この女神ちゃんねる、できることが多くて細かいところまで見れてなかったんだけど──お?


 あった。


 女神ちゃんねるに並ぶ夥しいい量の購入可能品のラインナップ。

 その中に燦然と輝く、今の僕が求めてやまないものが、1つ。



 『窮地からの生還:累計10000回突破を確認』

 『購入可能スキルに【起死回生】を解放します』



 新たな力。

 新たなスキル。

 【固有】とは違う、解放条件を満たせば誰でも獲得できるものらしいけど、僕の目に映るその【起死回生】の効果は絶大だった。



 スキル:【起死回生】

 効果 :窮地を生還した場合、その窮地を乗り越えるまで力に大幅な倍率がかかる。重複上限はない。



 うそやん、まるで僕のために用意されたかのようなスキルだ。

 女神さま大好き!

 ちゅっちゅっ!


 ~~♪ ~~~~♪ ──to be continued……


 僕の死因図鑑に「女神の嫌悪で殺された」が追加された。

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