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アルスレア  作者: ゆきつき
第六章 レギーナ・ペクニア

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王都への道すがら

フルーヴェルを出てしばらくすると、背後の喧騒はゆっくりと遠ざかり、代わりに風が草を撫でる音と、木々の間を渡る鳥の囀りが静かに広がっていった。


ミーオはロイの頭を離れ、枝葉の間を器用に飛び回っていた。葉陰へ身を隠しては枝から枝へと軽やかに移り、時折ぱた、と小さく羽を鳴らす。


石畳は途切れることなく続き、街道は変わらず木々に挟まれたまま緩やかに先へと伸びている。


街道の先には、王都へ向かう者やフルーヴェルへ戻る者の姿がぽつぽつと見える。荷を背負った商人らしき男や、荷車を引く一団がゆっくりと進み、すれ違う者たちは軽く会釈を交わし、静かに通り過ぎていく。


ロイは空を見上げ、大きく息を吐く。


「ここから王都まであとどのくらいかかるんだっけ?」


前を歩くサグロスは、振り返りもせずに軽く答えた。


「四、五日ってところだな」


「まだまだ遠いなぁ……」


思わず漏れた弱音に、隣を歩くライナがこちらを見て口を開いた。


「ここから先はなだらかな丘陵地帯が続いているって聞いたけど。水源も多いし、食料にも困らない。四、五日歩くだけなら簡単でしょ?」


あまりにも当然のように言われて、ロイは一瞬言葉に詰まり、目を伏せる。


「……ごめん。甘えたこと言って……」


「さっすが砂漠の民。サバイバル慣れしてるな」


前方から飛んできた軽口に、ライナの眉がぴくりと動いた。


「バカにしてる?」


「いちいち突っかかるなよ。逞しいって思っただけだ」


ライナは小さく鼻を鳴らし、それ以上は何も返さなかった。


「まぁ、ロイくんの言うことも一理あるな」


「えっ? サグロスわかってくれるの?」


ロイは思わず顔を上げた。


「フルーヴェルじゃ結局ゆっくりなんてできなかったからな。さすがに疲れも溜まってきた」


その言葉に、ロイは何度も頷く。確かに、あの街でも結局ゆっくり休めた気はしなかった。


だがライナはきっぱりと言い切った。


「そんなことを言っても、王都へ行くにはこのまま街道を歩いて行くしかないでしょ」


「それがそういうわけでもないんだなー」


気の抜けた声だった。


ロイとライナが同時に怪訝そうな顔をする。

サグロスは足を止めることなく、ヒラヒラと片手を振る。


「俺たちは街の安泰に貢献したわけだ。ご褒美があってもいいじゃん」


「もったいぶってないでさっさと吐きなさいよ」


ライナの苛立った声にも、サグロスは笑みを崩さない。


「焦るなって。このまま進めばわかる」


「どういうこと?」


ロイが首をかしげる。


「何を企んでいるの?」


ライナの視線は鋭い。


「ほら、さっさと行くぞー」


サグロスはそれだけ言うと、歩調を崩さず先へ進んでいく。

ロイは困ったように頭を掻き、ライナを見る。


「……なにかあるのかな?」


「さぁ?」


ライナはサグロスから視線を外さないまま、そっけなく答えた。


前を行く男の足取りは妙に軽い。どこか楽しげで、それがかえって引っかかった。


ロイとライナは小さくため息をつき、その背中を追った。


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