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アルスレア  作者: ゆきつき
第四章 ラグノアの森

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夜明け前の内緒話


サグロスはふと目を覚ました。


木にもたれていた背中の感触と、ひんやりとした森の空気に意識が引き戻される。


目を覆うように下ろしていたヘアバンドをゆっくり持ち上げ、周囲を確かめると、まだ辺りは薄暗く、地面に置いた灯りはすでに消えていた。


月明かりだけが、木々の隙間から中に差し込んでいる。

揺れる影が、呼吸するように木の幹をなぞった。


横から、少しくぐもった寝息が聞こえてくる。


視線を向けると、地面に寝転がるロイの頭に、ミーオが体を伸ばして覆いかぶさるようにしていた。

小さな体がぴたりと密着し、まるでお気に入りの場所を確保しているかのようだ。


ロイはその重みのせいか、わずかに顔をしかめている。

だが目を覚ます様子はなく、結局そのまま眠り続けていた。


サグロスはその様子を横目に見ながら、幹の外で森に目を向けるレイドのもとへ歩み寄った。


「見張りは、あいつが最初にやったのか?」


声を潜めて問いかけると、レイドは視線だけをこちらに向けた。


「いや。熟睡しているから、そのまま寝かせている。相当疲れていたようだ」


「甘いなー。叩き起こせばいいのに」


軽く言ってみせるサグロスに、レイドはすぐには返さなかった。


その沈黙を受け、サグロスは腰を下ろすと、後ろに手をついて空を仰いだ。


レイドは静かに口を開いた。


「……話からするに、半月ほど前までは、ただの子供として過ごしていたんだ」


少し間を置き、声を落として続ける。


「その後に、魔物との戦闘、漂流、危険な森に迷い込むなどしていたら、だいぶ疲れも溜まるだろう」


「そうは言ってもな」


サグロスは空を仰いだまま鼻で笑った。


「あいつが自分で選んだことだ。甘やかすべきじゃねぇと思うけど」


レイドは何も言わず、再び森へ視線を戻した。


少しの沈黙の後、サグロスが口を開く。


「魔物との戦闘で後回しになっちまったが……あの村で、依頼の物は見つかったか?」


「こちらは何も」


レイドは即座に答える。


「そちらはどうだった?」


「こっちも何もなし。見つかったのは、あのチビドラゴンだけだ」


サグロスは小さく息を吐いた。


「無駄足だったな」


「……お前は、あの村についてどう見ている?」


レイドが問いかける。


「噂通りだったか?」


サグロスは片膝を立て、そこに顔を預けるようにして少し考えた。


「噂通りに見えなくもないが……違和感もあったな」


言葉を選ぶように続ける。


「白でも黒でもなく、グレーって感じだ」


「俺も同じような意見だ」


レイドは小さく頷いた。


「そう伝えておく」


「頼むぜ」


二人の会話がそこで途切れる。


耳を澄ますと、森の奥から微かな葉ずれの音と、夜行性の虫の羽音が重なって聞こえてきた。


月明かりに照らされた空洞の中で、時間だけがゆっくりと流れていく。


夜の森の音だけが、その場を静かに満たしていた。


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