表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルスレア  作者: ゆきつき
第四章 ラグノアの森

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/52

森の夕暮れ


魔物との戦闘の余韻がまだ体に残る中、三人と一匹は寂れた村を後にした。


太陽はすでに森の向こうに傾き、辺りには柔らかな夕暮れの気配が満ちている。


「今日中に森を抜けるのは無理だな。どこか休める場所を探すか」

レイドが声をかけると、サグロスは頭の後ろで手を組んだ。


「もう魔物との戦闘はやりたくねー。疲れたわ」


「場所を探すついでに、食べ物も探すか」


三人は森の中を進む。

昼間よりも影の増えた足元では下草がしっとりと湿り、花の色も夕暮れの影に溶け、どこかくすんで見えた。


ロイの頭にはミーオがしがみついていて、少し高い位置からの景色を楽しんでいる。

時折、枝や葉に鼻先をくんくんと寄せ、興味津々な様子だ。


道中、ロイは目についた食べ物を指差した。


木に生えるキノコ、森の中に流れる小さな川の魚、頭上を彩る色鮮やかな果実。


だが――


「そのキノコは毒あるぞ。食べたら笑いが止まらなくなる」

「そうなんですか!?」


「その魚の尻尾にも毒あるぞ。触ると涙が止まらなくなる。面白いけどな」

サグロスは肩を揺らして笑った。


「えっ……」


「その果実食べたら、にゃんにゃんとしか言えなくなるぞー。女の子なら可愛いけど、男ならやばいな」

「……」


「この森、変な毒物多くないですかぁ!?」


「ラグノアの森は毒の森とも言われている。

素人が迷い込むと、無事に帰るのは至難の業だ。いろんな意味で」

レイドの言葉に、ロイは口を開けて固まった。


「お前、俺らと会えてラッキーだったな」

サグロスはニヤリと笑う。

「ごもっともです……」


夜の闇が森を包む頃、三人は奇妙な形の木を見つけた。

根元はそれぞれ独立しているが、上の方で幾本もの幹が絡み合い、一つの大きな影を作っている。

その足元には、人が身を寄せて休めるほどの空間ができていた。


「今日はここで休むか」


「周りも暗くなったし、これ以上ウロウロするのは無理だろ」

そう言うと、サグロスはさっさと中に入っていった。


腰袋から何かを取り出すと、淡い光が灯り、空間を柔らかく照らした。


「なんですか?それ」

「灯りだ。木片に白色のコルディアをつけただけの簡易的なもの」


「サグロスって青い光だったから、水属性ですよね?白色のコルディアも使えるんですか?」


「別に自分の属性と色を合わせる必要はないぞ。

こういう生活用のコルディアは、用途に合わせた色の方が使いやすい。灯りなら白、暖を取りたいなら赤。

ただ、戦闘用なら話は別だ。自分の属性と同じ色の方が発動がしやすかったり、威力が上がったりする」


「そうなんですか」

「ほら、そんなところに突っ立ってないで中入れよ。腹減ったわ」

サグロスは言いながら灯りを地面に置いた。


三人は灯りの周りに座り、集めた食べ物を並べた。

森で見つかる食べ物は毒のあるものばかりで、安全なものはごく僅かだった。


「あまり食べ物見つけられなかったですね」

「この森で現地調達は難しい。入る前に準備を入念にするのが普通だ」

「……そうですね」


ロイは視線を落とした。

何も知らず、何の備えもなく森に入った自分が、今さらになって情けなくなる。


レイドは腰袋から小さな包みを取り出し、中身をロイに差し出した。


「ほら、これを食え。干し肉だ。腹の足しに少しはなるだろう」

「ありがとうございます」

ロイは干し肉を受け取った。


サグロスは会話に加わらず、腰袋から取り出した自分の携帯食を静かに食べる。

淡い灯りに照らされる影が、森の静けさとともに揺れた。


そのとき、ロイの頭の上にいたミーオがぴょんと飛び降り、レイドの方に駆け寄る。


「? お前も欲しいのか?」

「ぴゅお!」


仕方ない、とでも言うように、レイドは干し肉を少しちぎって差し出した。

ミーオはそれを受け取ると、美味しそうに口にする。

ペロリと食べ終わると、まだ足りないらしく、胡座をかいたレイドの足に乗り、手をペチペチ叩いて催促する。


「こら、待て」


サグロスは影の中でニヤリと口元を歪めた。

「懐かれてるなー、レイドォ?」


その声に気付いたミーオは、サグロスをじっと見つめる。


「何だよ?」


「びゅえぇぇ」

ミーオは小さな舌を出し、あっかんべーをするように顔を歪めた。


「……っ、こんのクソチビドラゴンっ」

ロイはギョッとし、ミーオとサグロスを交互に見た。


「お前はこの短時間に一体何をしたんだ……」

「何もしてねーよ。ただ、村で追いかけただけだろ」

「それを根に持ってるんじゃないのか?」

「けっ! どーでもいいわ。俺はもう寝る。交代の時間になったら起こせ」


サグロスは木にもたれ、ヘアバンドをアイマスク代わりに目に下ろすと、そのまま静かになった。


「お前も食事が済んだなら、休め。夜の見張りは交代でやる。まず俺だ」

「分かりました。ありがとうございます」


その横で、ミーオはそっと身を伸ばし干し肉を狙った。

だが、レイドは視線を向けることもなく、干し肉を持った手をわずかにずらす。


ミーオの前脚は空を切り、その後小さくもぞもぞと動いた。

悔しそうなその姿に、森の闇の中でもほのかな温かさが漂った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ