逃げ場のない問い
ロイはアルスレアを構えたまま、倒れた魔物を見つめる。
動かない。
次の瞬間、レイドが相手をしていたもう一体の魔物が弾かれたように身を翻し、通りを越えて森の奥へと消えていった。
廃村の通りに、静けさが落ちる。
――終わった。
張り詰めていた空気が、ふっと緩む。
ロイは浅く息を吐いた。指先に残る魔力の熱が、まだ微かに脈打っている。
「さっきは助かったぜ。ありがとな」
サグロスはロイの方へ歩み寄りながら、軽い調子で言った。
「い、いえ……こちらこそ、助かりました」
ロイはそう返しながら、アルスレアへ流していた魔力を止めた。
蒼白の光がすっと薄れ、白銀の刃は形を失っていく。
金属が溶けるような感覚とともに、武器化が解除された。
サグロスは視線を地面へ落とし、魔物の背に刺さったままの槍へ足を向けた。
次の瞬間、サグロスの手は槍ではなく、ロイの腕を掴んでいた。
「――っ!?」
ぐい、と無理な方向へ捻り上げられる。
「痛っ!」
鋭い痛みが走り、思わず握っていた拳がほどけた。
アルスレアが、乾いた音を立てて地面に落ち、
小さく跳ねて転がった。
「さて」
サグロスの声から、先ほどまでの軽さが消えていた。
「質問の続きといこうか。軍属でもない田舎者のお前が――
なぜ、高価なコルディアを持っている。答えろ」
至近距離。
逃げ場のない体勢。
(そっ、そうだ……俺、この人に問い詰められてたんだった……戦いに夢中になっていて、すっかり忘れてた)
一気に現実に引き戻され、顔から血の気が引いていくのが自分でも分かった。
そのとき――
「サグロス! そのコルディアは……なんだ?」
驚きを隠せないレイドの声が、割って入ってきた。
二人のすぐそばまで歩み寄り、視線を地面へ向けている。
「あ? コルディアがどうした?」
サグロスはロイの腕を捻り上げたまま、足元へ視線を落とした。
地面の上に転がるコルディア。
小さな結晶に宿る色は、見慣れた単色ではない。
淡く、しかし確かに――七色だった。
「……! 七色……だと!?」
サグロスの目が、見開かれた。




