ー3ー 頼りない二人
そのやり取りの後、広場の準備はさらに進んでいった。木槌の音や笑い声が響き、屋台の布が風にひらめき、色とりどりの花飾りが午後の光に揺れる。祭りの始まりが近づいているのを感じさせる、活気に満ちたひとときだった。
アンは手を止め、カイランに声をかけた。
「カイランさん、もう終わりそうですけど……まだ手伝うことありますか?」
カイランは顎に手を当て、少し思い出すように首を傾げる。
「そうだな……そういえばマリオンが、屋台用のとうもろこしを畑に取りに行ったまま戻ってきてないんだ。ちょっと見に行ってきてくれないか?」
「……そ、それなら、朝遅れてきたんだからロイとビットが行ってきなさいよ」
アンがすかさず二人に振ると、ロイは「え?」と目を瞬かせ、ビットも思わず声をあげた。
「ええー!? なんで俺たちが!」
ロイは少し困ったように頭をかき、「うーん……マリオンさんの畑がどこにあるかわからないな。ビット、知ってる?」と振る。
「……俺も知らないな」ビットはばつの悪そうに答えた。
カイランは苦笑しながらも優しく言った。
「なら、アンちゃんも一緒に行ってくれないか?」
「ちょっと待ってください!私まで行くんですか?」アンの声が広場に響き、近くの子どもたちがクスクス笑う。
「頼むよ」カイランは軽く手を挙げる。
アンは渋々と息を吐き、肩を落として視線をそらしながら「……はい」と答えた。その仕草に、ビットは思わずにやりと笑う。
「ありがとう、アンちゃん!」
ビットは小さくガッツポーズを決めた。巻き込めたのがよほど嬉しいらしい。
ロイは二人のやり取りを眺め、肩をすくめて苦笑を漏らした。
ちょうどそのとき、広場の端からレヴィが姿を見せた。落ち着いた足取りで近づいてくる彼の青みを帯びた髪が、午後の光にきらりと揺れる。
「どうしたんだい?」
「あっ、レヴィ!」ロイは目をぱっと見開き、声を弾ませた。
「なんだよお前、せっかくの祭りだってのに、部屋にこもって勉強やってたのか? ガリ勉君よー」ビットが茶化すように笑った。
レヴィは少し笑って首を振る。
「違うさ。さっきまで子どもたちの舞台の設営を手伝っていたんだ。今ちょうど終わったところ。お祭りの日くらいは息抜きもしないとね」
「レヴィ!」
アンがぱっと顔を明るくする。事情を伝えると、レヴィはすぐに頷いた。
「なるほどな。なら俺も一緒に行こう。ちょうど手も空いたし」
「えっ、本当に? 助かる!」
ビットは両手を打ち合わせて喜び、ロイも小さく笑みを浮かべた。
「よかった……正直、この二人じゃ頼りないんだもの!」アンは胸に手を当てて、ふうっと息を吐き、本音をもらした。
「そんなぁー! ひどいよ!」ビットが大げさに手を広げて騒ぐ。
「そんな言い方しなくてもさ……」
ロイは視線を落とし、肩を落とした。
アンはぷいっと横を向いて知らん顔。
レヴィはそんなやり取りにやれやれと肩をすくめ、穏やかに笑った。
わいわいと賑やかな声を響かせながら、四人は畑へ向かう小道に消えていった。




