木漏れ日の約束
広場の喧騒が遠ざかり、木漏れ日がまだらに落ちる小道には四人の楽しげな声が響いていた。
頭上では鳥がさえずり、木々を渡るそよ風が歩く彼らの頬を優しく撫でていった。
そんな楽しい会話の合間、ビットがふと表情を曇らせた。
「……さっきはからかったけどさ」
頭の後ろで腕を組むと、ちらりと横目でレヴィを見た。
「お前、最近は勉強ばっかで全然遊んでくれねぇじゃん。つまんねーんだよ」
レヴィは一瞬きょとんとしたが、すぐに申し訳なさそうに笑った。
「ごめんごめん。でも、本格的に学ぶならやっぱり王都にある学舎に挑戦したいんだ。医術や薬学を教える学舎は各地にあるけど……王都のメルキーズ公爵家が理事を務める学舎は、この国でも最先端で、最高峰の場所なんだ。どうせ学ぶなら、一番いいところで学びたいだろ?」
「そっか……レヴィらしいな」
ロイは穏やかな、けれど芯のある眼差しをレヴィに向けた。
「大変そうだけど……君が決めたことなら、俺は応援するよ」
アンも隣で静かに頷いた。けれど、その瞳の奥には、わずかな陰が差していた。
「でも……もし合格したら王都に行っちゃうんでしょ? やっぱり、ちょっと寂しいな」
吹き抜ける穏やかな風が髪を揺らす中、レヴィは小さく息をこぼして前を向いた。
「だったら遊びに来ればいい。勉強ばかりじゃ息が詰まるし、みんなが来てくれたら、いい気分転換になる」
「おお、それいいな! 王都見物だ!」
ビットが両手をぶんぶんと広げ、大げさに叫んだ。
声が木々に反響し、驚いた鳥たちが羽音を立ててぱっと飛び立っていった。
「……そういえば、アンは前に王都に行ってみたいって言ってたよな?」
ロイがふと口にすると、アンはぴくっと小さく肩を震わせ、落ち着かない様子で視線を彷徨わせた。
「……だって。きらびやかな街並みとか、おしゃれなお店とか……一度くらいは見てみたいでしょ?」
どこかバツが悪そうに唇を尖らせるアンを眺め、ロイは穏やかに微笑んだ。
「じゃあ決まりだな。レヴィが合格したら、みんなで王都に押しかけよう」
「お、おいっ!」
レヴィは焦ったように声を張り上げた。
「そんなこと言って、合格できなかったとき恨まないでくれよ?」
「は? 何言ってんだよ。これは決定事項だ。何が何でも合格しろ」
「レヴィ、信じているよ。絶対合格できるって!」
ビットの強引な言葉とアンの真っ直ぐな視線に、レヴィは頬をわずかにひきつらせ、額に手を当てた。
「……みんなの期待が重いなぁ……」
「……がんばれ」
ロイは少し申し訳なさそうに苦笑しながら、そっとレヴィの肩に手を置いた。
「よし! 景気づけに畑に誰が一番早く着けるか勝負しようぜ!」
唐突に叫んだビットに、レヴィは額から手を離して呆れた声を上げた。
「いきなり何言い出すんだよ……」
「よーい……ドンだ!!」
レヴィの声など聞こえていないと言わんばかりに、ビットが勢いよく駆け出した。
「あ、ビット! 勝手に始めるのはずるいだろ!」
ロイが文句を言いつつ、その背中を追いかけた。
「……しょうがない。付き合うか」
レヴィはふぅと小さく息を吐くと、二人の後を追って地を蹴った。
「えっ? レヴィまで!? 待ってよー!」
一人残されそうになったアンが、慌ててスカートの裾を押さえながら追いかけていった。
未来の約束をポケットに詰め込んだ四人は、弾けるような笑い声を風にのせながら、畑へと続く小道を駆け抜けていった。
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