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36話 疑惑は確信へ




 ナインはにやけ顔を止め、いつも考え事をするのと同じように顎へ手をやった。


 (あの髭の男、魔石を掴んだが)


 唐突に現れた髭の男は、ナインが投じた魔石をあろうことか二つともキャッチし、何事もなかったかのようにエルヴィと話し始めた。

 しかし、そんな中でもナインのことはしっかりと警戒しているようだ。時々鋭い視線を送ってくる。


 その度にさわやかな笑顔を返してやりながら、ナインは内心焦りを感じていた。


 (魔法が発動していない・・・のか?)


 ナインの魔法戦闘のスタイルは、結晶魔石を媒介とする高火力魔法での攻撃を主とした中・遠距離戦闘。

 天賦の才とも謳われた倍化魔法への圧倒的適性と、血反吐を吐くほどの習練を重ねることで規格外の戦闘用魔法へと昇華させた独自のスタイルである。


 故に己の魔法には極度の自信を持っているナインだが、その自信から来る微笑を、ただ今回ばかりは虚勢を張るためだけに髭の男へと向けていた。


 (奴も『祝福者(スキルホルダー)』か――――)

 

 ナインの懸念は決して大げさなどではない。

 なぜならこの青年は――――()()()()()使()()()()()()()()()からである。


 倍化魔法を超火力、つまり圧倒的倍率で行使することができる代償として、ナインは生まれつき属性の適性を持っていなかった。「光も使える」とエルに発したのも、自分は「属性魔法を使うことができない」という弱みを露呈させないためである。


 本当は光どころか、()()使()()()()のだ。

 高価かつ貴重な結晶魔石を媒介にしなくてはならないのもこれが理由である。


 結晶魔石には、「内部から瞬時に大量の魔力が放出されると反応を起こす」という性質がある。

 ここでの反応とは「原初」と呼ばれる、各々の属性が起こす原始的な現象(例えば火属性なら小さな炎が、光属性なら小さな光が発生する)を指している。


 ナインはこの性質を利用して攻撃を行っていた。


 つまり彼は、


 魔石に己の魔力を溜める→フィンガースナップを合図に魔力を一気に解放→発生した「原初」を倍化魔法で増幅→超火力攻撃魔法とし、対象に食らわせる――――


 ――――という、既存の戦闘魔法からは考えられない方法で攻撃を行っていたのだった。


 (このスタイルの弱点はただ一つ。「防御が薄く受けが弱い」こと。後はまぁ借金がかさむことくらいなはず、だったんですがね・・・)


 少々腕が立つ程度の魔法使いならばナインの敵ではない。

 攻撃を認識する間もなく体を吹き飛ばされ、リリーのように意識を失うか、息絶えることになる。


 しかし今回ばかりは違った。

 ナインにとっては、かなりの緊急事態が起こっていたのである。


 (“怪力の祝福(スキル)”を持つ『祝福者(スキルホルダー)』エルヴィ・ストーム。強敵ではあったが、こっちはどうにかなった・・・問題はこの男だ。こいつは一体何だ?)


 髭の男はエルヴィとの会話を終え、ナインの方へと向き直った。こちらに睨みを効かせながら、ゆっくりと歩み寄ってくる。


 ナインは再びにやけ面を浮かべながら言った。


 「ほう、向かってきますか」


 表情とは裏腹に、思考は加速する。


 (奴の祝福(スキル)は・・・まさか)


 「近付かなきゃお前をぶん殴れないんでな」


 (『魔法の無効化』か――――?)


 髭の男――――グッサンに対する疑惑は、既に確信へと変わりつつあった。



 






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