表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/46

34. こんなインチキなやつがいるなんて

 すばやく立ち上がったセレナは、盾と剣を構え、するどい視線を部屋の片隅に向ける。

 オレも襲撃した相手の正体をさぐろうと、すばやく部屋の中に視線をめぐらせる。

 しかし、目をこらしても、その姿は見えなかった。


 魔力の光が照らす中、いやな汗が背中を伝う。


 そんな中、一つだけ変化を見つけた。


 厚く積もった埃に足跡がついている。

 その形は、人間とはことなる、羊の爪のように二股にわかれたものだった。

 

 けん制になるかわからないが、手近にあった木の机を、そこにいるであろう魔物にむけて蹴り倒す。

 破れかぶれの攻撃であったが、机をよけて離れた位置で着地する音が聞こえた。

 しかし、その姿は見えない……。

 

「ライル! この魔物について何か情報はあるか!」

 

「ないな! こんなインチキなやつがいるなんて聞いたこともない」

 

「ははっ、上等だ!」

 

 セレナは怖気づくどころか、むしろ獰猛な笑みをうかべながら剣を握る手に力をこめる。

 

 オレも何か対抗手段はないかと必死に頭をめぐらせる。しかし、見えない敵の襲撃への備えに思考の大部分をとられ、うまく思考がまとまらなかった。

 

「オルニス! 部屋全体を攻撃できるような派手なのをいっちょ頼む」


「おおざっぱな命令ね。まあいいわ。まかせなさい!」


 オルニスの握る杖の先端に魔法陣が展開し、地面に手をついた。

 

「練成! 針の山(スレイプニール)

 

 石畳の上にびっしりと細かい針がつきだしていく。


 そして、一箇所、針がなにかをつらぬき、その先端を赤い体液でぬらし、くぐもった悲鳴が聞こえた。

 

「そこか!」

 

 セレナが好機を逃さず、横なぎに剣を振るった。

 

「浅い……。やつはまだ生きている」

 

 見えないが、しかし、なにかが確実に襲い掛かってくるという圧を感じている。

 

 迷う時間は残されていない。

 右手の剣で応戦するか……

 左手の杖で魔術を使って防御するか……

 

 そのとき1つの考えが頭に浮かんだ。完全に透明な生物なんているのかということを……

 

 姿を隠す魔術を自らに付与したという可能性に賭けて、手を突き出す。


 指先がごわごわした体毛に覆われた何かにふれた。


 同時に、そいつがまとう魔力を感じ取り、霧散させることに成功。

 

「っ!? こいつは……」

 

 姿を現したのは、ヤギのような二本の角をはやし白いあごヒゲを生やした、二足歩行の魔物であった。

 その姿を見て、思考が停滞し次に取るべき行動にとることができなかった。

 

「ライル! よけろ!」

 

 腰だめに剣を構え突進するセレナの姿が見え、体を横へとずらす。

 突き出されたセレナの剣が延髄を刺し貫き、そのまま壁へとはりつけにする。

 

 数秒、じたばたと手足を動かしもがくが、すぐに動かなくなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ