26. けちんぼライル
泊りがけのクエストの次の日ということもあって、ベッドの上で惰眠をむさぼっていた。
うつらうつらと夢心地気分を味わうのは気持ちよかった。
しかし、その快適な時間は早々に打ち破られる。
ドンドンドンという激しく扉をノックする音にたたき起こされる。
時間は昼前だった。
昼過ぎまでもう少し寝ていようと思っていたというのに、いら立ちを感じながら乱暴に玄関を開ける。
扉の先には誰の姿も見えず、視線を下げると小柄な少女が立っていた。ウェーブのかかった銀髪はぴんぴんとはねているのが見える。
「どうした? こんな朝から。今日はフリーの日のはずだろ」
オルニスからの返事はなく、代わりに聞こえるのはしゃくり音。顔をあげたオルニスの目は赤くはれ、泣き顔になっている。
「あのね、あのね……」
いつもの小生意気な口調はなく、まるで迷子の子供のようだった。
なかなか話し出そうとしないオルニスを促し、口を割らせると
「おかね、おとしちゃった」
「全部か?」
「うん、ぜんぶ」
「ギルドに預けている金はないのか?」
「ない」
天を仰ぎ見る。セレナも金の管理までは面倒はみていなかったようだ。
オルニスも散々探しまわったようだが見つからなかったらしい。いまごろ、どこかの幸運なやつがうまい飯でも食っていることだろう。
「で、おまえはどうするつもりだ?」
「えっと、お金……かして……」
顔を赤くしながら、小さい声でしぼりだすように口にした。プライドの高いオルニスにとって、これはかなり苦しいことだったのだろう。
さて、どうしたものか。金の余裕はあるため、貸すことはたやすいが、ここで貸してもまた同じことを繰り返しそうだった。
「だめだ」
「……そう、わかった」
気落ちしながらとぼとぼと去っていこうとするオルニスの華奢な肩をつかんで引きとめる。
「待て、まだ話は終わっていない」
「なによ? けちんぼのライル」
「なければ稼げばいい、クエストにいくぞ」
急ぎ支度を整えてギルドへと向かうのであった。




